THE STANDARD JOURNAL アメリカ通信
おくやま です。
先日の生放送でも触れましたが、
今年も毎年恒例のダボス会議が終了しました。
ダボス会議とは、正式名称を「世界経済フォーラム」といいまして、
毎年1月末にスイスのダヴォスで2500人ほどの政財界のリーダーや知識人、
それにジャーナリストなどを集めて開催される年次総会が有名です。
ここでは常にその年の世界的な問題が取り上げられることで有名。
もちろん陰謀論好きな人たちは、ここで決めたことが
その年の世界の動きを決定するという見方をします。
さて、「地政学リスク」を分析する世界的な企業を立ち上げたことで有名な
イアン・ブレマーという人物がいるのはみなさんもご存知かもしれません。
そしてこの人も、この年次総会に参加しまして、
さっそく全体的な内容や雰囲気を、
10個のポイントに簡潔にまとめてネットに挙げております。
そこで指摘されていたのは、まさに今年の世界経済の暗い雰囲気です。
もちろん主な原因は、中国のバブル崩壊による国内不況(というか恐慌?)、
そして原油価格の下落にあると見られております。
こういうニュースを聞くと、ここ最近の日経平均の下落もあり、
これから日本経済も大きな影響を受けて、下手をすると(しなくても?)不況に陥る、
という予測が出てくるのは当然といえるでしょう。
つまりこのまま行けば、日本は確実に不況に陥るわけで、
われわれ個人も、そのような影響から逃れられない、
ということなのです。
▼「今年のダボスのキーポイントはこれだ。」(イアン・ブレマーさん)
|奥山真司の「アメ通LIVE!」(20160126)
このようなわかりやすい予測というのは、きわめて魅力的に映るものです。
ところが戦略を学んだ人間としては、
どうもこのような一直線な予測には警戒しがちです。
というのも、現実というのは、ルトワックや孫子が指摘しているように、
極めて「陰陽」的な物理法則によって左右されているものであり、
一直線に進むものではないからです。
現在まとめているルトワックの本でも指摘されておりますが、
中国が2010年頃からいままで大成功を収めていた「平和的台頭」をやめて、
いわゆる「自滅的な政策」に突き進んだ理由の一つがまさにこれです。
❊この「自滅的な政策」については、
拙訳の『自滅する中国』(http://goo.gl/V5t4tZ)に
詳しく書かれておりますのでぜひご参照ください。
ルトワックによれば、2009年頃の中国のトップの間で交わされていた議論は、
「中国が上がり、米国は下がる」
というもの。いまから考えると隔世の感がありますが、
その当時は「あと10年もたてば中国はアメリカを余裕で追い抜ける」
という雰囲気が中国内外にもあったのです。
ところが現実はそうなりませんでした。
アメリカは危機的な状況を回避し、逆に現在不況に陥っているのが中国です。
ではその当時の中国のトップたちはなぜ間違えたというと、
それはものごとが一つの方向に一直線に向かう、
まさに「線的」な予測を行ったからでした。
つまり自然界、そして人間社会のあらゆる営みというのは、
「線的」(リニア)なものではなく、
むしろ「非線形的」(ノンリニア)なものに近いからです。
もちろん普通に考えれば、世界経済の不況が
このまま日本に悪影響を与えてくるのは間違いないでしょう。
ただしその影響の現れ方も、きわめてムラがあるものであり、
しかもそれらは一直線にわかりやすい形であらわれるものではないのです。
なぜならあらゆるものごとは「線的」に動かず、
しかも国際政治や経済というものは、多数のプレイヤーがいるために、
物事が極めてダイナミックに動くからです。
孫子やルトワックのような戦略論を学んでおくと、
世の中一般に流布されているような
「このまま日本はダメになる」という予測が「線的」なものであり、
いかに怪しいかがわかります。
先日の私のブログのエントリー(http://geopoli.exblog.jp/25303681/)
の記事にもあったように、
これからテクノロジーや世界経済がどのようになるのかは誰にもわかりません。
なぜならこの記事の中にもあるように、
「経済学者たちは、どのような形でテクノロジーのブレイクスルーが起こるのか
について信頼性のある理論を持っていない」からです。
それではわれわれはこのような一見してカオスの状況の中で、
一体どのようにして生き残っていけばいいのでしょうか?
そのヒントは、私は『孫子の兵法』の中で説かれている
「陰陽論」の中にあると考えております。
今後もこの陰陽論については、
番組の中でおりに触れて解説していきたいと思います。
孫子のCDも含め、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
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