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おくやまです。
この「アメ通」をすっかりご無沙汰している間に
みなさんもお気づきの通り、世界各地で
非常に「地政学的な」動きが頻発しております。
とくに目立つのはロシアや中東の動きですが、
潜在的な重要性という意味では
あいかわらず中国の動きから目を離すことができません。
そして中国は南シナ海において、
アメリカをアジアから追い出すような
あからさまな行動を取り始めました・・・というのが今回の話です。
米国のオバマ政権が中国に対して抑えめな態度を示しているために、
事態の深刻さの割にはあまり英字メディアには報道が出ておりませんが、
最近の中国軍機の米軍機に対する異常接近は、日本でも注目されました。
以下はCNNの記事の引用です。
===
▼中国軍戦闘機が米軍機に異常接近、米政府は強く抗議
http://www.cnn.co.jp/world/35052756.html
(CNN) 中国軍の戦闘機が今週、米海軍機に対し
「危険」かつ「プロ意識に欠ける」接近を繰り返し、
一時は約6メートルの距離まで異常接近していたことが明らかになった。
米政府は「(中国による)非常に憂慮すべき挑発行為」と非難している。
事件は19日、海南島の東約217キロの南シナ海上の国際空域で発生した。
米国防総省のカービー報道官によると、兵器を搭載した中国軍の戦闘機1機が、
米海軍の哨戒機P8ポセイドンの下約30メートルの距離を3回通過したという。
カービー報道官は「その中国の戦闘機は、P8に胴体の腹の部分を向けた状態で
P8の前を垂直に通過した。搭載していた兵器を見せるのが目的だったと見られる」
と述べた。
またカービー氏は
「中国機はP8の下や横を飛行し、約6メートルの距離まで接近すると旋回し、
約14メートルの距離を通過した」とした上で、「極めて挑発的かつプロ意識に欠ける行為」
と中国を強く非難した。
===
いやはやなんとも、危険なスタンドプレーをしてくる中国。
「プロ意識に欠ける」とまで言われてしまってます(苦笑
しかし、私達はここで決して
「中国は許せん!」「奴らはアホだ!」
となどと、情緒的・感情的な反応をしてはなりません。
ここは冷静に、
「彼らはなぜこういう行動に出るのだろう?」
と、この背後にある彼らの
<行動原理>
をしっかりと考えてみるのが肝要です。
先週の特番生放送でもお話しましたが、
この「原理」に基づく「相手の反応」の想定が付かない状態では、
こちらとして取るべき「戦略」などは、
そもそも立案のしようがないからです。
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では、今回の件に関して中国側の「行動の源泉」、
つまり、彼らの戦略思想の「前提」というのは
どういうものなのでしょうか?
やや宣伝っぽくなりますが(・・・思いっきり宣伝なんですが・・・(笑))
これについて参考になるのが、現在私が出版準備を進めている、
ロバート・カプランの『アジアの難題』(仮題)という本の中の記述です。
原著者のカプランは、すでにみなさんもご存知の通り、
アメリカの高級誌の外交・安全保障専門のジャーナリスト。
この彼が本の最後に、北京に行って中国側の外交分野の専門家と
話をした内容を話しております。
その中で、彼らの戦略思考の「前提」がわかる
とても興味深い箇所がいくつかあります。
ちょっとフライング気味になりますが、
大切なポイントなので、ここであえてご紹介します。
===
北京の中には一つのあやしい「特効薬」がある。それは
「中国は守りに徹している間に、アメリカは侵略している」
という考えだ。
その核心にあるのが、南シナ海の問題である。
北京ではタカ派もハト派も関係なく、
「中国は近代に入ってから西洋の列強に大きな“被害”を受けた」
という感情を深く共有しており、
南シナ海の問題を、例外なく
「国内問題」であると見なしている。
なぜなら彼らは単純に
「南シナ海は、海の方に伸びた中国の領土である」
と認識しているからだ。
ある夜に私が中国の学生向けに開催したセミナーでは、
緊張して震えながらはずかしそうにしていた若者が、私に対して
「なぜアメリカはわれわれの調和と慈愛に対して覇権で対抗しようとするのですか?
アメリカの覇権は中国の台頭に直面するれば混乱を招くだけです!」
と吐き出すようにコメントしていた。
これなどは、ややもすれば
「中国は夷狄(いてき)からの襲来に備えなければならない」
とする中華思想的な考えに基づくコメントのように思える。
===
・・・これを読まれて、皆さん、どうのような感想を抱かれましたか?
上記の部分からもわかるように、
中国の上層部は、とくに南シナ海において、
<<自分たちは「守り」にある、そして、アメリカが攻めて来ている>>
と考えていることがよくわかります。
となると、今回の中国軍機のアクロバチックな行動も、
基本的にはその前提として
「アメリカの侵略から国土を守っている」
という考えすらあろう・・・とも、
容易に察することができるわけです。
ここで大事になってくるのが、
私が十年近く前から提唱している「戦略の階層」です。
この概念について、シンプルに言ってしまうと、要するに、
「戦略で最も根本的なものは世界観である」
ということです。
「世界観」というのは戦略を考える上での「前提」になるもので、
「戦略の階層」上での最上位レイヤーである「世界観」に基いて、
例えば、今回の中国軍のアクロバチックな飛行といった
実際の軍事行動や、更に、政治家や当局者などの言動が為されます。
孫子は「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言っています。
ここで重要なのは、敵の「何を」知るのかということ。
<敵を知る>ということは、
相手の戦略の「前提」であり、
<戦略の階層>でいうところの
この「世界観」をしっかり見極めよ!ということです。
この「戦略の階層」について、今夜の特番生放送で、
ジックリ、きっちり(そして、しつこく何度でも)解説します。
もちろん中国の「世界観」についても触れる予定です。
ぜひご覧ください。
▼09/02 20:00~奥山真司の「アメリカ通信LIVE」&
THE STANDARD JOURNAL特番 「戦略の階層」で世界を透視せよ!
( おくやま )
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