尊敬する政治ジャーナリストを挙げよ、と聞かれると私は迷わず藤本順一さんの名を出すことにしている。

10年前、こう答えると大抵の新聞記者やテレビ記者、あるいは雑誌編集者たちですら怪訝な顔をしたものだった。

「もっと有名な人ではないんですか?」

「立花隆さんとか筑紫哲也さんとかにはなりませんか?」

こう言ってくる記者もいた。

私は笑いながら、こう返したものだった。

「立花さんや筑紫さん、あるいはテレビに出ているコメンテーターの中でも、藤本さんにお世話になっている人、たくさんいますよ、あなたの会社の上司もね」

実際、藤本さんの政治報道の深さとその政局観は舌を巻くものがある。

議員秘書を経験した私は、日本の政治報道の偽善性に嫌気が差していた頃だっただけに、藤本さんとの出会いは新鮮だった。

こう書くと僭越かもしれないが、政治のなんたるかを最もよく理解している政治ジャーナリストのひとりが藤本さんであったのだ。

その鋭さはいまなお衰えていない。