• このエントリーをはてなブックマークに追加
ヒーローズプレイスメント公式ノベル「アクアラインの魔女」 4/4
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

ヒーローズプレイスメント公式ノベル「アクアラインの魔女」 4/4

2014-09-16 13:03
    b8b3e3358949bc306828360d8439fd613c4074b6


     スプリンクラーの放出もやんだ、湿気に満ちたトンネルの中。その真ん中から、ひとつの影がゆらりと立ち上がるのを見て、あくあは背筋に寒気を覚えた。
     影の正体は、前髪にメッシュの入った黒い髪が印象的な、赤いコートを羽織った少女。片手は機械なのか、金属の光沢を放っていたのが印象的だった。
    「うそ! さっきのを耐えるなんて!」
     あくあは驚きをあらわにする。吸血鬼の少女は、ちっちと指を振ってそれに応えた。
    「こいつのおかげだよ、こいつの」
     そういって、黒焦げになった吸血鬼を義手で軽々と投げ捨てる。少女は仲間を盾にしていたのだ。
     そして少女は名乗りを上げた。
    「あたしの名前はカバネ=ヴァム。覚えたか? 逃げ出すか? それとも死ぬか?」
     あくあはその名前に聞き覚えがあった。千葉の吸血鬼界きっての戦闘狂。戦闘自体を楽しみ、自身の最強を証明するためには何をもためらわない最凶の吸血鬼だと、あくあは認識していた。
     だからあくあは叫んだ。
    「わたしは逃げ出したりしない!」
    「そうかい!」
     カバネは、あくあの応えを受け、猛然と突っ込んできた。
     一方あくあも、わずかに回復した魔力の一部をハイヒールのかかとに集中。床を踏みしめて一気に横へと加速。直線的なカバネの攻撃をかわしながら、無詠唱呪文を検索。
    「エネルギーボルト、トリガー!」
     箒に残された魔力を用い、魔力弾を撃ち放つ。だがそれは、カバネの義手の振り向きざまの一閃で弾かれた。
    「どうした? さっきのでもうおしまいかい! まだ手があるだろ? 魔女ならではの手管、狡猾な罠! 見せてよ、さっきみたいな裏技をさ!」
     カバネは不敵な笑いを浮かべてそう告げると、そのまま加速し、瞬速で間合いに入ると右手を振るった。
     あくあはそれを、露骨に食らってしまう。たった一撃で、彼女はトンネルの壁まで跳ね飛ばされた。
    「くっ……! こいつ……強い!」
     したたかに身体を打ち付けて、全身が悲鳴を上げる。しかし、意志の力で何とか壁を背に立ち上がる。
    「なに? 無策なの? それとも無策を装って渾身の反撃に出るつもり? いいね、そういうの、ゾクゾクするね」
     そう言って、カバネはあくあに無造作に近寄ってくる。そして右手が一閃。あくあの喉首を狙った。
     あくあはとっさに箒を盾にし、最後の魔力で魔法障壁を張るが、ジリジリと貫通されていく。
    「もう持たないにゃ、逃げるにゃ!」
     フウがそう耳打ちするが、あくあは意地でもここを守ると決めていたから、いまさら引き下がるつもりなどなかった。無理だろうがなんだろうが、何を引き換えにしてもカバネを倒す。そういう思いにとらわれていた。
     しかし、そんな思いは届かず。
     カバネの右手は魔法障壁を貫通し、箒をへし折り、鉄爪があくあの喉首をつかんだ。
     カバネは心底つまらなそうにつぶやく。
    「ただの無策か……さあ、縊り殺されるのと血を吸われて殺されるのと、どっちがいい?」
    「どっちも……お断り……!」
     苦しい呼吸の中から、あくあがようやく吐き出した声は、とても無力だった。
     そのせいか、カバネは舌打ちすると、あくあをブンと機械の手で放り投げた。彼女はトンネルの反対側の壁にぶつかって、そこに崩れ落ちる。
    「あんたなんか、殺す価値もない。せいぜいそこで寝ているといいよ」
     そしてカバネは、まるで王者のように、神奈川に向かって歩き始めた。
     だが、そこに立ちふさがるひとりの影があった。海萌ほたる。あくあの妹分にして、夢と希望をもたらす魔法少女。
     しかし、その力は目前の吸血鬼と比較してあまりにもひ弱すぎる。
    「どうしてここに来たの……」
     あくあがかろうじて放った問いに、ほたるは毅然として応える。
    「『救けに行く』って約束、覚えてます? わたしは覚えてますよ! それに、『一緒に遊びに行こう』って約束もしましたよね! だから来たんです!」
     そしてカバネに向かい、気丈に告げる。
    「魔法少女、海萌ほたるの名にかけて、絶対にここは通しません!」
     だが、カバネはそれを鼻で嗤う。
    「魔法少女ごときが、このあたしの前に立ちふさがるつもり?」
    「はい。わたしは人の夢と希望を守るのがお仕事です」
     そう言いながらも、ほたるの脚は震えている。圧倒的に格上の相手に、怯えている。それでも――彼女は立ちふさがることをやめようとしない。
     そんなほたるに対し、カバネは獰猛な笑みを浮かべた。
    「同じことを言ってた奴がそこに倒れてるよ。仲間入りさせてあげようか?」
     次の瞬間、彼女は義手を一閃させる。それだけで、ほたるはあくあのいる場所のほうへと投げ飛ばされる。とっさに魔法障壁を張るが、ダメージは大きい。
     だが、ほたるは意志の力を振り絞り、あくあを守るように立ち上がると、カバネに向きあった。
    「その程度の攻撃で、わたしが倒れるなんて、思わないでください」
     カバネはほたるに侮蔑の視線を向ける。
    「自分を知るのは大事だよ。無力で無策で無能なあんたが、今さら何ができるの? 本当なら殺す価値もないんだけど、殺されたいなら仕方ないね」
     そう言って、カバネは牙を剥いた。
     それを食い止める力は、今のあくあにはなかった。すべての魔力を使い果たし、箒も失った彼女ができるのは、目の前でほたるが死んでいくのを見ていることしかないのか。
     あくあは必死で考える。状況を打開する方法を。そして辿り着く。自身の生命力自体を削って魔力となし、自身の体を魔力焦点具とすれば、まだ魔法は打てる。
     自滅覚悟の危険な技だが、ほたるを――自身の「日常」の大切な一部を救うためには、もはやそれしかないと覚悟を決め、術式を組み上げ始めた時、ひとりの少女の声がした。

