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【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第4回】
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【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第4回】

2013-11-19 00:00
  • 1

3章 やればできる


はじめから よむ (第1回へ)

 三人だ。

 たった三人でいい。

 今の僕に必要なものは勇気。

 たった三人の仲間を得るために、誰かに話しかける勇気が欲しい。

 勇ましき者の血を引いているはずなのに、致命的に勇気が足りない僕だったが、とにかく三人だ。仲間が三人欲しい。勇者のお供といえば三人。勇者を含めて四人のパーティで世界を救うというのが古来からの伝統である。かつて桃から生まれた勇者もそうであった。とはいえ、その時は三人ではなく二匹と一羽だったが。

 仲間の数は三。三がいいのだ。三こそ巨悪に立ち向かうラッキーナンバーである。

 ヨコリンに教えてもらった呪文を狂ったように反芻している矢先、ふとドレアさんから言われた言葉が頭をよぎった。

「どんな仲間をお探しなの?」

「ほら、職業とか、年齢とか、性別とか」

 しまった。そうだ。何も考えてない。職業とか年齢とか性別とか。どうしよう。

 そうだな、えーと、完全に僕の好みで言うのなら、まず腕っぷしの強い戦士、もしくは武闘家が欲しい。モンスターの強力な攻撃を身を呈して受け止め、時には身軽にかわし、脅威的な反撃を叩き込む。勇者のお供には欠かせない人材だろう。

 それと、傷ついた仲間を癒す僧侶も必要だ。僧侶の使う回復呪文で体の異常を取り除き、また戦う。絶対に途中で倒れられない過酷な冒険になるのだから、僧侶も必要不可欠だ。

 大量のモンスターを一度に相手にする場合は、魔法使いの呪文が役に立つ。燃えさかる炎や氷の刃でモンスターを一網打尽にする。これもいい。やはり魔法使いも必要不可欠だ。

 分かれ道ばかりの迷宮を進む場合には、盗賊がいれば便利だ。ダンジョン内のどこに階段があり、どこに宝箱が眠っているか、完璧に把握できる能力を持っている。その上持ち前の素早さで、モンスターから金品や特殊なアイテムを盗み出してくれるかもしれない。安全にダンジョンを攻略するためには盗賊も必要不可欠だ。

 そして肉体ではなく精神の疲れを癒したい時には、遊び人の存在が心の支えとなる。遊び人のくり出す軽妙なジョーク、ユーモアの数々は殺伐とした冒険に潤いを与えてくれるはずだ。おまけに遊び人が女性だった場合、男性特有のよみがえる性的衝動を発散する役回りも買って出てくれるかもしれない。なんという幸運か。もっとも必要なのは遊び人なのかもしれない。

 どうしよう。決められない。話せない決められないではまったくいいところなしではないか。他人に誇れるようないいところが僕にあるのかと常々思っていたが、まさかここまで悪いところだらけとは。とても真似できない匠の技を体得している人間のことを人間国宝というが、僕は人間の中のゴミだ。人ゴミだ。人ゴミって。もうその言葉ありましたね。はい自害ポイント獲得。これが百ポイント貯まると僕は自害します。嘘です言ってみただけです。

 そもそもだ。そもそも「こんな仲間が欲しい」と僕が事細かに理想を思い描いたとして、そんな理想通りの人物がこの酒場にいるか? いる、かもしれないが、いるとも限らない。なんかないのか、この酒場にいる人物のプロフィールをまとめたカタログみたいなものとか。僕は行ったことないけど、エッチなお店にだってあるんでしょ、そういうの。最初にお店の入口で写真とプロフィールを見てこの人にしようって決めるんでしょ。なんでそういう性的衝動を浄化する場所にはあるのに、魔王討伐に連れていく大事な仲間を選ぶ場所にはそれがないわけ? おかしくない? いや、もしかしたらあるのかもしれないよ? ドレアさんが気をきかせて冒険者カタログみたいなものを作ってくれてるのかもしれないよ? でも今の僕には「ここにいる冒険者の情報をまとめたカタログみたいなものってないですかね」っていうただそれだけの事が聞けない。確認がとれない。なぜって? 人ゴミだからさ!

 理想の仲間像を追い求めるのはやめよう。そもそも理想の仲間像なんて最初考えてなかったし。こういうのはその場で臨機応変に対応して、ベストを尽くすべきなのだ。自分で話しかけて、相手がどんな人物か知って、今この酒場にいる人の中でイイなと思えた人を連れていこう。仲間の勧誘ってそういうものなんでしょう。やりたくないけど。やるよ! こんなところで僕の魔王討伐の夢をコナゴナにするわけにはいかないんだよ! やるしかないんだよ!

 

 なかばヤケクソ気味に気持ちを盛り上げて、僕はようやく顔を上げた。

 ドクン、ドクンと脈打つ心臓の音がいつもより大きく聞こえる。

 目線だけをチラチラ動かしながら、あたりの様子を伺う。

 ずっとうつむいていたので今まで気づかなかったが、僕がもたれかかっていた壁のすぐ脇には階段があった。酒場の二階に続く階段だ。建物を外から見た時にも思ったが、この酒場は二階建てなのだろう。上からも幾人かの楽しげな話し声が聞こえてくるので、二階も客向けに開放されているようである。

 あんな楽しげな雰囲気の中に僕が飛び込んでいくなんて。できるのか。考えただけでゾッとした。さっき上げたばかりのテンションが急激に萎えていくのを、歯を食いしばって必死で食い止める。ちょっと待とう。二階にも行くよ。行くけど、まずは一階からだよね。うん、そうそう。二階は後にしよう。僕は自分を納得させて、まずは一階から攻める事にした。


第5回を読む


・原作となるアプリはこちら(iPhone、Androidに対応しております)

http://syupro-dx.jp/apps/index.html?app=dobunezumi
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彼女は最後にから飛んできましたけど、こっちのゲームも面白くて、ついでに小説版もおもしろくてびっくりしまくりです。強盗強くないすか、行方不明のアイツ姿くらまし。

No.1 87ヶ月前
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