今回は2度目のSchubertセクションからだ。
43.Schubert(6/4)(26:27 〜)
キーは違うけれど、基本的には29.Schubert(12:07 〜)と音楽的にほぼ同じ状態からこのセクションは始まる。
けれど、やはりそこは『生きている作品』らしく、後半のクライマックスということで、ちゃんと29.との違いが存在している。
そしてさらにその違いが、30分という長さを感じさせない結果につながっている。まさに曲が生きている理由だ。
まず、ここのSchubertセクションでは、HIDEのギターメロディー、PATAの速いビートを刻むギター、オーケストラの3者がとても美しく絡むアレンジになっている。
つまり役割分担がはっきりしていて、しかも音的にとても良いバランスとなっているのだ。
最初の2小節(26:27 〜35)は、Amのキーから始まり、あっという間にEmへ転調する。
この2小節間は、右寄りに聴こえる艶のあるHIDEのツインギターをメインとして、それを支えるPATAのリズムギターが実にワイルドに音を刻む。
そして木管楽器を中心としたオーケストラが控えめに登場してくる。
次の2小節(26:35 〜42)はEmのキーから始まってやはりすぐにBmへ転調する。
ここではまずHIDEのギターに代わって、オーケストラのストリングがメインとなって力強くメロディーを奏で始め、後半になると再びHIDEのギターがメインになり、オーケストラは美しい和音を響かせる。PATAのリズムギターが更にスピード感のあるビートを刻み、メロディーの美しさを支える。
そして続く 44.Schubert(6/4)(26:43 〜)からは、29.Schubert(12:07 〜)にはなかった、新たな世界が展開していく。
そう、シューベルトの未完成第2楽章のメインとなっている部分をYOSHIKIなりにアレンジした、切なく美しい世界だ。
シューベルトの場合は当然、すべてがオーケストラの楽器によって成り立っているのだが、YOSHIKIはそのシューベルトの世界を発展させ、ギターとドラムスというオーケストラにはない、音的にもかなり異質な存在によって、新たな音楽を生み出している。
もし良かったら、ぜひシューベルトの未完成と、この「ART OF LIFE」を聴き比べてみて欲しい。「ART OF LIFE」という作品の凄さがわかりやすく見えてくるはずだ。
音楽的には、HIDEのギターがメインメロディーを、そしてオーケストラがカウンターメロディーを奏でていく。そのメロディーが美しく交わりながら展開していくのを、YOSHIKIのドラムス、HEATHのベース、PATAのリズムギターが支えている、というわけなのだが・・・。
僕の考えでは、「ART OF LIFE」という作品にとってどういう意味合いなのか、ということではなく、全く別の観点からとらえた場合、ここのセクションの存在が、『YOSHIKIの生み出す音楽の凄さ』を最も分かりやすく表していることになるのだ。
それを説明してみたい。