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『ネヴァーウィンターの失われし王冠』第三部第10回リプレイ:運命の夜
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『ネヴァーウィンターの失われし王冠』第三部第10回リプレイ:運命の夜

2014-07-09 17:04
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 水曜夜は冒険者――場所はお馴染み、東京は代々木、HobbyJapanの配信室より。
今回は全員揃っての最終戦闘。しかも大型戦闘が2回予定されています、ということで、オープニング動画も飛ばしての正真正銘のホット・スタートです。



 ジェイドたちが地下から湧き上がるアンデッドの群れとにらみ合っているちょうどその頃――。
 死霊の腕につかまれて地中に引きずり込まれたミシュナは、どことも知れぬ石造りの小部屋の中で“生徒会3人組”と共にいた。どこからともなく呪文の詠唱――何やら儀式をしているようだ――が聞こえてくる。

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シェリー:「ここは恐怖環よ。今はヴァリンドラさまの居城になってる。さあ、ミシュナ、あなたもロラガウス復活の儀式を手伝うのよ」
ミシュナ:「そんなことしてる場合じゃないわ。私は仲間たちのところに行くの」
シェリー:「わかってミシュナ。
 もう誰もヴァリンドラさまからは逃れられない。みんなアンデッドになってしまうのよ。街はもう滅んでしまった。助けられるものなどもういないのよ。あなたの仲間たちは愚かにもここまで来てしまった。勝ち目はないわ」

 ミシュナは静かにシェリーを見つめ返す。

ミシュナ:「ジェイドは……私の仲間たちは、共にネヴァーウィンターを復興させると誓ったのよ。私はその手伝いをしたいの。ジェイドもアンデッドになってしまったけれど」
シェリー:「ならば余計、ヴァリンドラさまからは逃れられないでしょう。彼に勝ち目があるなんて思わないで。――彼らを見て、ミシュナ」

 シェリーは背後に立つ“生徒会会計”であるドワーフのドルマーと“書記”チャールを示した。驚くほど顔色が悪い……いや、目に光がない。そうだ、死んでいる。アンデッドになっている。

シェリー:「力のないものはここでは生きていけないのよ」

 ミシュナは微かに唇を歪めた。

ミシュナ:「あなたはひとつ間違ってる。ジェイドには力があるわ。それに彼は必ずネヴァーウィンターを復興させる」
シェリー:「どうしてもわからないのね。なら、力ずくでも……」

 その言葉が終わらないうちに、部屋の天井がいきなり崩れ、そこから骨の竜の鉤爪が飛び出してきた。ミシュナが管理していたボーン・マングレル・ドラコリッチ――その背にはブックインプに憑依したブラックモアが乗っている。

ブラックモア:「助けに来たぜ。乗れ、ミシュナ!!」

 一瞬高度を下げた竜の首につかまるミシュナ。
 飛び去る竜とミシュナを見ながら――シェリーの頬には、確かに一筋の涙が伝っていた。



 そのわずか後。
 ミシュナも含めたジェイドたち一行は、凄まじい数のアンデッドに今にも押し包まれようとしていた。

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 ロラガウスの骨を掘り出したのであろう露天掘りの発掘現場。深く穿たれた穴の上を半球状に紫色のエネルギー体が覆っている。おそらくその中でロラガウスの復活が進んでいる。そしてその周囲からいくらでも湧き出してくる――見知った顔の、アンデッド。なかばくずれたようなゾンビやスケルトンばかりとはいえ、その数ざっと80体。しかもスケルトンどもは弓をもっている。
彼らの先頭に立つのは一人の女騎士。
ジェイドの剣の師匠であった時はサビーヌと、そしてネヴァーウィンターの傭兵隊長であったときはセイバイン将軍と名乗っていた人物。その傍らに、もう1体、由緒ありげな甲冑に身を包んだバトルワイトがいる。“ブラックモアの肉体”だ。

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 その中央に、もう見慣れた赤いローブの三人組がいる。いや、レッド・ウィザードはもはやシェリー・ホワイトグレイヴのみ、あとの2人は既にワイトと化している。彼らがこの場のアンデッドたちを操っているものだろう。その向こうの廃墟の塔の中にも人影が見えるが……おそらくはそこにいるのがこの場の元締めだろうが、遠くて誰が誰やら判別がつかぬ。

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 誰よりも早く走り出したのはエリオンだった。剣を高々と掲げ、名乗りを上げる。

