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中国を制御(≒コントロール?)することは可能なのか?|THE STANDARD JOURNAL
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中国を制御(≒コントロール?)することは可能なのか?|THE STANDARD JOURNAL

2014-06-16 17:59



    おくやまです

    
    
    今回は、「アメリカの撤退戦が始まった」
    という国際政治の冷酷な真実の話を致します。
    
    皆さんも御存知の通り、
    イラク情勢が本格的にまずいことになっております。
    そして、前回、私も取り上げた
    オバマ政権の捕虜交換での大騒ぎの一件。
    
    ともに今回のテーマに関わる話です。
    
    そして、東アジアに住むわれわれ日本人にとっても
    関連した気になる動きがいくつかあります。
    それが、自衛隊機に対して執拗に異常接近を繰り返す中国です。
    
    ===
    
    自衛隊機に中国戦闘機がまた異常接近、5月24日以来[東京 11日 ロイター] - 
    http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0EM0OH20140611
    
    防衛省は11日、東シナ海公海上を警戒監視していた自衛隊機2機に対し、
    中国の戦闘機2機が異常接近したと発表した。
    
    中国軍機の異常接近は5月24日以来。小野寺五典防衛相は記者団に対し、
    「自衛隊のパイロットが危険を感じるような荒い飛行だったと報告を受けている。
     このような危険な行動を許すという、
     中国の軍当局もしっかりしたモラルを持ってもらいたい」と語った。
    外交ルートを通じ、中国側に厳重に抗議した。
    
    小野寺防衛相によると、11日昼ごろ、
    航空自衛隊のYSー11EB電子情報収集機と
    海上自衛隊のOP-3C画像情報収集機が通常の監視警戒活動をしていたところ、
    2機のSu-27が接近。1機はYS機から約30メートル、
    もう1機はOP機から約45メートルのところまで近づいたという。
    
    5月24日も同じ空域で、中国機が約30メートルのところまで接近。
    前回は中国とロシアが共同訓練をしている最中だった。
    今回はオーストラリアの国防相と外務相が来日中に起きた。
    
    ===
    
    これまで私も何度か言ってきましたが、
    いやはやなんとも「コントロール」不能状態でキケンですね・・・。
    当事者である自衛官の皆さんも大変でしょうが、
    実のところ、北京の共産党上層部こそが
    もっともヒヤヒヤしているのではないでしょうか(苦笑
    
    しかしそれ以上に私が今回気になっているのは、
    そのはるか南に位置している南シナ海の話です。
    
    すでにブログのほうには載せましたが、
    英国の高級紙フィナンシャル・タイムズが、
    社説で短くこの話題に触れております。
    
    ※全文を詳しくお読みになりたい方はこちらへ
     → http://geopoli.exblog.jp/22778531/
    
    ===
    
    ●このような紛争は、より大きな動きから出てくる「症状」でしかないのであり、
    この事実ををわれわれは認める必要がある。中国が強国化するにしがって、
    戦後の「パックス・アメリカーナ」は弱体化しているのだ。
    
    ●ここで確実に言えるのは、西太平洋で最終的に
    新しい秩序が生まれるのは避けられないということだ。
    
    ●もちろんアメリカやその他の国々は中国を永遠に封じ込めようとするだろう。
    ところが長期的に見れば、これは紛争を起こす原因となる。
    
    ●妥協は必ずしも領土主権の譲渡を伴う必要はないのだが、
     それでもこれは中国の権益が脅かされないと
     安心させるようなものでなければならない。
     これを行う最適な方法は、日本、インド、そしてアメリカを含む国々と中国を、
     地域の枠組みに拘束することだ。
    
    ●「東アジアサミット」はその一つの案であろう
    
    ===
    
    このFTの社説の分析によると、
    
    「米中のグローバルなバランスが中国よりにシフトしていて、
     この流れは避けられない」
    
    ということになります。そしてその対策として最も効果的なのは、
    「東アジアサミット」のような地域フォーラムのような場だということです。
    
    これはこれで非常に納得のいく、当り障りのない分析ですし、
    私もこれに対して取り立てて異論はないのですが、
    一つ気になったことがあります。
    
    それは、その分析の全体があまりにも楽観的であることです。
    私がどうしてそんなことを思ったのか?ということですが、
    まずは、私が最近読んだ、ロバート・カプラン氏の『アジアの難問』
    (http://goo.gl/1ahR68)
    という本から、気になったところをご紹介してみます。
    
