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来日中のミアシャイマー教授とは何者なのか?|THE STANDARD JOURNAL
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来日中のミアシャイマー教授とは何者なのか?|THE STANDARD JOURNAL

2014-12-15 10:29




    おくやまです

    すでにご存知のかたもいらっしゃるとは思いますが、
    私が著作を二冊翻訳したシカゴ大学の
    ジョン・ミアシャイマーという学者が初来日中です。

    ●大国政治の悲劇:改訂版 http://goo.gl/Qh0Xep
    ●なぜリーダーはウソをつくのか http://goo.gl/7Xo6R9

    私は訳者という「特権」をフル活用しまして(笑
    来日初日となる11日(木)の夜の夕食会からご一緒させていただき、
    本日(12日)は、彼の来日最初となるイベントに参加してきました。

    このシンポジウムのテーマは「中国の台頭」と、
    それが東アジア全般に与える影響という、
    まさに日本にとっては重大なものだったのですが、
    ミアシャイマー自身は単なるコメンテーターの一人であり、
    最初に15分しゃべって、あとは会場からの質問に答えるだけ。

    ところが世界的な学者に向かって
    こういうのは失礼かもしれませんが、
    ここでの彼の受けこたえが非常に鋭く、
    なんというか、彼の頭脳の鋭さが
    すでにいかんなく発揮されておりました。

    その受け答えの様子を説明したいのですが、
    その前に
    「そもそもミアシャイマーのものの見方ってどういうものなの?」
    という方もいらっしゃると思いますので、
    それを簡単に解説しておきましょう。

    まずミアシャイマーの理論は、
    「攻撃的現実主義」という名前がつけられております。

    まず後ろの「現実主義」ですが、
    これは英語ではリアリズム(Realism)と言いまして、
    国際関係を対立や紛争をベースにして、
    パワー争いをする国家の動きを中心に
    冷酷に分析する理論のことです。

    ではなぜ「攻撃的」なのかというと、
    これは国際政治全体を動かすメジャーなプレイヤーである
    「大国」が常に拡大しようとして
    攻撃的に振る舞うものだと見ているからです。

    そして「大国」が拡大しようとする理由は、
    国際社会(専門用語では国際システムといいます)の構造が、
    彼らを自然と拡大に駆り立てるからです。

    これをいいかえると、大国というのは
    国内的な事情や文化的な要因から拡大するのではなく、
    あくまでも「システム」という
    外的な要因から拡大せざるを得なくなる、
    ということなのです。

    そしてこのように大国を拡大させようとする国際社会の構造は、
    互いを競い合わせることになるので悲劇的です。

    だからこそ彼の本の題名は「大国政治の悲劇」なんですね。

    これをまとめると、

    「システム的な理由から拡大しようと
    攻撃的に振る舞う大国を、冷酷にパワーの観点から分析する」

    というのがミアシャイマーの理論のキモなわけですね。

    歴史的に「大国」たちの様子を見てみると、
    たしかにナポレオン戦争時代以降、
    近代のすべての「大国」たちは、一部例外を除いて、
    すべて攻撃的に拡大しようと行動してきました。

    ナポレオンのフランス、ヴィルヘルム皇帝時代のドイツ、
    帝政ロシア、ソ連、帝国時代の日本など、
    たしかに歴史を見てみると拡大傾向をもつものばかり。
    ただしその「一部の例外」があります。

    アメリカとイギリスです。

    彼らは海に囲まれていた「島大国」であったために、
    陸の大国とは違って
    そこまで外に積極的に海外の領土を奪おうとはしませんでした。

    それでも「大国」ですから、
    外への拡大への動機は残っておりまして、
    そのチャンスを活かしたのがアメリカです。

    アメリカはとくに19世紀に、
    東部から西部へ一気に領土を拡大しておりますし、
    その後も南米はフィリピンのほうまで力を拡大していきます。

    それが20世紀の前半にぶつかって
    第二次大戦の太平洋戦線につながったことは
    みなさんもご存知の通り。

    つまり、大国は拡大するのです。

    ===

    このような国際政治の見方をするミアシャイマーですが、
    今回の訪日の際におそらく最もしゃべことを期待されているのが、
    今日のシンポジウムでもあったような「中国の台頭」というテーマ。

    そしてミアシャイマー自身は、中国も「大国」であるために、
    国際的な「システム」の影響を受けて拡大せざるを得ない
    とみます。

    そのために、彼は
    「中国の台頭は平和的かって?私の答えはノーです」
    と明快に答えるわけです。

    もちろん本日のシンポジウムでも
    このようなことを論じていたわけですが、
    会場の中には当然ながらミアシャイマーの理論を
    そこまで詳しく知らない人もいるわけです。

    たとえば会場から出た質問の中に、

    「中国は過去の大国とは違う統治機構(共産主義)や
     文化(儒教)を持っていますが、これらは
     彼らの地域覇権を目指した拡大には
     影響を与えるんじゃないですか?」

    というものがありますが、
    当然ながら「国際システム」という要素だけを分析する
    ミアシャイマーにとっては、
    政治体制や文化などの性格は関係ない
    ということなるのです。

    案の定というか、ミアシャイマーの答えは

    「私は国際システムだけ見ますので、
     基本的にどんな大国でも一緒であり、
     例外なく拡大しようとします」

    とバッサリ。

    他にも、これまでミアシャイマーのことを
    全く知らなそうなご老人の方
    (もしかすると外務省かどこかのOB?)が、

    「ASEANの地域フォーラムのような
     マルチな信頼醸成による予防外交で
     軍事紛争は防げますかねぇ?」

    という質問が出たのですが、
    これもリアリストのミアシャイマーにとっては
    問答無用の「ノー」のはず。

    というか、こういう質問を聞く相手を
    そもそも間違っているような気が(苦笑

    ところがミアシャイマーは相手を見て
    「過激なことを言ってはいかん」と思ったのかどうか、
    意外に「まあ効かないと思うんですが、わかりませんねぇ」
    とちょっとお茶をにごした曖昧な答え。

    実際は「ノー」と言いたいところなのかも知れませんが、
    この場だけは、なぜかソフトランディング狙いの
    答え方をしておりました。

    この他にも色々と話はあるのですが、
    ここでは書ききれません。

    とりあえず16日(火)夜の生放送で
    色々と話しますので楽しみにしていてください。

    ▼ミアシャイマー教授来日記念特番 生放送▼
    2014/12/16(火)22:00~(番組冒頭は無料試聴可能です)

    ※21:00〜 通常の生放送もやります。



    さてそして、
    本のプレゼント企画も引き続き募集中デス!

    おくやまさんが解説(&監修)された
    ロバート・カプラン氏の
    「地政学の逆襲
     ”影のCIA”が予測する覇権の世界地図」
    を一名様にプレゼント致します!!!

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