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吉田尚記×宇野常寛『新しい地図の見つけ方』第3回「TO DO」の働き方(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.565 ☆
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吉田尚記×宇野常寛『新しい地図の見つけ方』第3回「TO DO」の働き方(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.565 ☆

2016-04-15 07:00

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    吉田尚記×宇野常寛
    『新しい地図の見つけ方』
    第3回「TO DO」の働き方
    (毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.4.15 vol.565

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    「やりたいことや目標を持った人間にならなければ」という「TO BE」の風潮が広まる中、「とにかく楽をしたい」という「TO DO」に流れることが、結果的に世界を広げるのではないか。「TO DO」の働き方について、吉田尚記さんと宇野常寛がそれぞれの経験を交えて語ります。(初出:「ダ・ヴィンチ」2016年3月号(KADOKAWA/メディアファクトリー)

    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

    ▼対談者プロフィール
    吉田尚記(よしだ・ひさのり)
    1975年12月12日東京・銀座生まれ。ニッポン放送アナウンサー。2012年、『ミュ〜コミ+プラス』(毎週月〜木曜24時00分〜24時53分)のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。「マンガ大賞」発起人。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計12万部を超えるベストセラーに。マンガ、アニメ、アイドル、落語やSNSに関してのオーソリティとして各方面で幅広く活動し、年間100本近くのアニメイベントの司会を担当している。自身がアイコンとなったカルチャー情報サイト「yoppy」も展開中(http://www.yoppy.tokyo/)。

    ◎取材・文:臺代裕夢



    宇野 この連載の第1回でよっぴー(吉田さん)は「TO BE」ではなく「TO DO」の働き方をしなければいけないという話をしていたよね。

    吉田 アナウンサーになりたいとか、宇野さんのような評論家になりたいとかではなく、「仮面ライダーの素晴らしさを世界に発信しなければ俺は死んでしまう!」みたいな動機でやりたいことを見つけたほうがいいという話ですね。

    宇野 僕もその意見には100%賛成なんだけど、一方でいまの社会は、「人生でやりたいことや目標を持っていないのは駄目なやつだ」という風潮が強すぎる気がする。極端な例だけど、僕が昔働いていた会社は、まわりに金融機関が多いところだったのね。それで昼休みに近くの本屋へ行くと、銀行とかの制服を着た女性が、必ずなにやら思い詰めた表情で語学本コーナーにいるわけ。毎回違う人なんだけど、他には目もくれずそこに向かって、30分ぐらいいろんな本をパラパラ見て、買ったり買わなかったりして戻っていく。これって、特別やりたいことがないのに「なにかやらなくちゃいけない」という強迫観念だけが先行して、とりあえず社会一般で確実に価値があると言われている語学のコーナーに足を運んでいるというパターンがほとんどだと思うんだよ。

    吉田 自己啓発系のセミナーや本なんかも似たようなもので、ある意味、不安を逆手にとられているんですよね。だけどそれは限りなく「TO BE」。「やりたいことや目標をもっている何者かにならなければ」っていう気持ちで動いている。

    宇野 自分の世界を広げているように見えて、確実に狭める行為だと思う。いまの例で言うと、消去法で語学以外の選択肢や可能性を閉じてしまっているということだからさ。もっと気軽に、好奇心を持って本屋をふらふらと歩き回れば、これから夢中になれるものが見つかるかもしれないのに。つまりなにを言いたいかというと、やりたいことがないのなら、人の足を引っ張らない範囲でどんどん楽な方向に流れればいいんじゃないかっていうこと。それが結果として世界を広げることに繋がると思うんだよね。「とにかく楽をしたい」という「TO DO」だってありじゃないかな。

    吉田 そうやって易きに流れることで、自分が予想もしていなかった場所に辿り着くということだってありますよね。僕も大学4年生のとき、卒業に必要な単位は全部とっていて、就職先も決まっていて、卒論もそれほど大変じゃないという状況に置かれたとき、なにをすればいいのか分からなくなってしまったことがあったんですよ。それで『ポケットモンスター』のアニメを1から全部借りて見たりしていたんですけど、結果としていまの仕事にめちゃくちゃ役立ってます(笑)。

    宇野 僕も大学を出て1年ぐらいはなにもせずにぶらぶらしていたよ。ときどきバイトして最低限の生活費を稼ぎ、あとはゲームとかアニメとか、ひたすらオタクコンテンツを消費して生きていた。目の前の快楽にしか興味がなかったね。

    吉田 楽な方向に流れまくった結果、その道のスペシャリストになったと。でも、結果として普通に就職もしているんですよね。どうして会社員をしながら、『PLANETS』をつくろうと思ったんですか?

    宇野 最初に入ったのは大学時代から住んでいた京都の会社。ちゃんと週休二日もらえて、週に一回はレイトショー観られたらいいなと思っていたの。だけど、だんだん同年代の物書きがデビューし始めるじゃない? それを読んでいると、絶対に自分たちがつくっているもののほうが面白いって感じてさ。「俺様が本気出したらこいつら全員蹴散らせるんじゃないか」みたいな(笑)。東京で毎日飲み会をしている業界人や文化人たちには見えていないシーンが自分たちには見えているという確信と、それを思い知らせる必要があるという謎の怒りによって誕生したのが『PLANETS』。ネットで仲間を集めて立ち上げた。

    吉田 最初につくったときは、ゆくゆく『PLANETS』を食い扶持にしていきたいという想いはあったんですか?

    宇野 まったくない。というか、むしろ僕の会社員としての収入で成り立っていた。最低限赤字にだけはしないようにと意識していたし、実際には少し黒字になっていたんだけど、そこで出た利益は全部次の号の制作費にぶっ込んでいたから。そもそも僕が会社員をしていたのは、時間をお金で買うという意識もあったんだよね。安定した収入源を確保しておくことで、本当に自分のやりたいことに時間を費やせる。正直、PLANETSは当時のサブカル批評界隈の人にはウケが悪かったと思うよ。まったく空気読まなかったから(笑)。でもさ、彼らの空気読んでたら僕の考える面白さは表現できない。業界の空気を無視して、自分たちが信じる面白さを追求できたのも、「それが無くても食っていけたから」なんだよね。


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