    10

    「だから言ったでしょう。あなたは傷の入った宝石だと。そして今砕けようとしている。それは見過ごせないのです」
     多摩3賢者のひとり、荒井高緒――あくあをアクアラインの魔女に任命し、不吉な予言をした魔法少女が、いつのまにかあくあの前に立っていた。
    「あなたは『救ける』ことにこだわりすぎて、『守る』という本来の意義を忘れかけています。今一度、問い直してください。自分が何をすべきか、何をしたいのかを」
     高緒はあくあにそう告げた。
     あくあは考える。何をすべきか。何をしたいか。
     目を閉じ、ぎゅっと拳を握りしめる。
    ――目の前のほたるを守りたい。
    ――みんなのいる日常を守りたい。
    ――そして、そこに還りたい。
     その思いに至った時、高緒は優しい笑顔を浮かべた。
     そして、カバネは頬を歪ませる。それは笑みの一方の本質――攻撃性を具現化したものだった。
    「邪魔する気? 早くここから立ち去ったほうがいいよ、あたしの右手がうずく前にね」
     しかし、高緒は頭を振った。
    「あなたの相手をするのは、わたしではありません。『アクアラインの魔女』です」
     カバネは心底おかしそうに嗤った。
    「あの子がかい? もう心も体も折れちゃってるじゃない」
     高緒は再び頭を振った。
    「まだ、心も体も折れてませんよ」
     そして高緒は、あくあに向かい静かに告げた。
    「あなたは、真の力に目覚めて下さい――今のあなたになら、それは可能なはずです」
     あくあは目を見開き、拳を前へと突き出す。そこへと光の粒子が集まっていく。美しいグラデーションを描く無数の光の粒は、アクアラインの夜明けの色そのものだ。
     次の瞬間、夜明けの色が結合し、青白い輝きを放つと、新たな箒の形を取る。
     それは「風の塔」の「加護」を受けていた「だけ」のこれまでと違い、手にする事で「風の塔」の霊脈そのものの力をすべて具現化する存在。
    ――「アクアラインの魔女」の魔法焦点具「夜明けの箒」だ。
     カバネはぐるりとあくあを向き、視線を箒へと向けると、歪んだ笑みを浮かべる。
    「魔女らしい裏技じゃないか! 次は何を見せてくれるんだ?」
    「すごい魔力――これが『アクアラインの魔女』の真の力――」
     ほたるも驚きを隠せない。それだけ、目の前にある力は大きく、可能性を秘めていた。
     そしてあくあは、箒を通じて世界が広がっていくのを感じた。
     アクアライン全域の事象が、手に取るようにわかるような気がする。それほどの全能感にも似た感覚が湧き上がる。それは肉体にも影響を及ぼしていた。
     あくあは立ち上がり、2本の足で踏ん張ると、箒をくるりと一回転して構えた。そしてほたるに告げる。
    「ありがとう、ほたる。救けに来てくれて。今度はわたしが、ほたるも、神奈川も守ってみせるよ」
     ほたるは無言でうなずく。
     その様子を見て、高緒はふいと姿を消した。まるで最初からそこにいなかったかのように。最後にただひとつ、言葉を残して。
    「後はあなた次第です。頑張って下さい」
     そして、あくあは片手で箒を構え、カバネに向けて叫んだ。
    「『アクアラインの魔女』、川崎あくあ! わたしは、あなたたちの前では決して倒れません!」
