兄弟メディア「ギズモード・ジャパン」からの転載。
アンプ気になるけど......なかなか手が出せない?
メディアジーン運営のクラウドファンディング「machi-ya」にて、現在260%以上の支援を受けている、世界最小クラスのハイレゾ対応ポータブルアンプ「SPECTRA」。
アンプを持っているだけで音楽通な雰囲気を出せそうな気はするけども、実際は選び方も楽しみ方もわからない......という方のために、ディスクユニオンが運営するオーディオ専門店「オーディオユニオン 新宿店」の原さんがプロの目線で、アンプやハイレゾの正しい知識・楽しみ方を伝授してくれました。
さらに、プロジェクトの終了日が迫る「SPECTRA」についても、お試しいただきお話をうかがいます。
そもそも「アンプ」の役割や楽しみ方がわかりません......。
──まず率直に、アンプの役割を教えてください。
アンプというのはアンプリファイアという言葉からきていて「増幅」という意味で、つまり「音を増幅する機械」のことなのです。
単純に言えばそれだけになってしまいますが、CDとか音楽データの音の信号というのはとても小さいので、このまま出してもまともに聞こえない。その信号を増幅してあげてスピーカーやイヤホンに送ってあげるのがアンプの役割です。
そう意味では当然、スマホや普段音楽を聴くもののどっかしらにアンプは使われています。
──では、外部にアンプを挟むことで、いつも聴いている音楽にはどんな変化が起きるのでしょうか?
スマホなどの一番の目的は音楽を楽しむことではないため、音に関して考慮しているものはなかなかないですよね。
ちゃんとしたアンプを搭載してしまうと、電力も食いますし機器の大きさ自体も必要となるので、スマホなどでは音質は犠牲になっているというのが一般的と言えます。
そこに、音を考慮したアンプをはさむことで、音楽データをデジタルから人が聞けるアナログに変換する精度が高くなるわけです。
どれだけ忠実に音を再現するかという部分であったり、実際聞き分けられるものではないですが、デジタルデータが変換されイヤホンに届くまでに発生するノイズなどのいわゆる雑音、つまり音が濁る感じになってしまうのですが、こういうところの対策が組まれているので、音楽を純粋に楽しむことができます。
──「ポータブルアンプ」のよさはどんなところですか?
ポータブルアンプのように、電力を抑えて音質も確保できるというのは、ここ最近の技術と言えます。
小さくてもそれなりに音が鳴るものも出てきていますし、今の音楽スタイルにあうモバイル性と音質の良さを兼ね備えたのがメリットですね。
──「アンプ」初心者がついやりがちな間違いがあれば教えてください。
スマホとかと聞く場合で注意が必要なのは、ハイレゾ環境で再生するときですかね。
ハイレゾを聴くためには推奨するソフトなどを使わないと、ハイレゾの品質でイヤホンに届かない時があります。いわゆるCD品質という、品質を落とした状態で再生されてしまうんです。
また、ハイレゾ対応のUSBダック(アンプ)自体もピンからキリまでで、最近ではハイレゾの中でも品質の上下があって、例えば一番上の品質のものに対応していない場合は、再生そのものができない場合も考えられます。
そのため、買う前に対応している範囲などを注意してみてあげるという点と、あとは、展示しているところで実際に試すことをお勧めします。
やっぱり好みの音って個人差がありますので、聴くジャンルによっても違いますし、さらにはジャンルでどう聞きたいかというのがありますからね。
アンプの先につくヘッドホンでも音が変わるので、いろいろな組み合わせをして自分で納得のいくものを選んでいくというのが大事です。
「ハイレゾ=音質がよくなる」は誤解!? ハイレゾについての正しい知識を教えてください。
──先程もアンプを使う際の注意で「ハイレゾ」という言葉が出てきましたが、そもそも「ハイレゾ」というのはCD音源を聞くのと比べると、音質がよくなるんでしょうか?
「ハイレゾだから音がいい」って思い込みがあるかもしれないんですが、ハイレゾというのはCDの品質よりも「音の情報量が多い」ということが言えます。
CDが主役だった時代もあって。その頃に作られた作品はCDでベストな状態の音の作り方をされているんで、それをハイレゾにしたらCDより音がよくなるかというと、必ずしもそういうわけではないんですよね。
例えばCDが流行る前の時代とかの、音源の元になる「マスター」とよばれているもの、いわゆる「原盤」ですが、それには情報量がたくさん詰め込まれているわけなので、それをハイレゾにするというのは音質的にも優位な面もあります。
そのため、すべてのものがハイレゾになるといいのかというのは当てはまらないとも言えますし、このようなことからも、ハイレゾのデータが音質の良し悪しを決めるのではないという認識をしていただけるといいのではないでしょうか。
──音の違いを体感しやすいジャンルなどはありますか?
