『Whitney Houston』(ホイットニー・ヒューストン)
アメリカ合衆国の歌手、女優、元ファッションモデル。
1992年映画『ボディガード』にて主演を務め、映画のサウンドトラックはグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞、シングル「I Will Always Love You」は自身最大のヒットとなる。累計セールスがアルバムは1億4,000万枚以上、シングルは5,000万枚以上、グラミー賞も6度受賞。
<TSUYOSHI評>
自分がシンガーとしてそこそこ歌ってきてみて思うのだが、”歌”というものは「上手いか下手か」よりも「良いか悪いか」が最後には大事になってくる。「下手」な歌でも「良い」歌であるならば、それがベストなのである。しかしながら正直なところ、どれだけ「良い」歌であろうが、「下手」な歌よりも「上手い」歌の方が聴いてる側としては100万倍気分がいい。ちなみに世の中には「上手い」っぽい歌い手も多いので注意が必要。というか、そんなのは聴き手には既にバレてると思うが。
何をもって歌が上手いとされるのか。「上手い」といっても様々種類がある。人によってその基準の差はあるだろうが、現在の音楽界において誰もがその歌の上手さを認めているであろうホイットニー・ヒューストン。万人が認める歌の上手さ、本当に羨ましい。”歌”というものは、歌が上手くなければ表現できない事が往々にしてある。個人的にはデビュー・アルバムからのシングルカット『Saving All My Love For You』をリアルタイムで聴いた時の衝撃は忘れられない。「上手い」っぽい人には決して歌い切ることはできない歌の上手さで表現するホイットニーに私は心を奪われた。今、改めて聴き返せば、そりゃまだ若かりしホイットニー、粗も目立つ。しかし何をどう歌いたいかが彼女自身には見えているからこその”粗”。程なくして粗も減り、確実に歌い切れるようになっていく。多分まだその過程でのこちらの動画(https://youtu.be/XMqqC8hCGVM)、1987年グラミー賞での『Greatest Love Of All』のLiveパフォーマンス。まだまだ若々しいが、その歌っている姿を含めとても素晴らしいパフォーマンスである。これも当時ビデオにとって何度も観た記憶がある。音楽と関係ないが、この時の彼女の髪型を見ると、ジョルジョ・デ・キリコの『謎を愛した男』をなんとなく思い出してしまう。
その後の彼女は90年代から本当に色々とあり、2009年に復活を遂げるアルバム『I Look To You』をリリースするも、2012年に48歳の若さで亡くなってしまう。2010年、彼女の最後のワールド・ツアーで生ホイットニーを観れて個人的には本当によかったのだが、残念ながら歌声はさんたんたるものだった。そんな時期、こんなパフォーマンスがある(http://www.gospelvideotv.com/video/2042/Whitney-Houston-and-Kim-Burrell--I-Look-To-You)。曲は『I Look To You』。R・ケリーの鉄板メロディーによる名曲。gospel–jazzシンガーのキム・バレルと一緒にパフォーマンス。比較的に相当調子の良さげなホイットニーに寄り添ったり掛け合ったり甲斐甲斐しいキム・バレル。二人のタイミングの合い具合に神懸かり的なものすら感じてしまう名演。こういった鳥肌の立つ素晴らしいパフォーマンスをもっと見せて欲しかった。スターが短命であることは時に事実として語られてしまうが、やはりそれは悲しいことに思われる。何事も「生きてこそ」だと思うのだが。
もう一曲紹介を。『I Believe In You And Me』(https://www.youtube.com/watch?v=dIK22ofgtFk)。映画『天使の贈りもの』での劇中バージョン。ライオネル・リチ男に促され、ホイットニー演ずる主人公がいやいや歌い出すものの、有り得ないクオリティーで歌唱して周りがビックリするというありがちな展開。地声で張った直後の裏声での抜き、からの地声の張り。ゴスペル定番のスケール移動のフェイク。全盛期のホイットニーが分かりやすく見てとれる歌唱ではないだろうか。ちなみにFour Topsによるこの曲のオリジナル・バージョン(http://www.dailymotion.com/video/x14ht12_the-four-tops-i-believe-in-you-me-1982-w-lyrics_music)、今は亡きリード・ヴォーカルのリーヴァイ・スタッブスの、基本シャウターの彼にしては比較的穏やかに歌い上げるオリジナル・バージョンもお薦めしたい。
<西崎信太郎 評>
先日、アリアナ・グランデがロサンゼルスで行われた公演にて、ホイットニーの"I Have Nothing"のカバーを披露、原曲のプロデューサーでもあるデヴィッド・フォスターをステージに招いてのパフォーマンスに話題が集まりましたね。今日のお題はホイットニーなので、ここではアリアナの批評は控えておくとして、私事ですがホイットニー・ヒューストンというアーティストを知っるきっかけになったのが正にこの"I Have Nothing"でした。サントラ『The Bodyguard』に収録されたナンバー、となると"I Will Always Love You"の方がインパクトは大きかったですが、個人的には"I Have Noghing"(そういえば、先日同サントラに収録されていたソウル・システムの"It's Gonna Be A Lovely day"のMVを、初めてYouTubeで見たばかりでした)。
とは言え、他人が見向きもしないであろう良質なアンダーグラウンドのアーティストを掘るのが、かねてからの生き様となっているモグラのような私は、実はホイットニーのような超大御所のアーティストはあまり聴き込んでおらずでして。本当に根暗だなぁ、もっと社交的にならないとダメですね。私のような若輩者が偉そうに語るまでもなく、女性アーティストとしては初となるビルボード200チャートで初登場1位(セカンド・アルバム)を記録したり、アルバム・セールスが1億4,000万枚を超える数字をたたき出していたりと、その才能は誰もが評するもの。これら、数字的尺度では推し量れないホイットニーの偉業の1つが、1991年にアメリカのプロ・フットボール・リーグNFLの決勝スーパーボウルにてホイットニーが披露した国歌斉唱。史上最高の国歌斉唱と評される素晴らしい独唱、初めてこの動画見たときは知らぬ間に涙を流していました。
マイケル・ジャクソンもそうでしたが、スーパースターゆえに波瀾万丈の人生を歩むざるを得なかったというか、薬物中毒、ボビー・ブラウンとの離婚、そして突然の死。アメリカ人って批評をハッキリするというか、ステージに上がっている人間であれば、過去の栄光は無だったかのごとく、白黒ハッキリさせますからね。だからこそエンターテインメントの世界としては結果魅力的な世界が構築されるとも思いますが、ホイットニーの死後ローリン・ヒルが残した言葉を見ると、強烈なスポットライトを浴びる人ほど、孤独なのかなとも思ったりします。「人を亡くす事にうんざりしませんか?私はそうです。なら、アーティストを愛して下さい。彼らがつまずく時はしっかりと支えてあげて下さい。今、人々はホイットニーに愛を見せ始めているが、これは彼女が生前に受けるべきだった」
既述の通り、ホイットニーを知るきっかけになった曲は"I Have Nothing"でしたが、ホイットニーを好きになるきっかけの曲は、前夫のボビー・ブラウンと夫婦デュエットをした"Something In Common"。この曲で、ボビー・ブラウンも、プロデューサーのテディ・ライリーも、一気に全員好きになった思い出の曲です。
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