エリオン:「我が名はシルヴァークラウン家のエリオン。イリヤンブルーエンを守るブレードシンガーにして、太陽と月より編み出されしフェノルの魔剣にてロラガウスを屠るさだめを背負う者!!」

 言い終わると同時にその掌からまばゆい鮮やかな光が迸る。向かって右側に展開するゾンビやスケルトンどもがまとめてその光に包まれ、瞬時に20体が消し飛んだ。数は多いが敵は雑魚。範囲攻撃で薙ぎ払えばまとめて始末できる。

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だが、サーイ側も負けてはいない。応えるように“ブラックモアの肉体”より生まれしバトルワイトが動いた。セイヴの身体に死者の剣が食い込む。命の根源が削れ、身体がしびれる。具体的には回復力が1回ぶん失われ、セーヴ・終了の動けない状態になる。

“ブラックモア”:「俺は……レッド・ウィザードを守る……」

 死者の唇が震え、濁った言葉がこぼれる。

セイヴ:「お前がレッド・ウィザードを守ると言うなら、俺はこの、死してなおネヴァーウィンターを守るという若者を守る。我が名はセイヴ、死よりよみがえった男だ。覚えておけ!!」

 返礼とばかりにセイヴも剣を振るう。長剣は過たずに“ブラックモア”の胸を切り裂く。

 ジェイドはかつての師匠サビーヌの打ち込みを剣の背で受け止めていた。
 鈍い。
 あの師匠の剣では、既にない。目の前の懐かしい姿の内側にその魂は存在しないのを見せつけられるようで、相手が思うほど強くないことが、かえってジェイドには苦しかった。

セイヴ:「気をつけろ、上だ!!」

 突然セイヴが鋭く叫んだ。スケルトンどもが一斉に矢を射かけてきたのだ。矢の雨が天を覆う。しかしさすがはぽんこつスケルトン、狙いがいい加減なのだろう。先頭のセイヴがそれをことごとく叩き落としてしまう。何本か落とし損ねたものは直接身体で受け止め、セイヴはにやりと笑った。

セイヴ:「固まってたら狙われるってこったな」

 とはいえ、前方に突出したエリオンも飛びかかってきたワイトの屍術師――“生徒会3人組”のシェリー以外の2人の変わり果てた姿である――の爪をすんでのところでかわしたところ。

 だが、もう1体のワイトの爪、こちらはエイロヌイの身体を過たずに抉る。エイロヌイは

エイロヌイ:「あら。……私はパラディンのエイロヌイ、物見遊山のついでにここまで来てしまいましたわ」

 と、とんでもない名乗りを上げると、何を思ったか「エリオン、後は任せましたわ」と叫び、途端にその姿は見えなくなった。
 具体的にはドライアドの力、“ウッドゥン・サンクチュアリ”によって発掘現場の木材に同化したのである。

 ゾンビたちがわらわらと詰め寄ってくる。
 その中に紛れるようにして、シェリー・ホワイトグレイヴも進み出てきていた。彼女が両手に掴んで高々と掲げるのは――なんと、かつてエヴァーナイトで巻き込まれた裁判騒ぎの元凶ともいえる“愛らしいキャリオン・クローラーの幼体”きゃりーちゃんではないか!! 暗黒裁判の時にやたらこだわっていたきゃりーちゃんを、どういう経緯でか彼女は手に入れていたらしい。

シェリー:「あなたの弱点は既に分かっているのよ、さあ、怯えるがいい!!」

 そう叫んでジェイドにきゃりーちゃんを突き付けざま、今度は素早く呪文を紡ぎあげる。さすが熟練のレッド・ウィザード、その呪文の向かう先はジェイドとは逆側に立つエリオン。狙いは過たず、エリオンの周囲に無数の死者の手が現れ、エリオンの身体の自由を奪っている。それを見届けざま、シェリーは勝ち誇ったような顔で視線をジェイドに戻す。

シェリー:「裁判での屈辱、忘れてはいないわよ!」
ジェイド:「俺が、怯える、だと……?」

 兜の奥で、ジェイドの眼が微かに光った。既に死者と化し、人の心を失いつつあるジェイド――だがその代わり過去の心の傷も忘れたのではないか。

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 そう、ジェイドは視聴者のキャラクターなのだ。代表PLとしての柳田はいるが、このギリギリの局面において彼が何を思うかは、視聴者が決めるべきなのだ。果たして……