    ===
    
    ●カリブ海と南シナ海には、明らかな相似点がある。
     両方とも大陸規模の国、つまりアメリカと中国の、周辺に位置する海域だ。
    
    ●二〇世紀半ばに活躍したオランダ系アメリカ人の地戦略家、
     ニコラス・スパイクマンによれば、アメリカが世界国家となったのは、
     広域カリブ海で圧倒的なコントロールを得た時からだ。
    
    ●「アメリカの地中海」、つまり広域カリブ海を支配してからは、
     アメリカは西半球で他のライバルから挑戦を受けることがほとんどなくなった。
    
    ●したがってスパイクマンによれば、アメリカは広域カリブ海の支配のおかげで、
     東半球のバランス・オブ・パワーに影響を与えるだけの力を残しつつ、
     西半球の支配を得ることになったのだ。
    
    ●つまり最初は「広域カリブ海」で、その次に「世界」だったである。
    
    ●これは中国と「アジアの地中海」にも当てはまる。
     南シナ海の支配は、中国にユーラシアの航行可能なリムランド
     ――インド洋と太平洋の両方――の空と海において、
     影響力を発揮するためのチャンスを確実に与えることになる。
    
    ●そうなると、中国はインド・太平洋地域で実質的な「覇権国」となるだろう。
    
    ●もちろんこれだけでは、中国はアメリカのように
     自分の位置する半球で圧倒的な存在になれるわけではない。
     しかしこれができれば、中国は東半球の大国の中で最強になれる。
    
    ●いいかえれば、南シナ海は世界の権力政治が交わる主要交差点であり、
     世界全体のバランス・オブ・パワーの維持にとって決定的な場所なのだ。
    
    ●ここで注意しておかなければならないのは、
     カリブ海(これにはパナマ運河を含む)というのは、
     現在の南シナ海ほど交易とエネルギーの
     主要な海洋ルートが交わる場所ではなかったという点だ。
    
    ●南シナ海周辺の国々が「フィンランド化」を避けるためには、
     アメリカの国防費が減少しつつある時代にもかかわらず、
     アメリカの安定したエアパワーとシーパワーに頼らざるを得ない。
    
    ●それができないとなれば、彼らは中国経済や国内の治安が
     将来のある時点で突然悪化し、
     北京の国防費を低下させるレベルまで落ちることを願うしかないのだ
    
    『アジアの難問』の第二章より
    
    ===
    
    さて、これを読んでみて・・・皆さんどう想われましたか?
    
    ここでカプランの指摘が重大なのは、
    アメリカにとっての「カリブ海」を、
    中国にとっての「南シナ海」として、
    比較分析していることです。
    
    カプラン(そしてスパイクマン)はそれ踏まえると、
    中国は必死になるのは理解できる、と。
    
    ただしこの海域には世界の主要シーレーンが通っており、
    当然、日本にとっても、
    というよりも、日本にとってこそ、
    決定的に重大な問題となります。
    
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    今回、私があの高級紙FTを相手に「楽観的すぎませんか?」
    と批判しているのは、FT紙が提唱しているような
    「地域フォーラム」だけで問題を解決できると考えるのは
    かなり無理がありませんか?ということです。
    
    もちろん「地域フォーラム」を設定するのはとても大事ですし、
    私も希望的観測としては、
    ここに突破口があればと願っております。
    
    しかし、相手は「大国」になりたての外交的に素人な、
    そして、自国軍でさえコントロールできていないのでは!?
    との兆候さえうかがえる、あの中国です。
    
    リアリスト的にシビアに視てみると、
    "フォーラムごとき"で
    中国を拘束(コントロール)できるとは到底思えません。
    
    悲観的な話になりますが、最終的にはカプランが指摘するように、
    我々は、
    
    「中国経済や国内の治安が将来のある時点で突然悪化し、
    北京の国防費を低下させるレベルまで落ちることを願うしかない」
    のかもしれません。
    
    危機管理などの前提となる基本認識として、
    こういう「最悪のシナリオ」を考えておくのは、
    基本中の基本です。
    
    少なくとも「戦略」というものを真剣に考えるのであれば、
    我々は、このような「前提」に立って物事を考えざる得ない状況に
    (否応なしに)直面しているということです。
    
    議論や思考のスタート地点としては
    「前提」というものがとても重要です。
    
    そして国際政治の安全保障がかかわってくる分野の場合には、
    その「前提」や「世界観」は基本的には「リアリスト的」なもの
    であるべきではないでしょうか?
    
    そのことをたくさんの方に認識してほしいと想っています。

    ( おくやま )

    次回のスタンダード・ジャーナルは、6月16日水曜日20時から。


    http://live.nicovideo.jp/gate/lv180132542
    ぜひ、タイムシフト予約をして下さい!!
    
    
    
    
    
    
    
    
    
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