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  今日はPATAの誕生日なので、PATAについて思うことをつらつらと書いてみたい。
 
 5月にhideのイベントでPATAと会ったのだが、50代同士にも関わらず、つい昔の癖でスキンシップをしてしまい、その肌がやけにすべすべしていて柔らかだったのが印象的だった。
 
 スキンシップといっても昔のように叩くわけではない、自分でも理由はわからないが、思わずなでなでしていたのだ。
 
 でも何か、そんな風になってしまうのも、僕の中では自分とPATAの関係らしい、という気がする。
 
 思えば、5人の中で一番言葉を交わす量が少なかったから、言葉よりもスキンシップの方が印象が強いのだ。
 
 
 
 「ART OF LIFE」のレコーディングを思い出す。
 
 スタン片山という、米国の著名バンドも認める凄腕エンジニアだが、人間は風変わりなヘンテコオヤジが、PATAと妙に息が合っていて、だからPATAのレコーディングはスタンだ。
 
 「BLUE BLOOD」や「Jealousy」のレコーディングを経て、もはや達人の領域に達しているPATAのギターレコーディングに、PATA曰く『プロのいちゃもんつけ屋』である津田直士が果たして必要なのか、コントロールルームにいる誰もが思っているわけで、僕はしょうがないから一応ギターの師匠とも言えるPATAに、「PATAちゃんだから楽勝でしょ〜ぱぱっ、とやっちゃってよ」などど、他のメンバーには決して口にすることのない「おべっか」を献上するわけだ。
 
 そうすると、他のメンバーと違ってそんな風に褒められることに対して、素朴に嬉しさを隠しきれない性格のPATAは、「ほんじゃあ、一発やってみますか」などとどこから湧き出てくるのかわからない謎の風格を醸し出しながら、おもむろにギターを抱えて弾き始めるわけだ。
 
 しかしながら、王者の風格と共にレコーディングが進んでいくと、残念なことに津田直士の出番が来るのだ。
 
 「あのさ、PATAさあ、転調する前の2小節あたり、少しハシッテない?」
 
 僕がそう告げた瞬間、PATAとスタン片山が同じような表情をする。
 
 そう、漫画に出てくる、「?」の吹き出しを頭の上につけた、「おや?」という表情だ。
 
 おそらく彼らには、その程度のリズムの揺れはロックの範囲内なのだろう。

 でも僕の耳は彼らよりもう少しプリサイスなので、しょうがない。
 
 僕に抵抗してもしょうがないので、すかさず王者の風格を取り戻したPATAと、凄腕エンジニアの顔に戻ったスタン片山は「んじゃ、やりますか」と、黙々とその部分を録り直す。
 
 PATAは、長年のやり取りで、『僕の耳』がそのまま『YOSHIKIの耳』であることを知っているからだ。
 
 とはいえ、PATAもスタン片山も素晴らしい腕を持っていることは間違いないので、結局僕はその後、呟くことになるのだ。
 
 「しかしあれだね、PATAのギターとスタンのレコーディングはもはや、芸術だねえ」
 
 そう、見事に「おべっか」である。

 僕だって嫌な奴より、いい人でいたいのだ。
 
 で、実のところ、そんな感じのレコーディングが僕にとってどんな時間だったかといえば、実は至福の時だったりしたのだ。
 
 なぜなら、実はおべっかよりも別のところで、僕は本当にPATAのギターとスタン片山の腕を尊敬していたからだ。
 
 その一番尊敬しているところを隠し、あえて2人から歓迎されない役割を喜んで自分が果たしながら、結果、2人の芸術的な「味」によって、YOSHIKIの生み出した芸術にエネルギーと勢い、そして深みが増していくことが、僕にとってはこの上なく幸せなことだったからだ。
 
 だから、無事その日のレコーディングが終わっても、僕はすぐにはコントロールルームを去ることはなく、コーヒーを飲みつつ、PATAとスタン片山との味わい深いトークを楽しんだ。
 
 それは主にスタン片山が得意な物理学の話や米国の音楽事情の話で、PATAは相変わらず無口だったけれど。
 
 今になってみると、PATAにとって僕が『プロのいちゃもんつけ屋』という存在であったことと、常にPATAと僕の間に流れる空気が穏やかで豊かさに満ちていたところに、Xというバンドのメンバー間の絆の強さが表れていたのだな、と思う。
 
 何しろ、レコーディング中の僕の耳は、そのままYOSHIKIの耳であり、それをYOSHIKIが強く望んでいたからだ。
 
 それを理解して淡々と進むレコーディングには、目に見えない深い信頼があった。
 
 PATAが倒れた時、あっという間にウェンブリー・アリーナ公演の延期が決まったことも、この深い信頼の延長なのだ、と思う。
 
 それにしても・・・。
 
 静かで豊かな時間がゆったりと流れ、美味しいコーヒーをじっくりと味わいながら淡々と進む、PATAのレコーディングと、別の場所で嵐のような時間が流れ続けるYOSHIKIという対極。
 
 「すべての始まり」に書いたように、まさにPATAはXというバンドの中心に位置しているのだなあ、と感じる。台風の目のように。
 
 最近の台風は多くの被害をもたらし、忌まわしい存在だけれど、Xという台風は「愛」をもたらす、歓迎すべき存在だ。
 
 多くの人がXのライブを待ちわびている。
 
 僕もまた、早くXのステージでPATAを観たい、と切実に思うのだ。
 
 
 
 
 おっと。
 
 そうだ、今日はPATAの誕生日だった。

 つい忘れて、いつものブロマガのように美しく終わるところだった、いけない、いけない。
 
 では改めて、PATAへ誕生日おめでとうのメッセージを贈ることにしよう。
 
 PATAちゃんが俺のことを『プロのいちゃもんつけ屋』と言っていたので、いちゃもんをつけることにするよ。
 
 PATA、すべすべで柔らかな肌の奥にある骨が、しっかりと頑丈なのか心配してるんだよ、俺は。何しろPATAは痩せてるだろ?
 
 とにかく身体だけは気をつけてくれよ。
 
 せっかくおじいさんみたいな風格があるんだから、長生きしてもらわないと困るんだよ。
 
 お願いだから、いつまでもあの早弾きと味わい深いギターで、世界中のファンの心を熱くしてくれよ。
 
 俺の本、読んでくれただろ?
 
 PATAはね、Xの中心なんだから。
 
 よろしく頼むよ。
 
 じゃあ、んなわけで、PATAちゃん、お誕生日おめでとう。
 
 この前まゆちゃんのイベントでは1日違いで会えなかったけど、また会おうね。
 
 今度会ったら似顔絵書いてあげるからね。
 
 長生きしてね。
 
 身体気をつけてね。

 またかっこいいギター聴かせてね。
 
 おめでと・・・。

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(株)津田直士事務所スタッフからお知らせ

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2017年夏、津田直士が寄稿した記事: イミダス時事オピニオン「X JAPANが世界で評価される理由」

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【津田直士プロフィール】音楽プロデューサー/作曲家 
Sony Music在籍時に「BLUE BLOOD」「Jealousy」「ART OF LIFE」
のCo ProducerとしてX JAPAN(当時はX)をプロデュース 
インディーズ時代から東京ドーム公演までをメンバーと共に駆け抜けた記憶
の一部は、映画『WE ARE X』の中、インタビューという形で語られている。
また、自署「すべての始まり」にはその記憶のすべてが描かれている。


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