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ジェイド:「……なぜだ、身体が竦む。この恐怖が……人間の心の証なのか……」

 忌々しげでありながら、その言葉にはどこかにあたたかな苦笑いが混ざっている。

ジェイド:「そうだ、思い出したぞ。俺には怖れる心がある。それは、俺が人であったこと、今もなお人であることの証し。それに俺は“守るべきもの”があるということもな。来い。俺以外の連中には手を出すな。俺は騎士だ、仲間を守るべき騎士なのだ!!」

 ほとんど凶暴なまでの笑みを浮かべる。その唇から除くのはもはや人間でない証の牙。しかしその心は人間の温みを思い出しつつある。そして――ジェイドは己の意志の力で改めて触手の恐怖を振り払った。そうだ、恐怖もあるが――俺には守らねばならぬ仲間がいる。

 その時、ひときわ高い声がはっきりと名乗りを上げた。

ミシュナ:「ザス・タム学園のミシュナ、それは確かに私だった。でももう私はレッド・ウィザードじゃない。失敗もしたし、後悔もしてきたけれど、私のすべきことはジェイドが人間だったことを覚えていること、そして彼を助けること――!!」

 言いざま、空中に幻の糸を描き出す。それに絡め取られ、向かって左側に展開するゾンビども15体がすべて消滅した。ザス・タム学園の優等生の力は本物である。

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ブラックモア:「さすがだ、ミシュナ。この勢いで“俺の肉体”もやっつけちまってくれ」

 耳元でブックインプに憑依したブラックモアが囁く。

ブラックモア:「けど、口惜しいな――あいつは俺の夢を先にかなえやがったんだな」
ミシュナ:「あなたの、夢?」
ブラックモア:「俺の家系はもともと、サーヤン・ナイトっていってレッド・ウィザードを守る騎士の家系なんだ。ご先祖のカッコいい肖像画とかいっぱいあってさ。だから俺もいつかは騎士になるんだって思ってた。でも気が付くとそんな騎士の時代じゃなくなってて、親たちも俺に術師になれなんて言うしさ――けど、あいつは“俺はレッド・ウィザードを守る”って言ってただろ。だから口惜しいなァってさ」

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ミシュナ:「ブラックモアくん……」

 具体的には、これまでサーイの設定の中にあったサーヤン・ナイトのクラスが版上げに伴って消滅したというルール的な事実に即しての設定なのだが。

ブラックモア:「けど、俺が守りたいレッド・ウィザードはあいつらじゃない」

 その時。

ヘプタ:「そうッすよ、不浄なアンデッドは消毒ッスよ、ヒャッハァアアアアアア!!」

 奇声をあげてヘプタが躍り出た。その手から放たれる炎をまとった妖精!!――が、それは明後日の方向にすっ飛んで行った。一瞬、何とも言えない静寂が戦場を支配する。が、

エリオン:「聞け、我が魔剣の鎮魂歌!!」

 それを再びエリオンが破る。
 敵のただなかに瞬間移動し、目の前のシェリーに一太刀浴びせる。動けないなら魔法の力で動けばよいのだ。からみつく幻の死者の腕はまだ振り払いかねているが、ジェイドが声をかける。落ち着け、できるはずだ、と魔法のアイテム、ブローチ・オヴ・ノー・リグレッツによってセーヴを振り直させた

 エリオンに声をかけながら、ジェイドは目の前の敵とまとめて切り結ぶ。
 ――ここは俺に任せろ、手の空いている奴は術師を倒せ、このアンデッド軍は連中が操っている。
 その言葉に弾かれるようにセイヴは走り出す。まず倒すべきは――シェリーか。


アンデッド軍との戦いは混迷を極めていた。
ワイトの術師どもが飛びかかっては爪で掻き毟る。スケルトンの放つ矢も今度はまともに対象を捉えた。ミシュナの肩に矢が突き立ち、ヘプタのサングラスが割れてはじけ飛ぶ。危ない、と思った瞬間、

エイロヌイ:「天界の雷の怒りを受けるがいい!!」」

 エリオンが帯に差していた木の枝から突然光が弾け、エイロヌイがウッドン・サンクチュアリより顕現する。同時に胸元から轟音とともに光が迸れば、まともに喰らったシェリーが声も上げずに倒れる――もう、死んでいる。雷に巻き込まれて周囲のゾンビやスケルトンがまとめて吹き飛ぶ。そして

