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落合陽一『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』
第1回 人間性の脱構築と7つの仮想未来
【毎月第1木曜配信】
第1回 人間性の脱構築と7つの仮想未来
【毎月第1木曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.8.4 vol.659
今朝より落合陽一さんの新連載『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』がスタートします。近代以降、人間を人間たらしめると信じられてきた「知性」さえも、私たちは今コンピュータに移譲しようとしている。機械によって自己言及的に規定され続けてきた人間性の歴史を辿った上で、最新テクノロジーから予測される未来社会の思想的課題を描写します。
【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
取り扱い書店リストはこちらから。
▼プロフィール
落合陽一(おちあい・よういち)
1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。
◎構成:長谷川リョー
■ネットワークという<巣>に棲みついた人間と機械の共進化関係
今回から新連載「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」が始まります。
「デジタルネイチャー」とは、僕の初の単著『魔法の世紀』の最終章で使われていた言葉です。僕が博士課程の頃、場によるコンピューティングの実現によってもたらされる、ユビキタスコンピューティングの次に来るであろう世界観を考えていたときに浮上したキーワードでした。コンピューティングが特別なものではなくなり、テクノロジーが溶けていった先に回帰するである「未来像の自然」を今の自然と区別してなんと呼ぶべきか。そのアイディアの一つがこの計算機自然,デジタルネイチャーという言葉です。
計算機用語である「デジタル(digital)」は、「離散的に・離散値の」という意味の言葉ですが、ここでは「計数的な」という意味で用いています。また、当初は離散的な量を示すデジタルという言葉は時代とともに「計算機の」という言葉になってきました。デジタルネイチャー(digital nature)、つまり「計数的な自然」「計算機的な自然」とは、一体どういうことなのか。まずは、そこから解説していきましょう。
これまでの社会では、「人間」と「コンピュータ」と「自然」は、その関係性において、それぞれ独立して存在していると考えられていました。
たとえば、その典型が「コンピュータによって世界を変える」という発想です。自然をコントロールし人工物を作り出すという人間の営みの、「手段」や「道具」として、コンピュータが使われていました。
しかし、現代においては、それを覆すような大きな転換が起きています。
社会の至る場所にコンピュータが偏在し、そのネットワークの網の目に人間が接続されることで、人間社会という巨大な〈巣〉が形成されています。人間だけを中心に世界が構成されているのではなく、コンピュータによる電信系を中心に構成された世界に人間が棲みついているのです。
この社会においては、支配的なポジションを特権化するのは極めて難しいです。確かに、GoogleやFacebookは特権的な地位を占めているように見えますが、市場原理が働いている以上、その地位は安泰ではありません。Facebookが民意にそぐわない方針を打ち出せば、別のコミュニティに取って替わられるかもしれないし、Googleが有料化されれば、似たような無料のサービスが立ち上がるでしょう。つまり、インターネットは極めて民主主義的な状態で全体性が保たれている。それがハイパーリンクのネットワークを形成し、個々人が相互に通信しているのです。1960年代にノーバートウィナーが社会システムや身体、生物、ロボティクスを通信と制御理論で接続し、サイバネティックスと呼んだような分野、そして未来像がインターネットの上に構築されつつあるのです。
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最終更新日:2024-11-13 07:00
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