     それは、あくあに取っての誓いだった。
     その誓いに応じてか、箒の輝きがひときわ増す。
     それを見て、カバネはカラカラと楽しげに笑った。
    「その箒を折れば、あたしは『アクアラインの魔女』を超えたことになる。挑まない理由がなにもない!」
     カバネは決意を示すように地を蹴ると、体を屈め、吸血鬼ならではの瞬速で突進してきた。
     対するあくあは即座に魔術術式を多段展開。それにほたるも、微力ながら加勢する。
     ふたりの力を合わせ、先のそれより数段固い魔力障壁でカバネの攻撃を防御しつつ、ファイアボールの術式を重ねがけしていく。あくあの内より生ずる膨大な魔力が、箒へと集まっていく。
     その展開に、カバネは狂喜した。
    「裏技の次は大仕掛けか! あたしは今とても楽しいよ『アクアラインの魔女』!」
     そして自らも奥の手を繰り出す。
    「サイバーアーム、ブーストオン!」
     関節から蒸気を噴き出したカバネの義手が、限界を超えた力で魔力障壁を貫徹しようとする。だが次の瞬間、術式が完成した。
    「ファイアボール、トリガァァア!」
     大きさこそ普段のそれと変わらないが、数倍の熱量を持つ火球がカバネを直撃した。膨大な熱エネルギーが、周囲の大気を爆発的に膨張させ、巨大な爆発となり、トンネルを揺るがす。魔力障壁が貫通されていたら、あくあたちもその巻き添えを受けていただろう。
     しかし、カバネは蒸発していなかった。とっさに義手を犠牲にし、直撃を免れたのだ。だがその全身は炎に包まれ、爆発のためボロボロに崩れている。とはいえ、恐るべき強靭さだったが、すでに瀕死の状態だ。にも関わらず、カバネの戦意は衰えていない。
    「この程度の攻撃でぇぇぇ! あたしがくたばると思ってるのかぁぁぁ! あたしは不死身のカバネ=ヴァム様だぁぁぁ!」
     炎に包まれながらも、最後の力を振り絞ってカバネは前進する。
     あくあはその執念に戦慄を覚える。もしかしてこいつは、本当に不死なのではないか――そんな妄想があくあの脳裏をよぎった時、異変が起こった。
     地鳴りとともに、天井にヒビが入る。先のファイアボールに耐えかねたトンネルの一部が崩れ始めたのだ。
    「あぶないにゃ、逃げるにゃ!」
     フウの警告の直後、トンネルの天井が崩れ、大量の海水がなだれ落ちてきた。
     その濁流に飲まれ、カバネは千葉側へと流されていく。そしてあくあとほたるは神奈川の方に。
    「――その名前覚えたぞ、川崎あくあ!」
     遠ざかっていくカバネの声が聞こえたが、あくあたちは溺れないのがやっとだった。
     やがて、海水の勢いが収まると、あくあは溺れかけていたほたるを抱き起こし、ふたりで肩を貸し合いながら帰路についた。
     無様な勝利だった。
     だけど、みんなを守れた。ほたるも救けた。ほたるにも救けられた。そしてなによりも――還ることができた。
     だから、とてもあくあは嬉しかった。
     ふと、涙がこぼれてきた。どんどん溢れて、止まらなくなるほどに。その涙をほたるが拭うが、彼女の頬もまた涙に濡れていた。それをフウが、慰めるようになめる。
     ――長い夜がようやく終わった。
     あくあはそう実感した。