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エイロヌイ:「タラン!!」
タラン:「ちィーす……って、囲まれてるじゃないっすか!!」

 呼び出されたタランの悲鳴に応えるようにミシュナが惑わしの糸をそのあたり一帯に投げかける。残っていたゾンビがまとめて消滅する。“糸”の降りそそぐ空間にサビーヌもいたのがだが、流石にアンデッド化してはいてもかつての将軍の肉体はその程度には惑わされぬ。

――ああ、そうだ。生きていた時の力が死者となった今もまだ身に宿るのなら……かつての信仰もまだ俺を救ってくれるかもしれぬ。

ジェイドは、生前に篤い信仰を捧げていた幸運の女神タイモーラにいまひとたびの祈りをささげる――と、果たして。
死者の剣が注ぎ込んだ冷気が瞬く間に四肢から抜け、しびれていた身体は動くようになったではないか!!

一方、ヘプタはヘプタでコアロンに祈りを捧げる。俺の友人たちの腕にお導きを。あいつらの剣が敵をまともに斬りますように。それから……

ヘプタ:「動け、動くんだアニキぃいいいいい!!」

 死者の剣の冷気に当てられて動けないセイヴに声援を送る。その声に弾かれたようにセイヴの脚が自由になる。具体的には“ナック・フォー・サクセス”の効果によってセーヴを行ない、成功したのである。

 しばらくは入り乱れての斬りあいが続いた。その中でまたミシュナの魔法がスケルトンを10体ばかりまとめて片づける――急に戦場の見通しがよくなり、そしてミシュナの眼に、倒れて動かないシェリーの姿が映った。

ミシュナ:「……!!」

 声をあげかけ、そしてミシュナは唇を噛んで顔を背けた。
 お互いに、敵同士だったのだもの。

 ヘプタがクロスボウをシックルに持ち替え、背後からサビーヌを斬った。その身体がゆらりと傾ぎ――体の中から灰が噴き出す。ワイトと化したサビーヌは……サビーヌであるのはもはや外見だけ、その身体の中に詰まっていたのは自決したネヴァーウィンター九勇士の灰だったのである。ヴァリンドラの嘲笑がどこかで響いた。

――灰となっても妾の役に立ってもらうぞ。

――おのれ、高潔に死んだ者をも愚弄するか。
ジェイドの顔が歪み……そして突然場違いにも、呆れたような笑みを浮かべた。

ジェイド:「なんだ、俺ももう死んでいたんじゃないか。死者の灰や死者の爪などに俺はもう傷つかないんじゃなかったのか」

 具体的にはヴリロカと化したジェイドは[死霊]ダメージへの抵抗を得ていたのだが、それをプレイヤーの柳田が今まですっかり忘れていたのである。
 一応、これまではサビーヌと斬りあっていたのでなんとなく死者と戦っている感じがしなかったとかそういうことでこれまでのダメージを遡って軽減しはしない(が、今後はいろいろ状況を自覚しなおしたのでちゃんと抵抗を適用する)ということにする。

 だが、因縁の対決とは別に果てしない命の削り合いはまだ続いている。エリオンがワイト術師を斬る。ワイト術師がエリオンになぐりかかる。エリオンが反撃する。そこへエイロヌイが割り込む。高々とアンデッド退散の聖句を唱える。ワイト術師の一方が倒れる。

 と。
 この場のアンデッド軍を操っていた3人組の術師のうち2人が倒れた、その瞬間。
 雑魚兵士たちは声もなく崩れていった。
 サビーヌと“ブラックモア”の2体も目に見えて動きが鈍くなっている。もはや崩れ始めるのも時間の問題だろう。ジェイドは微かに首を振ると、師の姿をしたアンデッドを叩き斬る。

 そして。
 ミシュナはブックインプに宿ったブラックモアの目をちらりと見る。ブラックモアが頷く。ミシュナの手から魔法の矢が飛んだ。ブラックモアの肉体を持つバトルワイトは完全に消滅した。

 だが、当然それで終わりではない。戦場に哄笑が響く。発掘場を取り巻く廃墟のひとつ、櫓状になった建造物を取り囲んでいた霧が急に晴れた。発掘場を見下ろすように設けられた祭壇が見える。そしてその傍らに立つ美しいエラドリンの女性――ヴァリンドラだ。

