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外からの「分断」と内からの「分断」を意識せよ!|THE STANDARD JOURNAL
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外からの「分断」と内からの「分断」を意識せよ!|THE STANDARD JOURNAL

2014-07-08 14:35

    おくやまです。


    先週、イスラエルの軍事史家で、

    「世界三大戦略思想家」の一人とも称される、

    マーチン・ファン・クレフェルト氏の講演会に

    「裏方」として参加しました。


    詳細はブログをお読み頂くとして、

    (http://geopoli.exblog.jp/22883114/)

    このクレフェルトから私が直接聞いた話のエッセンスとして、

    今回は、


    「戦略を実行する上で重要なのは、相手の<分断>である」


    ということをお話したいと思います。


    ー:ー:ー:ー:ー:ーー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:


    さて、『戦争論』でおなじみのクラウゼヴィッツは、


    「戦略はシンプルだ、しかしその実行は難しい」


    ということを書き残しております。


    これはまさに慧眼でありまして、

    世の中のあらゆる戦略というのは、まさにシンプルでないと

    個人だけでなく、集団の中にいる人間たちも混乱してしまいます。


    また、それを実行する際には人間の集団の力学が働きます。

    よく言われる行政の「タテ割り構造」などがありますが、

    たとえば、「子供を増やすための少子化対策!」といったところで、

    政府がまったく効果的な対策を打てないのは、

    この"実行の複雑性"にあります。


    私が師事したコリン・グレイという戦略家の弟子の一人に

    ジェームス・キラスというテロの専門家がおります。


    この人は戦略についてけっこう本質的なことを言っておりまして、

    それによりますと、戦略というのは


    1.学問ではなく、あくまでも実践だ。

    2.戦略にはアクター(実行する人や組織)の数が多い

    3.戦略には無数の要素が働く


    という、一見すると、「当たり前」とも言える指摘をしています。

    これを私なりに更に言い換えてみると、


    1.戦略には科学的に「これがベストだ!」というものがなく、

    2.集団でやるので、分断されると効果が半減して、

    3.一部でうまくいっても全体的にダメになることが多い


    ということになります。


    要は「実行がむずかしい」ということですが、

    今回、私が色々と話しを聞いたクレフェルト氏が

    言わんとしていたことは、上述(2)の

    「相手」を分断するように動け、ということでした。


    たとえば大英帝国というのは、

    歴史的にこの「分断」を得意としてきたわけでして、

    インドから撤退する時にパキスタンとの火種を残し、

    アイルランドから撤退する時に北アイルランド、

    太平洋諸島から撤退するときはインド系と原住民というように、

    歴史的に「分断」を積極的に行うことにより、

    自分に被害が及ばないようにしてきました。


    ただしここで重要なのは

    「分断」は、相手だけでなく、自らの身にも起こり得る。

    ということです。


    同じく英国の例を引くと、

    現在、スコットランドの分離独立問題が出てきており、

    これは自分の身のほうが「分断」されようとしているわけで、

    まさに歴史の皮肉というしかない状態です。


    「相手」を分断するだけでなく、

    同時に「味方」が分断されることも防がなければならないのです。


    ここで、この「分断」ということをさらに突っ込んで考えてみると、

    「相手を分断せよ!」というのは、

    ただ単に「攻撃せよ」と言っているだけで、

    肝心の「防御」の部分に触れていないのです。


    ここでは「仕掛ける自分も相手に分断されないようにする」

    という防御的な動きを忘れてはならないのです。

    これはとりもなおさず、

    「相手から仕掛けられてくる分断工作を防ぐ」

    ということを強く意識することでもあります。


    ー:ー:ー:ー:ー:ーー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:


    現在の激動の東アジア情勢を視たとき、

    その台風の中心にあるのは中国ですが、

    彼らにとってもやはり一番怖いのは、

    国内において「分断」されてしまうことです。


    具体的にはチベットやウイグル、それに民主化運動なども、

    現在の北京政府の立場からすれば、

    それは明らかに外からの「分断」工作以外の何物でもないわけです。


    そして、「分断される恐怖」というのは、日本でも同じです。


    集団的自衛権の行使容認などで、

    日本の国内に意見の厳しい相違などがあり、

    これが国内の分裂、たとえば沖縄の独立運動などに

    繋がってしまえば、それが日本の弱体化にもなりかねない・・・

    このことは、当然、諸外国は承知のわけで、

    特に日本に対して悪意?すらもっているのでは?

    とも思える国などからすると、このような「分断」工作を

    積極的に進めるインセンティブは十分にあるのです。


    さて、ここまで「国際政治」の話をしてきたわけですが、

    それに限定せず、私達が行うあらゆる人間活動を考えてみても、

    何らかの「戦略」をいざ実行しようとした場合、

    その方向性が「外側」に向かうものと

    「内側」に向かうものがあります。

    戦略にはこのような「二つのベクトル」があります。


    クレフェルトはイスラエル国内の分断を指摘しましたが、

    これは他のあらゆるケースにも応用できる話です。


    われわれは「戦略」をうまく実行する際に、

    「相手の分断」を狙うだけでなく、

    「味方の分断」を防がなければならないのです。


    このことを皆さんにも

    より強く意識してほしいと想っております。


    ( おくやま )


    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
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