    11

     トンネルの崩落でアクアラインが一時閉鎖されたものの、数日後には復旧されたので、彼女の仕事も再開となった。
     そしてまた、あくあはあの千華かごめという吸血鬼と、海ほたるPAで再会した。
    「あくあさん、こんばんは。いい星空ね」
    「こんばんは、かごめさん。今夜はどんな話なんですか?」
    「そうねぇ。ことの顛末を伝えたくて」
     かごめはそう言って、いたずらっ子のような笑みを浮かべ、あくあに告げた。
    「この前の闘いは完璧な展開だったわ」
    「完璧な展開――」
     唐突な言葉にきょとんとしているあくあにむかって、かごめは続ける。
    「アクアラインに、1千人もの吸血鬼を集めて攻め込んだのに、弱敵と侮っていたあなたに完膚なきまでに打ちのめされて、君主と強硬派は大きくその力を失ったのよ」
    「そうなんですか……」
     話の筋が今ひとつ見えていないあくあを尻目に、かごめはさらに続けて語る。
    「で、穏健派の勢力も増大して、わたしも色々と話を話を通しやすくなったわ」
    「それは――よかったですね」
     釈然としない気分を抱いたまま、それでもそれは歓迎すべきことだと思って応えると、かごめは微笑んだまま、あくあに向かってこう告げた。
    「まあ、仕組んだのはわたしなのだけど。支配欲に駆られた君主を、彼にとって目障りなあなたという存在を利用して煽ったのよ」
     それを聞いて、あくあは愕然とした。自分は利用され尽くしたのだと、怒りを覚える。
    ――だが、それを責められるだろうか?
     つまるところ、かごめはあくあの共感できる目的のために、あくあと敵対する勢力を弱体化させることに成功したのだ。
     しかし、その過程であくあは死の危険にさらされ、ほたるまでそれに巻き込んでしまった。そういう状況を作り出した彼女に対して、これまでのような好感や信頼を抱くことは難しかった。
     だから、あくあの口から出たのは、かごめの「手段」を非難する言葉だった。
    「あなたはそうやって、わたしたちを利用して、敵も味方も全部駒扱いして、これからも進んでいくつもりなんですか?」
     すると、かごめは真顔に戻り、はっきりとした口調で告げた。
    「そうね。でも、わたし自身も、わたしがプレイしているゲームの駒なのよ」
     それは一種の覚悟を秘めた言葉だった。だがあくあはそれが間違っていると感じた。
    「自分まで駒にするなんておかしいです。かごめさんにも、守りたいものがあるんでしょう? だったら」
     言いつのるあくあをさえぎり、かごめは告げる。
    「わたしが守りたいもの――それは未来にある、まず生み出さないといけないものなの。吸血鬼と人間の共存、平和な日常、そのほかあれこれ。そのために私はゲームをプレイしているのよ。楽しい命がけのゲームをね」
     かごめはあくあの鏡像だった。「今ここ」と「これから」のいずれを守るか。その差は僅かで、しかし決定的なものだった。
    「――そんな」
     あくあはその差の前にたじろぐ。しかし、このままではかごめは破滅するのではないかという懸念が、彼女に口を開かせた。
    「もっと、自分を大切にして下さい――あなたが苦しめば、それだけ周りの人も苦しむと思うから」
     それは闘いの中で、あくあが身を持って会得したことだった。
     するとかごめは楽しそうに微笑んだ。
    「あなたは優しいのね」
     かごめはあくあにそっと近寄り、耳元にキスをした。
    「えっ」
     顔を真赤にしてうろたえるあくあを可笑しそうに見て、かごめは囁いた。
    「さよなら、優しい魔女さん」
     そしてかごめは去っていった。あくあには、その後姿を見守ることしかできなかった。ただせめて、彼女が自身や他人を不幸にしないよう、願うばかりだった。