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ヴァリンドラ:「さすがよのぅ、よくここまで来たものだ。それだけは誉めてやろう。そしてそなたらが妾の設えし戦場までわざわざ出向いてくれたことにも礼を言うぞ。
 なにしろここは妾の掌の上、それにアンデッドの替えなどいくらでもおる。そなたらに勝ち目などあろうはずもない。
 見よ、ロラガウスも目覚めようとしている――初めて披露するのがそなたらであったことも幸せよの。そなたら相手ならロラガウスの力を余すところなく存分に振えるであろうからの」

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 長々と続く台詞の間にも、紫のエネルギー球が中から激しく震え、今にも何かが目覚めて飛び出してこようとしている……
 一触即発の空気の中、互いに睨みあうヴァリンドラとジェイド一行……その間にも地面からは無数とも思えるアンデッドたちが湧き出してくる。替えはある、の言葉に嘘はない。



 過ぎたのはほんのわずかの時間だったかもしれない。が、永遠にも続くかと思われた緊迫は、素っ頓狂にも聞こえる叫びで破られた。

クーリエ:「我が主、我らが王、助太刀に来ましたぞ!!」

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 骨の馬に跨り、自我を持つ“天然もの”のアンデッド軍を率いたクーリエが飛び込んでくる。その傍らを包帯だらけのアンデッドが駆けてくる。おそらくは――アデミオスの“二度目の姿”だろう。

 さらに、逆方向からも大地を蹴る馬の足音。ナイトメアに乗った仮面の騎士。

ネヴァーウィンター仮面:「……ネヴァーウィンター仮面。助太刀に参上した」

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 高めの感じの良い声が朗々と名乗りを上げる。応えるようにクーリエは舞踏会用の仮面をひょいと顔に載せ

クーリエ:「では、さしずめ私はエヴァーナイト仮面ですかな」

 ネヴァーウィンター仮面の傍らに、筋骨たくましいドワーフが現れる。その顔には見覚えがある。ホートナウ山で会ったドワーフの戦士、もう一人のジェイド……

ジョードマー:「我が名はジョードマ……ゴーントルグリム仮面ッ」

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 名乗りかけて周囲から睨まれ、慌ててジョードマーもそんなことを言う。負けずにアデミオスであろう包帯男も名乗りを上げる。

アデミオス:「……仮面シャランダー」

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 呆然とする一行に軽く一礼、そして現れた“心持つ”アンデッドたちはヴァリンドラの操る雲霞のごときアンデッド軍めがけて突っ込んでゆく。
 雑魚は彼らが掃討する。ジェイドたちはヴァリンドラ――そして目覚めし竜、ロラガウスの2体――いや、ヴァリンドラの護衛らしきアンデッドもいるから、一応3体か――のみを相手取ればよい。
 しかもドラコリッチとして目覚めたばかりのロラガウスは、まだ身体が十分には動かない。具体的には戦闘開始時に既に重傷状態である。

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 しかもドラコリッチ化の儀式はひとまず一段落したとはいえ、完成してはいない。
 ミシュナの眼には、ロラガウスが未だエネルギーを注ぎ込まれている最中であるのがはっきりとわかる。そしてロラガウスにエネルギーを供給しているのは……祭壇の建物に配置された5つのオーブである。それを破壊すればまだエネルギー吸収中であるロラガウスの身体は急速に損なわれる。具体的にはオーブを1個破壊するごとにロラガウスの防御値が2、攻撃ロールが1ずつ下がってゆく。

「絶望的に強そうに見える竜だけど、まだ未完成なの。絶望するには及びません」

 その言葉を聞いた一行の眼に新たな力が宿る。まず、セイヴが高らかに大地の精霊に呼びかける。大地よ、俺たちの仲間の脚を支えてやってくれ。
 “セーフ・パッセージ”の祈りである。精霊に呼びかけ、その力を借りることで遭遇終了時まで、すべての移動困難地形を無視し、しかも移動速度も2加算されるようになる。

 脚に力を得たエリオンが弾かれるように走り出す。櫓の中に駆け込み、まず儀式のオーブ1個を破壊する。ヴァリンドラの眉が吊り上る。

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ヴァリンドラ:「妾の前に不遜であるぞ、ひれ伏せ!!」

 その指先から穢れた炎が解き放たれ、戦場を焼く。が、ジェイドはびくともしない。
 ネヴァーウィンターの王冠の力と死者としての存在が彼を炎から守っているのだ。苛立ちを隠そうともせず、ヴァリンドラはさらに腕を打ち振る。幻影の爪がジェイドと、ついでにヘプタの身体に食い込む。
 が、