たとえば、クラシックなどは、あれだけ楽器などの情報量も多いので、ハイレゾの方が恩恵は得られるかなという印象があります。生演奏などの音の微妙な強弱とか、そのあたりのきめ細かい情報があれば、ハイレゾにすることで再現されるという利点もあるのです。
ハイレゾがまだデータ化される前に、「SACD」という規格が1999年に出ていて今でも販売はしてたりするのですが、やはりその際もオーケストラの方に受け入れられていました。
反対に「SACD」に関していうと、ジャズの受けがあまりよくなかった印象です。理由としては、そのような規格になると「音が自然になる」「元の音に忠実になる」という形なんですが、その分「力強さ」が少し弱くなるので、ジャズのウッドベースなどのゴリゴリした押し出しのあるような音がある程度削がれてしまうというのがあったんですよね。
そのため、「SACD」にしろ「ハイレゾ」にしろ、ジャンルというか、そもそも曲によっての良し悪しは、あるかな感じます。
ただ、製作側はハイレゾでよいとして出しているので、そのあたりはリスナーとの体感の差となっちゃうのかもしれないですね。
その辺も踏まえてやはりクラシックとかがいいのかなとは思うのですが、音が少ない場合はそれだけ変化がわかりやすいというのもあるので、バンドサウンドとか最近でいうと打ち込み系とか。
他にも、今はアニメーションのハイレゾ楽曲もすごく増えているので、そういうところを聴くのも楽しめると思いますし、ハイレゾのものとCD品質のものを聴き比べてみるのもおもしろいと思いますね。
──ハイレゾ環境を楽しむために必要なものを教えてください。
まずは、音源と当然スマホとかの再生機器があって、そこから音にこだわるのであれば「SPECTRA」のようなUSBダックみたいなものを通してヘッドホンやイヤホンで聴くというのが、今の持ち運びする音楽スタイルには一番合っています。
よくイヤホンとかでハイレゾ対応という言い方をしているものがありますが、これもまた認識に誤解がある方もいらっしゃるのではないかと感じます。ハイレゾ対応のUSBダックにハイレゾ対応ではないイヤホンなどをつないだ場合に、まともにハイレゾ音源が聴けないか、というとそうではないのです。
イヤホンなどには、対応する周波数の領域がそれぞ違うのですが、ハイレゾ対応と書かれているイヤホンやヘッドホンというのは、音の周波数がハイレゾで保存されている周波数まで対応するという意味を示します。
そのため、ハイレゾ対応との記載がないイヤホンでは全く聴くことができないというわけではなく、あくまで周波数の限界を超えたところが聞こえないよというところだけなので、実際には人の耳には音として聞き取れない領域の話です。
ただ、楽曲が持つ空気感とか音として認識しないけど雰囲気とか、そのようなところがハイレゾ環境にすることで再現されますよ。
──ハイレゾ環境を整えるのにはまだまだ値段が張る印象も受けますが、最近のハイレゾ事情について教えてください?
音楽との関わり方としては、持ち歩きで音楽を聴くというのがiPodで流行ったことで、音を圧縮してCDよりさらに音質をさげるけどたくさん持運べるよってところからスタートしているので、そこから「さらに音質をあげる」というところに、今こうやって認識がされてきたという状況ではないでしょうか。
なので、ハイレゾというのはまだ言葉がだけが先行しているという印象で、ここからハイレゾという新しい技術がどう浸透していくかというのを我々も考えていかないとです。
ハイレゾを聴く環境はコンピューターが絡むことが多いため、そういったものに抵抗のない若い世代の人が、「音を聞く」ということに興味を持ってくれたらもっと広まる可能性がありますね。
──ちなみに、原さんはハイレゾをどんなオーディオで楽しんでいますか?
あまりジャンルにこだわりがないというのもあって、どんなジャンルでもそれなりになる。わりと低音が好きなので、低音が前面に出るような感じのを選んでいます。
クラウドファンディングで支援募集中の「SPECTRA」は、オーディオにこだわる第一歩によさそう。
──「SPECTRA」を実際手に取ってみた印象はいかがですか?
ポータブルアンプでもそれなりに大きさがあるのが普通で、どうしても大きさとクオリティが比例してしまうという印象があったので、正直この小ささでよく音が鳴るのかなという印象がありました。
あと、一点気になったことがあって。すべてのスマホに共通していることではないのですが、私が使っている「Xperia Z3 conpact」の場合、USBが上部の左横なので、堅さのあるケーブが逆に気になってしまってポケットに入れたりなどの持ち運びが少ししづらいなと感じました。
ただ、このあたりもすべての機種にとってベストな位置に来ることは難しいですし、耐久性などを考慮していることもあるので、なんかしらの方法で今後さらによくなったらいいなと期待したいところです。
──実際に体験してみて、音の質感などはいかがでしょうか?
