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"グローバル化"のベースは「シーパワー」|奥山真司の地政学講座|SJ
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"グローバル化"のベースは「シーパワー」|奥山真司の地政学講座|SJ

2013-11-25 16:31

    "グローバル化"のベースは「シーパワー」

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    おくやまです。
    
    今回は、私が専攻している「古典地政学」について、
    少々刺激的なお話をしたいと思います。
    
    それは「マッキンダーは間違えている」ということです。
    
    マッキンダーって誰?
    と思った方もいらっしゃると思いますので、簡単にご説明しますと、
    ハルフォード・マッキンダー(Halford J. Mackinder)
    という人は、1861年から1947年まで生きた
    イギリス人の学者・政治家です。
    
    そして、彼こそが「地政学の創始者」のような存在なのです。
    
    そんな、いうなれば「現代地政学の親分」のような人物を、
    今回、私が大胆に批判してみよう、という試みです。
    
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    まずは、マッキンダーが具体的にどのような人物だったのか?
    というお話から。
    
    彼自身は学業以外のことが忙しかったため、
    それほどまとまった研究論文を書いておらず、
    地政学に関連するような本は2冊ほど、
    そしてそのものズバリのテーマを扱った論文は
    たったの2本ほどしかありません。
    
    そういうことなので、彼の地政学的なアイディアは
    『デモクラシーの理想と現実』(http://goo.gl/v62vtM)
    という本を読めば、ほぼ理解できます。
    
    この本の中に収録されている最も有名な論文の中で、
    マッキンダーはおそらくマルクスの
    「人類の歴史は階級闘争の歴史である」
    という有名な言葉をマネする形で、
    
    「人類の歴史は、シーパワーとランドパワーの争いの歴史である」
    
    と大雑把にとらえつつ、いままでの歴史全体を振り返りながら、
    時代を大きく3つにわけて、
    
    (1) コロンブス以前の時代:1000年〜1500年、馬、ランドパワー
    (2) コロンブス時代:1500年〜1900年、船、シーパワー
    (3) コロンブス後の時代:1900年〜、鉄道、車、ランドパワー
    
    と分類しつつ、彼が生きている時代は
    すでに(3)の「コロンブス後の時代」、
    つまり「ランドパワーの時代」が始まりつつあるのだ、
    ということを述べております。
    
    これはマッキンダーのもう一つの有名な
    「東欧を制するものは・・・世界を制する」というテーゼとともに、
    極めてインパクトがあるものとされています。
    
    しかし、私はマッキンダーのこの予測、つまり、
    
    「コロンブス後のランドパワーの時代が来た」という部分は、
    完全に間違えている(!)と考えております。
    
    もちろんマッキンダーの「ランドパワーの時代が来る」というのは、
    その当時のイギリス政府周辺のエリートたちの恐怖感を表したものとしては
    非常に意味のあった指摘だったのかもしれません。
    
    ただし事実は別であり、
    やはり現在でも「シーパワーの時代」が続いており、
    この状態が当分の間(米海軍の優位が感じられている限りは)続く、
    というのが実際のところなんだと私は考えております。
    
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    マッキンダーに対する批判自体は、
    以前よりたくさんありましたが、
    私に言わせれば、その多くはやや的外れ。
    
    なぜならそのような指摘は、
    地政学でいうところの「ランド/シー/エア/パワー」における、
    軍事的・軍事戦略的な機能にしか注目していない・・・、
    ということがバレバレだからです。
    
    実はマハンやマッキンダーが想定した「◯◯パワー」というのは、
    軍事だけでなく、その上の階層に位置する
    「大戦略」のレベルまで含む概念なのです。
    
    現代において、
    安全保障と経済に最も大きな影響を与えうる「パワー」とは何か?
    