ジェイド:「女神タイモーラはまだ俺の信仰を受け止めてくれている!!」

 祈りと共にジェイドは走り出す。目指すはロラガウス。ありったけの力で剣を叩き込む。魔法の武具の力もありったけを注ぎ込む。竜の身体が大きく抉れる。

 その隙にミシュナが2個目のオーブを破壊する。それからロラガウスにも魔法の矢を放つ。このまま勢いに乗って削り切れるか。
 そう思った瞬間。

 ロラガウスの首が周囲をねめつけるようにゆらりと動いた。そしてやおら口を開け、ブレスを吐く。ブラック・ドラゴン特有の酸のブレスではない。その口からあふれ出るのは死霊の冷気である。魂が凍り付く。意識が薄れる。具体的にはその黒い炎は[死霊]への抵抗を奪い、さらに対象を朦朧状態にするのである。ジェイド、ヘプタ、エイロヌイがその炎に包まれる。
 ――が。

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 ジェイドの戴くネヴァーウィンターの王冠の力が黒竜の炎の力を削ぐ。具体的には朦朧状態をなかったことにし、さらにネヴァーウィンター歴代の王の怒りが、黒竜の身体を灼熱と酷寒の炎で焼くのである。

 ――こしゃくな、ヒトの王ごときが。
 竜は大きく首を振るい、ちっぽけな剣士にその牙を突き立てる。ジェイドの今は打っていない心臓のあたりを牙は過たず貫き――そう、具体的にはクリティカルヒットだ――だがまだジェイドは立っている。
 具体的には残りhpは8。
 そして、その傷を癒しうるヘプタはロラガウスのブレスを受けて朦朧状態。何もできないのである。
 PCならぬプレイヤーが戦慄する瞬間だ。

 セイヴが奔る。3個目のオーブを叩き割る。踵を返して竜に突撃、だがこれは当たらない。
 エリオンがさらに4個目を破壊し、ついでありえない速さで部屋を横切り、具体的にはアクション・ポイントを使用して5個目のオーブをも破壊する。

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 目に見えてロラガウスの動きが鈍る。
 ヴァリンドラは焦ったように幻の爪を振り回す。ヘプタと、そうしてミシュナの肉がざっくりと抉られる。強い。数で勝るはずの一行だが、相手の一撃一撃が重すぎる。もはやこれまでか。

 その瞬間。

エイロヌイ:「妖精郷の光に灼かれるがいい!!」

 エイロヌイの声が高々と上がった。樫の木の乙女の全身から迸った光が竜の瞳を焼き焦がし、その力は死んだ心臓部にまで達する。
 眼を眩ませ、隙を炙り出す“レイディアント・デリリウム”の技。それがクリティカルしたのだ。脆弱性を含めて48点のダメージである。

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 そしてエイロヌイは呼吸半分の間にシルヴァナスの祝福をジェイドに与え――具体的にはレイ・オン・ハンズの力で回復させ――さらに渾身の力を振り絞って、具体的にはアクション・ポイントを使用して再び光を叩き付ける。
 光に二度連続で視神経を焼灼された竜は、もはやその振り下ろす爪や牙からも正確さは失われてゆく。具体的には幻惑状態になり、ACおよび攻撃ロールが2ずつ下がっている。

ジェイド:「では、竜め、俺が貴様の相手だ」

 ジェイドの眼光が竜を射すくめる。そうしておもむろにジェイドは剣を叩き付ける。
 出目はわずか2。
 しかしオーブがすべて破壊され、さらにレイディアント・デリリウムの効果でさらに防御値が下がっている。剣はがらあきの守りをあっさりと破り、竜の背を深々と断ち割る。

 ミシュナが呪文を唱える。竜の動きが鈍る。眠りの呪文が確かに竜を包み込んでいる。魔法にとらわれたことに気付いたか、竜は眼光鋭く敵をねめつける。威嚇の魔力は卑小な存在を圧倒し、心を失わせる。
 しかしそれが絡め取ったのはセイヴのみ。
 焦ったように竜はジェイドに噛みつく。が、そこにいたのはジェイドではなく身を呈したエイロヌイ。暴れたことが効を奏したか、身体を縛りかけていた眠りの魔力を振り払い、竜は今度こそ誰かを喰い殺そうと首をめぐらす。