正直に言うと音の透明感はすごくでたなと感じました。どこで音がなっているかという位置感という部分がすごくクリアになった印象です。
最近の音楽の傾向なのかもしれませんが、きめの細かい音・キラキラした音によく合うかなというのがあって、ジャンルに関係なく音のきめが細かい・ノイズがないという感じです。
ただ、私の使っているヘッドホンとの組み合わせの問題だと思いますが、高音が少々きつく感じはしました。ただ、このヘッドホン自体が割とそのような音の出方をするので、イヤホン・ヘッドホンが変われば当然音の出方も変わってきます。
こういったもののメリットは、ヘッドホンの性能をさらによくするというところにありますので、「SPECTRA」を挟むことでヘッドホンの得意な音をさらに底上げをする役割がなされます。そういった意味も含め、エントリークラスの価格帯のものとしては、よくできているなという印象でした。
他社のポータブルアンプだと3万を超えるものも多いので、値段も含め、最初にこのモデルから入るというのもいいと思います。
──原さんが「SPECTRA」で試してよかった曲を教えてください。
いくつかハイレゾ環境限定で視聴して、生演奏系がおもしろかったなと感じました。たとえば、Jake Shimabukuroさんの「アランフェス協奏曲」という曲があるのですが、「SPECTRA」を通すことで、音全体が透明感を持つので、弦楽器の演奏などが際立っていましたね。
ウクレレの高い音が気になる部分もありましたが、そういった部分についても、アンプ・ヘッドホンなどトータルのバランスを考えることが、より楽しめる要素になるのではないでしょうか。
──「SPECTRA」は、どんな方にオススメできますか?
音響製品はメーカーの個性が出るので、高額なオーディオ機器についていうと、その中でも高い方がいいものというわけではなく、聞き手にどれだけその個性がマッチするかというところが大きいのです。
逆に「SPECTRA」のような価格帯のものというのは、そういった部分もないですし、初めて「SPECTRA」でオーディオを試してみて、「音がよくなったね・透明感がでたね」と体感できる、とっかかりになるのではないでしょうか。
「音をちゃんと聞きたい」と考えている方のスタートに適しているなという印象なので、初めてのオーディオとしてお勧めしやすいですね。
音響にまだそれほど興味がない方が、自分の好きな音楽を「SPECTRA」を通して聴いてみて、音が変わるという体験をしていただいて、音響に興味をもつきっかけになったらいいと思います。
さらにそこから、ヘッドホンなどを変えてもっと自分の好みの音を見つけたり、もっといいアンプを使いたいと考えたり、オーディオのステップアップにつながるものだと感じましたね。
どうせなら音を聞くことの楽しみを共有したい。アンプをプレゼントする男ってどうですか?
──アンプはどうしても男性の趣味というイメージがあるような気がしますが、オーディオ関係を購入される方は男性が圧倒的に多いですか?
ほとんどが男性の方ですね。オーディオに関する評論家の方も女性の方はほとんどいらっしゃらないと思います。
音を聞くという考え方に男女の差はないとは感じますが、オーディオのプロダクト自体が女性目線で、例えばカラー展開が作られているというのはあまりないですよね。黒とかゴールドとか見栄えの部分で選ばれたカラーであったり、木目調であったり。
──女性へのプレゼントにアンプってどう思いますか?
オーディオって特別オシャレとかはないので、相手の好きな音楽から入って「音を聞く・好きな音楽を楽しむ」というところで、アンプなどを一緒にプレゼントするのはいいと思います。
あとは、アンプを正しく使うためには、ドライバーであったりアプリが必要となるので、コンピューター慣れをしていない人にとっては敷居が高いところなのかな。ただ、そういった部分については、コミュニケーションを取りながら好きな音楽をオーディオを通して一緒に聴くという楽しみ方はできそうですね。
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自分の気に入ると音を追い求めるなんてカッコイイじゃないですか! 毎日の音楽ライフをハイな気持ちで過ごすために「ハイレゾ対応ポータブルアンプ」という選択肢はなかなかよさそう。
原さんにもお試したいただいた「SPECTRA」は、PCやスマホにつないで気軽に楽しめ、クラウドファンディング特別価格で1万6800円~とお手頃価格でゲットできますので、「はじめてのアンプ」にもオススメ。
お得な2本セットのペアパックなど、大切な人と「音を楽しむ」時間をシェアするのもよさそうです。
プロジェクトは、12月18日(日)00時終了となりますので、気になる方はお早めにチェックしてみてください!
source:machi-ya, オーディオユニオン新宿店, ディスクユニオン, Wikipedia
(執筆・撮影:machi-ya事務局)