おくやまです。

新年早々「クラウゼヴィッツ宣言」をしたばかりですが、
今回は私が翻訳したミアシャイマー教授の『大国政治の悲劇』の中から、
ひとつ注目すべき箇所についてひとこと書いておきたいと思います。

昨年末にミアシャイマー教授が来日したおりに、私は彼に向かって
「あなたの中国台頭悲観論にたいする最大の反論はどのようなものですか?」
と直接聞いたことがあります。

するとミアシャイマー教授自身は、
「いずれも致命的なものはないが、最大のライバルはリベラル派の理論かな」
とすぐさま答えてくれました。

そしてそのリベラル派の理論の中でも最強だと思われているのが、
「米国と中国が経済的な結びつきを深めれば戦争の発生は防げる」
とする、いわゆる
「経済相互依存」(economic interdependence)
という理論だというのです。

これは日本でも普通にメディアで聞かれるものです。たとえば、

「中国との戦争を防ぐには、経済的に中国とwin-winになる状態を作ればいい」

というのはみなさんも一度くらいは聞いたことがあるでしょう。
つまり中国とビジネス的な結びつきを強めてしまえば、
いざ国家間で危機が起こったとしても、
指導者同士は貿易関係を破壊してまで戦争を起こしたいとは思わないので、
互いにその火消しに回る、という考えです。

ミアシャイマー教授自身はこれが
彼のリアリズムにとっての最大の反論だと考えているようですが、
実はそのような反論にたいしても、しっかりと再反論しております。

その証拠が以下のようなもの。

『大国政治の悲劇』改訂版
(http://goo.gl/cHRMTn)の第十章の中で、
彼は主に3つの理由を挙げて、
日本でも一般的に広く認められている「経済相互依存」の理論に反論しています。

=(引用はじめ)=

「相互依存状態によって、
中国のさらなる強大化に直面したアジアの平和を保つことができる」
という主張だが、これを疑うべき理由が三つある。