    それは、(相変わらず)「シーパワー」です。
    
    「なに?まだ船の時代が続いている?」
    と強い違和感を感じるかたがいるのは重々承知の上です。
    たしかにこれは懐古主義義的というか、
    保守的な考えに見えるかもしれません。
    
    ただし「大戦略」のレベルで現在の状態を考えてみると、
    どうもマッキンダーの言う「シーパワーの時代」、
    つまり「コロンブス時代」は、
    1500年以降から現在に至るまで、
    まだ相変わらず続いているのではないか・・・
    というのが私の解釈です。
    
    その根拠となるのは、この世界の秩序というものが、
    いまだに「海運」をベースとした物流システムで動いており、
    それを担保とする米海軍の強さに依存している、という点です。
    
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    ここで、もう一人の地政学の世界での"巨人"をご紹介します。
    
    アルフレッド・セイヤー・マハン(1840-1914年)という人物です。
    彼は「シーパワー論」の論者として有名な
    アメリカの元軍人の海軍史家です。
    
    その彼が言っていた「シーパワー」というのは、
    たしかに一面としては「海軍力」という意味もあるのですが、
    それと同時に
    
    「海外との貿易を支えるインフラのためのシステム」
    
    というニュアンスもありました。
    
    つまり彼は「シーパワー」というものを、
    「海軍力+海運力」と考えていたんですね。
    
    そしてそのエッセンスは、船の「機動力」。
    
    もちろん、マッキンダーはマハンの本を読んでいましたから、
    このマハン「シーパワー」の意味については
    おそらく重々承知の上だったはずです。
    
    そして、マッキンダー自身が、
    「ランドパワー」の理論を形成する時も、
    例えば、日露戦争直前の
    ロシアの極東への兵力の展開を支えたという意味で、
    鉄道の機動力を「ランドパワー」と認識していたわけです。
    
    鉄道は戦時には、兵士の移動手段として
    「兵器システム」のべースになると同時に、
    平時においては、物資を運搬する
    「物流システム」のベースにもなります。
    
    マッキンダーは、「馬、船、鉄道」などを、
    「時代を変えたテクノロジー」として想定していましたが、
    これは、平時において非常に重要になってくる
    「機動力・運搬力」という位置付でもあったのです。
    
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    国際貿易システムの深層部や
    基礎的なところにあるのは、やはり物流システム。
    しかもその安全を担保するためのベースになっているのが
    海軍力であるといえます。
    
    19世紀に世界覇権を握っていたのはイギリスですが、
    20世紀に入ってから代わりに覇権国となったのはアメリカです。
    
    そして、現在のグローバル化した
    世界の秩序を支えているのは、
    事実上、アメリカであるとも言えます。
    
    理由は色々とあるでしょうが、
    この世界秩序を可能としている大きな要因の一つが、
    アメリカの海軍力です。
    
    アメリカこそが、現在世界最大の海軍を持つシーパワー国であり、
    そのベースとなる海の安全を担保できるほぼ唯一の存在です。
    
    たとえば数年前に南シナ海で、
    中国とその周辺国の間で領土(海)問題が注目されはじめた時に、
    ヒラリー・クリントン前国務長官は
    
    「南シナ海の“航行の自由”は、米国の国家利益だ」
    
    と宣言しておりますが、これはつまり
    「アメリカが世界の海の安全を守る」ということ。
      
    ご批判を承知であえて極論を言ってみると・・・
    
    現在の「グローバル化した世界」というのは、
    あくまでも、米海軍の力をベースにした
    シーパワーの基礎の上に乗ったものである、
    と言っても過言ではありません。
    
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    「シーレーンの防衛」というフレーズは、
    国際関係のニュースなどを観ていると、
    読者の皆さんもよく耳にするのではないでしょうか?
    
    世界の土台は、現代でも、相変わらず「シーパワー」であり、
    それは米海軍の力によって担保されている・・・
    
    こう言い切ってしまうと、
    非常に極端に思えるかもしれませんが、
    これは現在の世界の安全保障環境や国際秩序の
    リアリズム的な"身も蓋もない"一面を示しているのです。
    
    今回は、私のライフワークでもある、
    「古典地政学」について、長々とお話してしまいましたが、
    如何でしたでしょうか?
    
    「地政学」という学問の要素は、現代においても脈々と流れている、
    ということを少しでも実感して頂ければ幸いです。
    
    ( おくやま )

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