ビールは、麦やホップといった複数の材料からできています。
ビールのCMでも「麦の風味が香ばしい」「ホップの苦味がたまらない」というように言われているので、特に興味のない方でも何となく聞き覚えがあるのではないでしょうか。
今回はその中のひとつ、「麦芽」について見ていきましょう。
「麦芽」=モルトは、麦を発芽させた後に乾燥させたものです。発芽することによって酵母が生み出され、ビールの豊かな味わいの元となります。
余談ですが、ウイスキーでもほぼ同じような行程で作られた麦芽を使用します。その後の製造工程でビールとウイスキーは全く違うお酒になりますが、人間でいえば遠い親戚のようなものなのですね。
ビールができたのは偶然!?
元々麦芽は、大昔のメソポタミア(現在の中東地域)でビールではなくパンを作るための材料として考え出されたものでした。しかし、あるとき麦芽を使ったパンをしばらく放置したところ、固くなってしまったため、何とかして美味しく食べるために「パンを水につけてから食べる」という方法を考え出します。 そしてさらに、誰かが偶然パンを水につけたまま忘れてしまいました。
現代の日本であればそのまま生ゴミになるところですが、勇気ある人がそれをたまたま口にしてみたところ、何ともいえない芳醇な香りのする液体に変わっていました。
おそらく、その液体は仲間内で評判になったのでしょう。いつしかパンだけでなく、この液体のためにも麦芽を作るようになっていったのです。この液体がビールの始まりだといわれています。
何だか偶然にしてはデキ過ぎている気もしますが、チーズやヨーグルトなどの発酵食品が生まれたのも「材料を器に入れて放置していたら、いつの間にか酵母のおかげで美味しいものになっていました」という経緯だといわれていますので、こういったことは世界中どこにでもある風景だったのかもしれませんね。
いろいろな麦芽が作られる→さまざまなスタイルの大本ができる
そして、いつしか麦芽にもいろいろな工夫がされるようになりました。麦の種類を変えてみたり、小麦を使ってみたり、乾燥させる際の温度や時間を変えるなどです。 そうした工夫をこらした麦芽ももちろんビールに使われ、各スタイルごとの特徴の一つとなっていきました。 麦芽の種類が直接ビールの味や色に対して大きく影響しているスタイルとしては、小麦の麦芽を使った「ヴァイツェン」や、ブラックチョコレートのような濃い色の麦芽を使う「スタウト」などがあります。
ヴァイツェンは主にドイツの南方で生産されているスタイルです。バナナとも評される特徴的な香りがしますが、苦味が弱めなので、「苦いからビールは嫌い!」という人にも飲みやすいスタイルの一つです。
スタウトは日本で「黒ビール」と呼ばれていることが多いスタイルです。香ばしさや焦げ臭さと甘さを感じる濃い味が特徴で、人によっては好みが分かれるかもしれません。
どんな銘柄があるかについては、また日を改めてご紹介しますね。
また、特に濃いこげ茶色の麦芽は「チョコレートモルト」と呼ばれ、味にもチョコレートのような苦味と甘みが出ます。バレンタインの時期に発売される「チョコレートスタウト」とされているものにもチョコレートモルトが使われていることが多いですね。
こんな風に、一口に「麦芽」といってもいろいろな作り方があり、ビールのスタイルにも多大な影響を与えています。
いろいろなスタイルや銘柄を飲みなれてきたら、「このビールはどんな材料でできているのかな?」という点に着目してみるのも楽しいですね。
次回は麦芽同様にビールのCMでもよく名前を聞く、あの材料について着目していきたいと思います。お楽しみに!