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PCオンラインゲームが行き着いた「脱・戦争」競技のかたち 〜『League of Legends』『World of Tanks』『艦隊これくしょん』〜(中川大地の現代ゲーム全史)【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.588 ☆
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PCオンラインゲームが行き着いた「脱・戦争」競技のかたち 〜『League of Legends』『World of Tanks』『艦隊これくしょん』〜(中川大地の現代ゲーム全史)【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.588 ☆

2016-05-11 07:00

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    PCオンラインゲームが行き着いた
    「脱・戦争」競技のかたち
    〜『League of Legends』『World of Tanks』
    『艦隊これくしょん』〜
    【毎月第2水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.11 vol.588

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    今朝のメルマガは『中川大地の現代ゲーム全史』をお届けします。今回は「eスポーツ」としてのPCオンラインゲームの展開と、その潮流と並行して日本で独自進化を遂げた『艦隊これくしょん』の脈絡を論じます。


    ▼執筆者プロフィール
    中川大地(なかがわ・だいち)
    1974年生。文筆家、編集者。PLANETS副編集長。アニメ・ゲーム関連のコンセプチュアルムックの制作を中心に、各種評論・ルポ・雑誌記事等を執筆。著書に『東京スカイツリー論』(光文社)。本メルマガにて『中川大地の現代ゲーム全史』を連載中。

    第11章 デジタルゲームをめぐる地殻変動/汎遊戯的世界への芽吹き
    2010年代前半:〈拡張現実の時代〉本格期(6)



    ■「eスポーツ」化するPCオンラインゲーム

     繰り返し述べてきたように、海外に比しての日本のゲーム市場の特徴は、パソコンゲームの分野がファミコンブームを機に、極端にニッチ化してしまったことにある。その構造は、1990年代後半以降のインターネットオンラインゲームの時代にも変わらず、例えば欧米のインディーズ系のディベロッパーなどが開発コストの低いPC環境で一定の成功を果たしたのちにコンソールへの移植でメジャー化してブレイクしていくといった回路でのヒットタイトルの更新が、日本市場にはほとんど波及しえなくなっていた。
     そのため、PCとのアーキテクチャに大差がなくなっていくXbox以降の家庭用ゲーム自体においても、海外ならばありうるイノベーションのエンジンを欠く格好になり、少なくともモバイルゲーム台頭以前までは、世界のゲーム市場全体の成長から日本だけが取り残される事態を招く一因にもなっていたと言えるだろう。

     とりわけ2010年代に入ってからは、『League of Legends』(ライアットゲームズ 2009年)や『World of Tanks』(ウォーゲーミング 2010年)など、基本無料でありつつオンラインでの対人戦の競技性の高いタイトルが爆発的な人気を獲得し、世界のパソコンゲーム市場を大きく牽引していく。

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    ▲『League of Legends』(ライアットゲームズ 2009年)
    (出典)日本版サイト

     前者の『LoL』は、RTSにアクションRPG的な要素を加えるかたちで派生したMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)と呼ばれるサブジャンルを汎く浸透させた作品だ。MOBAとは元々、人気RTSシリーズの拡張セットである『WarcraftⅢ:The Frozen Throne』(ブリザート・エンターテイメント 2003年)のMODとして制作された『DotA Allstars』において確立されたゲーム形式で、通常のRTSでは一人のプレイヤーが半自動的に行動する多数のユニットに指令を与えるのに対し、「ヒーロー」ないし「チャンピオン」と呼ばれる特に強い主人公格のユニット一体だけをリアルタイム操作しながら、他のプレイヤーが操る別のヒーローやAI制御される多数のモブユニットと連携して敵の拠点を攻め落としていくというスタイルを特徴としている。この形式を踏襲しつつ、3対3ないし5対5のプレイヤー同士のチーム戦を簡便に行えるよう、ルールや操作系をカジュアル化したのが『LoL』だった。一般的なMMOゲームやソーシャルゲームのアイテム課金とは異なり、課金要素がチャンピオンのスキン(外見)の変化のみにほぼ限られているため、ゲームの勝敗は純粋にプレイヤーの技量に依ることや、対戦場となるマップの形式が規格化されていることなどの特性により、本作はデジタルゲームを用いて一般スポーツのような競技大会を行う「eスポーツ」の絶好の種目としても見出されていくことになる。

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    ▲『World of Tanks』(ウォーゲーミング 2010年)
    (出典)日本版サイト

     後者の『WoT』は、その名の通りソ連、ドイツ、アメリカ、日本などの各国で第一次世界大戦期から朝鮮戦争期あたりまでに開発・構想された様々な戦車を駆って最大15対15のチーム戦を行う対戦型TPSで、ベラルーシで創業したウォーゲーミング社がロシアを皮切りにサービスを開始した。日本製のゲームに喩えれば『機動戦士ガンダム 戦場の絆』などと同様、はじめは性能の低い旧型の戦車で出撃しつつ、プレイを重ねてゲーム内通貨などを蓄えることでより強くバラエティ豊かな戦車に乗り換えていくという、まずはミリタリーな機体へのフェティッシュによってファンをモチベートしていくタイプのタイトルと言えるだろう。
     ただし戦車の操作は極力簡略化し、伝統的なウォーSLGのように実際の戦史上の戦いをモデルにしたりはせず、なるべくカジュアルなユーザーが取りつきやすいような措置が採られていたのが、同種のゲームの中での本作の特徴であった。課金によってプレミアムな戦車や特殊砲弾などの購入は可能だが、本作もまた無課金のユーザーであってもゲーム上不利にならないように周到にバランス調整がなされていたことで、題材のマニアックさに比して多くのプレイヤーを獲得することに成功。『LoL』などと同様にeスポーツ的なタイトルとしての認知を受け、全世界規模での競技大会が開催されるに至る。

     このように課金によって〈闘争(アゴン)〉のフェアネスを損なわないかたちでオープンな競技性を練り込み、大会での勝利という目標設定を置くことでプレイヤーに継続的な動機を与え、一過性の消費に留まらないタイトルの長寿命化をはかるというビジネス構築の仕方は、ひたすらにガチャなどの〈運(アレア)〉に依存して射幸心を煽りつつ、課金による結果の差別化ばかりを追求していた同時代の日本のソーシャルゲームの展開とは、まったくもって対極のものだったわけである。この対照は、かつてロジェ・カイヨワがアゴン優勢の遊びが持つ文明形成の力を重視する立場から、日本人がパチンコに興ずるさまをして低次元な受動性の遊びに淫していると批判した比較文化論的図式が、まるでそのままオンラインゲームの受容形態にスライドしたようにも見えるだろう。
     ただし、かように〝健全なeスポーツカルチャー〟の後進国たる日本コンテンツの中から、思わぬかたちで海外の競技的なPCゲームとの接点が発生したりもしている。2012年から放映されたテレビアニメ『ガールズ&パンツァー』が、『WoT』の日本でのサービス開始に合わせて大規模なコラボレーション展開を開始したのである。巨大な空母のような「学園艦」に築かれた女子高における〝乙女のたしなみ〟として、第二次世界大戦期の各国戦車を用いた対戦競技である「戦車道」なる武道が奨励されているというアニメの世界観が、まさにeスポーツとしての『WoT』の競技性に適合したというわけである。

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    ▲『ガールズ & パンツァー』


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