 その瞬間。
 ようやっと妖精郷の光に灼かれた視界を取り戻しかけていた竜の目の前で、何かの力が弾けた。
 敵の数が減ったことに竜は気づく。そういえばさっきの魔術師の姿がない。それからあの珍妙なクレリックの姿もなくなっている。ミシュナはインヴィジビリティの呪文で、そしてヘプタは先ほど唱えたフェイ・ビガイリングの魔法の効果で竜からは見えなくなっているのだ。
 だというのにクレリックの声は続いている。竜は知らぬことだが、ヘプタは“レヴィ・オヴ・ジャッジメント”の祈りを唱えたのだ。この竜は神敵である。この竜を斬り損ねたものの腕に神は恵みを垂れ、剣を撃ちおろす前の時間に戻してくれる。具体的には竜に対する攻撃ロールが失敗した際に振り直しが可能になる。

ジェイド:「エリオン!!」

 ジェイドが深々とした王の声で呼ぶ。

ジェイド:「戻ってこい、定めを果たすために!」

 エリオンは走り出す。ヴァリンドラの衛兵の前を抜けるときに一太刀浴びせられるが、構わず部屋を横切り、そして、飛ぶ。魔法の力が足を支えてくれる。

ヴァリンドラ:「……生意気な!!」

 一瞬あっけにとられたヴァリンドラだったが、敵どもがみなロラガウスめがけて殺到している事実の“当然の帰結”に思い至り、慌ててエリオンの後を追った。大丈夫、彼女が落ちることはない――飛行の呪文を彼女は手に入れていたのだ。

ヴァリンドラ:「妾の最高傑作が、貴様たちになど……!!」

エイロヌイが、ヘプタが竜を斬る。駆け寄ったセイヴがジェイドと挟撃の位置に来た瞬間、竜の本能が反応する。骨の尾が凄まじい勢いでうねり、セイヴを跳ね飛ばしたのだ。

 だが、そこまでだった。殴り飛ばされたかに見えたセイヴはその場から竜に斬りかかった。右手の長剣が、左手の短剣が次々に竜の肉体を抉っていく。そして――

エリオン:「かつてお前が一度死んだ時、その肉体から大地にこぼれた命の精髄から7匹の大蛇が生まれたという――。

 魔剣士が剣を手に朗々と結末を迎えつつある物語を語る。

エリオン:「その中で太陽の蛇と月の蛇を寄り合わせてつくられたのがこのフェノルの魔剣。これでお前を斬ったなら、光の正のエネルギーとお前のアンデッドとしての負のエネルギーがぶつかって対消滅し、すべては無に帰ると言われている――さあ、聞け、我が魔剣の鎮魂歌を――!!」

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 エリオンが叫んだのか、それとも風を斬り裂いて音楽と成す剣の響きが人声と聞こえたのか――。
 エリオンの剣は過たず骨の竜の最後の継ぎ目を叩き斬った。ロラガウスが崩れ始める。と同時にエリオンの手の中の剣も光を失い、崩れてゆく。

 ロラガウスが光と化して消え去るのを、ヴァリンドラは歯を噛み割らんばかりに喰いしばって見つめていたが、振り返りざまジェイドを憎しみに燃える目でにらみつけた。その目に炎がともる。
 ジェイドは己の中の死霊の力が死霊術師の力に反応するのを感じた。このままでは望まぬまま操られてしまう。これが――今まで闇の力を都合よく使っていたことの報いなのか――!!

 セーヴに成功すれば支配から逃れられる。だが、それを決定するダイスを振るのは代表PL柳田ではない。ジェイドの真のプレイヤーたる視聴者なのだ!!

 運命のダイスが振られる――

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 ジェイドはヴァリンドラの魔力を振り払う。
 となればヴァリンドラにこれ以上できることはない。憎しみに燃える目でジェイドを睨みつつ――ヴァリンドラの姿はその場から消えた。
 勝ったのだった。

 サーイの勢力はひとまず追い払った。このままでは済まぬかもしれない。とはいえ、森に巣食っていた悪の力は消したのだ。これから森の闇竜を狙ってやってくる勢力はなくなる。
 ネヴァーウィンター森に立ち込めていた死霊の力も薄れてゆく。

