起きてから寝るまでの間、あらゆる情報が世界中から限りなく飛び込んでくる状況、そして自分から生まれた情報も世界中にいくらでも発信できるという状況、つまり過情報という現実だ。
まるで情報の洪水という猛威を前にして、自分という存在を見失ってしまっているような状態だ。
この感覚はとても大事だ。このことについては、後でまた触れたい。
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僕が最初にメンバーの動きに参加し始めた当時、Xはインディーズアルバムを引っさげて全国ライブハウスツアーをしていていた状況で、とにかく大事だったのは多くのファンを生み出すことだった。
そのため「作品やパフォーマンスの内容でファンを夢中にさせること」「まだXを知らない人たちに、その存在を伝えること」を柱に、課題はたくさんあった。
そういった課題を前提に、ライブの直後やリハーサルの前後など、機会がある度にメンバーは綿密な打ち合わせをしていた。
その時によく飛び交った言葉が、答えを出す前に大前提として全員で確認する、
「Xは◯◯(だ)から」という、バンドのポジションと方向性を明確にするフレーズだった。
◯◯の内容は、その時の検討課題によって様々だが、当時のXというバンドのポジションや方向性を明確に表していたキャッチコピー、「PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」をはじめ、Xの存在意義を表す「過激」「常識に囚われない」「刺激が大事」「ジャンルの壁を壊す」「極端」「絶対妥協しない」「誤解を恐れない」「ファンの度肝を抜く」「命を懸けてる」といった言葉だった。
バンドとしてのブランディングがしっかりなされていたわけだ。
そして明確な目標も、長期的なものと短期的なものに整理され、しっかりとあった。
短期的なものについては、スケジュールもきちんと考えられていた。
ただし、そのスケジュールは常に、実現するのがギリギリ難しいレベルに設定されていた。
理由はおそらく、自分たちの限界寸前の態勢によって最短距離を駆け抜けながら、目標を最速で達成するためだったのだろう。
あるいは、その限界寸前に挑むこと自体が、Xというバンドの重要な存在意義だったのかも知れない。
実際にはこのように、目標達成に向けてベストを尽くすため、本能とオリジナリティを炸裂させつつ、Xらしく打ち合わせは行われていたのだが、その内容は見事に
「明確な目標に基づく課題の確認と戦略の構築、それを実行するための要件の決定」であった。
何だろうか?
打ち合わせでは、情報がとても大事だった。
例えば「ライブでファンをたくさん生む」というテーマの打ち合わせであれば、
毎回のライブで、ファンやオーディエンスがそれぞれパフォーマンスをどう受け止めたのか、どんな反応だったのか。
他のバンドはどのようなパフォーマンスをして、どのようにファンを生み出しているのか。
ファンやオーディエンスは、Xのライブに何を期待しているのか。
その結果はどうなのか。
新たなファンを掘り起こすためには、どんな施策が有効なのか。
何をすれば口コミで噂が広まるのか。
今、街では何が起きていて、次に何がブームとなりそうなのか・・・。
など、欲しい情報、必要な情報はいくらでもあった。
Xの打ち合わせでは、それらの情報をとにかくきちんと集め、注意深く確認していた。
そして、色々な情報を把握し、それを踏まえた上で、Xのメンバーはオリジナリティー溢れる結論を生み出していった。
また、例えどんな情報があったとしても、作品を生む上でのこだわりや、Xらしさについては、情報に左右されることは決してなく、妥協も一切しなかった。
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以上が、僕が見ていた(参加していた)『Xというバンドの打ち合わせ』の話だ。
では、この話がなぜ「情報が溢れ返っている今という時代にわれわれ、とりわけ未来ある若者がどんな姿勢でどう生きていくべきなのか、その大切な答えが見えてくる」
のだろうか?
まず、Xというバンドにとって打ち合わせが大事だったのは、
『高い目標や辿り着きたい未来のビジョンが明確にありながらも、それがまだ達成できていないため』
だった。
そしてそれを実現するベストな戦略を生み出し課題をクリアするために、
『必要な情報を集め、そこから自分たちが手がけるべき新しい要件を自ら見つけ』ていった。
どうだろうか。
僕が伝えたい結論を先に書いてしまおう。
『自分の目標やビジョンを実現するために、必要な情報を探し選んで使い倒そう』
シンプルな話だ。あたりまえで、何てことはない。
でも、気づいただろうか。
僕が最近若者と話していて、気になっていること。
『24時間、常に世界中から飛び込んでくる凄まじい量の情報』=『過情報』
のことだ。
最初に書いた通り、本当は自分と自分の意識以外の全てが情報なのだが、「過情報」のいま、多くの人はみな、スマートフォンやPCの画面から飛び込んでくる情報がそのまま情報だと錯覚している。
さらに、その「過情報」が猛威を振るっているため、多くの若者は、何よりも大切な
「自分という存在」「自分の心」「自分の考え」「自分の視線」「自分の価値観」といった
『自分自身』が、その「過情報」に振り回されていることに、疑問を持たない。
もう一度『Xの打ち合わせ』を考えて欲しい。
Xというバンドにとって、情報は確かにとても重要だが、あくまでバンドとしての結論を生み出すための材料だったのだ。
主体はあくまで、Xというバンド、つまり自分たち。
そしてその目標達成、ビジョン実現のために、情報を活用しただけだ。
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Xは現在、X JAPANとなって世界進出という若い頃の夢を実現する段階に入っている。
僕が共に打ち合わせをしながら「未来のX」というビジョンを描いていた1988年当時、メンバーは22〜3才という『若者』だった。
そして今も僕は、現代の『若者』とその若者の未来について話し合っている。
そんな、これからの未来を創っていく若者に、僕からの大切な願いを伝えたいと思う。
情報なんてものに振り回されることなく、情報を使い倒して欲しい。
『自分』を、そして『自分の夢』や『自分のビジョン』を一番上において、
その実現のために、今やいくらでも手に入れることのできる情報を必要なだけ集めて、
使い倒して欲しい。
そして、情報がいくらでも手に入る時代ならではの、新しい夢の実現のしかたを、見つけて欲しい。
1988年には不可能だった新しい夢の実現のしかたを、たくさんの人に見せてあげて欲しい。
そうすれば、また新しい時代を創ることができるから。
世界は待っている。
新しい時代を。
新しい才能を。
そして、そのチャンスは目の前にある。
溢れる情報を、ただ、自分の下に置けば良いのだから。
もう一度繰り返そう。
『自分』を、そして『自分の夢』や『自分のビジョン』を一番上において、
その実現のために、いくらでも手に入れることのできる情報を必要なだけ集めて、
使い倒して欲しい。
そして、まったく新しい時代を切り開いて欲しい。
今ならそれができるのだから・・・。
コメント
コメントを書く先日、この記事を発見し、読ませていただきました^^
実は私、何年も前に津田さん(だと後でわかったことだったんですが..)に「君は世の中をどう思う?」って聞かれたことがあるんです。
僕は「情報が溢れていて何が正しいのかわからない」みたいなことを言ったんです。
そしたら津田さんは「それって混沌ってこと?」ってそんな会話でした^^
そのときは短い会話で終わってしまいましたが、この記事がその話の続きのようで嬉しく感じました。
ありがとうございます^^
>>1
そうなんですか。驚きました。
申し訳ないことに、その会話やシチュエーションをちゃんと思い出せないのですが、この記事がある意味、その会話の続きになったのであれば、良かったです。
もちろん、リアルタイムの会話で深い内容に至っていれば、なお良かったのですが。
いずれにしても、コメントありがとう。
今後もブロマガ、ぜひ楽しんで下さい。