教育に関係するようになってから、私が注意していることがある。それは、
「皆さん、本を読みましょう」
 という言葉だ。
 大学でも、附属の高校、中学に行っても、これを口にしたとたん、みんなさっとシラける。そして、
「ありきたりのつまんないことしか言わない」
 という冷ややかな視線が私にくる。
 作家としてつらいことだが仕方ない。今まで私は長いこと、読書啓蒙運動に参加してきた。読書推進ナンタラ、という委員会やプロジェクトもやってきた。
「ハヤシさんは本屋の娘なんだから協力して」
 と頼まれ、書店の代表や出版社の社長さんたちと、議員会館に行ったことも。読書週間には都心の書店前でビラも配った。 
週刊文春デジタル