ヘプタ:「見てください、夜明けっすよ」

 ヘプタの指差すほう、森の木々の間から、確かに澄み切った曙光がさしているのが見える。

セイヴ:「お前が守った光だ」

 セイヴが笑い、ジェイドの背中をどやしつけた。

ジェイド:「俺は……間違っていたのだな。ここに来るときは、人間らしい感情をすべて捨てようと、恐れるものなどあってはならぬと、そうしなければかの竜には勝てぬと、そう思っていた。だが――俺は恐れを感じる心を持ち合わせていたがために、打ち勝てた。
 恐れることは悪いことではないのかもしれぬな。守るべきものを失うことを恐れ、道を過つことを恐れることこそが――生者と死者のはざまにいる俺を、人間たらしめているのだろうな」
セイヴ:「そんなこと――俺がとっくに証明してるじゃないか」
ジェイド:「死の神ケレンヴォーは、そのことを教えるためにお前をこの地に呼び寄せたんだろうな」
セイヴ:「そうかもしれんな。俺は目的であるキング・トイを倒した。だが、まだ俺の心臓は動いている……」

 顔を見合わせ、二人の半死者は笑う。運命は過酷だが、この心あるならば生者の中でもやっていけるだろう。

クーリエ:「さ、帰りましょう、我らの国へ」
ジェイド:「我らの……エヴァーナイトに帰るんだぞ、お前たちは」

 少し苦笑い交じりにジェイドが念を押す。ああ、王としての次の仕事は、生者と死者の世界の狭間にしっかりとした障壁を建てることになるのだろうな。

 こうして英雄たちはネヴァーウィンターへと引き上げていく。そのしんがりを歩きながら、シルヴァナスの聖騎士にして樫の木の乙女エイロヌイは、ポケットから樫の木のどんぐりを数個取り出し、死霊の穢れから甦りつつある大地に撒き、呟いた。

――芽吹きなさい。甦りの兆しとして。



ジェイドの決断

第1回
問い:エラドリンたちはニュー・シャランダーに留まるべきか、引き払うべきか。
答え:俺が秘宝を取り戻してくる。だからしばらくこの地に留まっていてほしい。

第2回:
選択肢なし

第3回:
問い:ネヴァーウィンター全滅の原因を問うネヴァレンバー卿になんと答える?
答え:俺のせいだ。俺にはこの惨劇を止める機会があったが止めきれなかった。

第4回:
選択肢なし

第5回:
問い:傭兵団ブレガン・ドゥエイアゼを率いるドラウ、ジャーラックスルを案内人として雇うか?
答え:不安は残るが先には進まねばならぬ。それに放っておいて敵対勢力と組まれてはもっとまずいことになる。雇い入れる。

第6回:
問い:ネヴァーウィンター九勇士の試練を受ける権利をタンジェリンに譲るか?
答え:俺が責任を取る。ここは俺に任せろ。

第7回その1:
問い:ネヴァーウィンターをどうするつもりだと問う王冠に対し、何と答える?
答え:何十年、何百年かけても自分がこのネヴァーウィンターの復興を成し遂げる。

第7回その2:
問い:タンジェリンの剣がジェイドの心臓に迫る。その時……?
答え:逃げはしない。そのままタンジェリンの剣に貫かれる。

第8回:
問い:タンジェリンに真の元凶らしきブラックドラゴンの存在を告げるか?
答え:告げない。何も告げずに竜を倒しに森に往く。

第9回:
問い:ネヴァー城の地下宝物庫でみつけたかつてのイリヤンブルーエンの秘宝、“リストアラー・オヴ・ジ・アース”をどうする?
答え:タンジェリンに預け、シャランダーにいったん返却した上で使用の許可を得るべく交渉する。

第10回その1:
問い:ヴリロカと化して感情を失いつつあるはずのジェイド。その目の前に触手持つモンスターが。ジェイドはどう感じた?
答え:この恐怖は……まだ人間である証なのか……

第10回その2:
問い:ヴァリンドラの支配に絡め取られようとするジェイド。これまで方便とはいえ闇の力を使ってきた代償に、ジェイドの精神は死霊術との親和性を得てしまっている。この支配を振り払えるか?
結果:セーヴ成功。ひょっとしたら触手モンスターに感じた恐怖がジェイドを人間としてのありように繋ぎとめたのやもしれない。
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「言い終わると同時にその掌からまばゆい鮮やかな光が迸る。~」の文章後の写真が違うものになっているみたいです

No.1 125ヶ月前
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