    エピローグ

    「遅刻遅刻遅刻ゥゥゥ!」
     あくあはまたもパンをくわえて空を飛んでいた。毎度の寝坊だ。
    《毎度毎度エクストリーム登校ですか? これだからあくあさんは》
     ほたるの念話に、パンをもぐもぐしながらあくあは応える。
    「大丈夫、今度はパンをくわえたまま登校するなんて恥はさらさないから」
    《問題はそこですか……》
     呆れたようなほたるの思念が伝わってくるが、気にしない。
    「それより、ほたるも早く学校行きなさい!」
    《りょーかいです。ところで今度の日曜日、プールに行きませんか?》
     唐突に挟まれる「約束」。それ自体は些細なことだが、同時にとても大事なこと。だからあくあはそれに応えた。
    「昼からなら。じっくり付き合うよ」
    《やったー!》
     そんな念話の間に、あくあはパンを飲み込み終え、教室へとダッシュ。予鈴と同時に教室へ滑り込む。またもぎりぎりセーフ。日常を守るのは本当に難しいと、彼女は思う。
     だが、あの闘いをくぐり抜けたことで、やりぬく自信が付いてきた。アクアラインも、この日常も、必ず守ってみせる。
     それに、吸血鬼側にもいろいろな思惑があると、かごめと出会ってわかった。彼女のやり方や考え方には賛成できないが、一概に否定することもできない。
    「とにかく、頑張らなきゃ」
     しかし、頑張ると無茶をするのは違うと、あくあは学んだ。無茶をしない範囲で、やれることを精一杯頑張る。その違いは傍目には小さく見えるだろうが、実際は大きい。
     まずは自分を諦めず、希望を捨てないこと。そして時には他人の力も借りること。それにより「頑張る」は成し遂げられる。そうやって自分たちが頑張り続けられるなら――昼の世界も、夜の世界も守られる。
     そして、かごめたち穏健派が吸血鬼の主導権を握るまで、頑張り通せれば――もしかしたら、吸血鬼と人間が共存できる未来が、やってくるかもしれない。
     そんな未来を実現するためには、未熟な――その分可能性をもった魔法使いが、経験を積んでいきながら掴みとることが必要なのではないかと、今のあくあは考えていた。
    「川崎!」
    「はいっ!」
     担任の点呼に、あくあは元気よく答えを返した。
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。