TRUMPシリーズ短篇小説
「その感情の正体は」 筆・末満健一
幼い自分が目の前にいる。歳は七つか八つほどの、まだ世界の仕組みなどほとんど知らぬ少年だった頃の自分だ。恐怖で顔を引き攣らせ、震える瞳がこちらを見ていた。自分と対峙する自分の手には血に濡れたナイフが握られている。妙に重たく、ぬるりとしたその感触が、現実と夢の境界を曖昧にしていく。周囲に転がっているのはナイフで身を裂かれて絶命した者たちの骸だ。幼い自分の前に飛び出してきたのは亡き父と母だ。「ああ、ダリア!」震えた声で母が叫ぶ。母は幼い自分を抱きかかえて守ろうとしている。「お願いします! どうかこの子の命だけは‼」凶刃の主の前に父が立ち塞がる。ダリアの手にしたナイフは己が意思と反して、父と母に殺意を向ける。「……駄目だ……やめろ……やめてくれ‼」懇願の声は阿鼻叫喚の中に溶け、なんの意味も持たなかった。手にしたナイフが父と母を斬り裂