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そしてカーデザインは21世紀へ――今までの自動車、これからの自動車/日本の大衆車・後編(根津孝太『カーデザインの20世紀』最終回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.662 ☆
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そしてカーデザインは21世紀へ――今までの自動車、これからの自動車/日本の大衆車・後編(根津孝太『カーデザインの20世紀』最終回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.662 ☆

2016-08-09 07:00

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    そしてカーデザインは21世紀へ――
    今までの自動車、これからの自動車/日本の大衆車・後編
    (根津孝太『カーデザインの20世紀』最終回)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.8.9 vol.662

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    今朝のメルマガでは、デザイナー・根津孝太さんの連載「カーデザインの20世紀」最終回をお届けします。これまでの連載の総まとめとして、現在の大衆車が置かれている状況と、その未来を考えていきます。


    ▼プロフィール
    根津孝太(ねづ・こうた)
    1969年東京生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業。トヨタ自動車入社、愛・地球博 『i-unit』コンセプト開発リーダーなどを務める。2005年(有)znug design設立、多く の工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、企業創造活動の活性化にも貢献。賛同 した仲間とともに「町工場から世界へ」を掲げ、電動バイク『zecOO (ゼクウ)』の開発 に取組む一方、トヨタ自動車とコンセプトカー『Camatte (カマッテ)』などの共同開発 も行う。2014年度よりグッドデザイン賞審査委員。

    ◎構成:池田明季哉

    本メルマガで連載中の『カーデザインの20世紀』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。


    前回は、大衆車であるファミリーセダンが戦後の日本にとって特別な意味を持っていたこと、そしてその系譜を受け継ぐプリウスのデザインについてお話ししました。しかし誰もが自動車を手にし、自動車があることを前提としたライフスタイルが一般的になっていくと、より「便利なもの」が、生活の「手段」として求められるようになっていきます。さらにバブル崩壊によって、この流れはさらに加速していきました。そこで今回は、実用性が追求されていった大衆車の現状と、それらを踏まえた21世紀のカーデザインについて考えていきたいと思います。


    ■同じ顔になってゆく自動車たち

    バブル崩壊以降、大衆車のデザインは「コモディティ化」への道を歩んでいきました。「コモディティ(Commodity)」とは「どこにでもあるもの」を意味する言葉で、商品と商品の間の差がなくなってしまい、どれを買っても大差がないような状態のことを言います。

    例えば、ホンダ・N-BOXとダイハツ・タント、そしてスズキ・スペーシアという異なるメーカーの三つの軽自動車があります。どれも人気のある車なのですが、このデザインを見て、みなさんはどういった印象を受けるでしょうか。

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    ▲ホンダ・N-BOX。(出典

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    ▲ダイハツ・タント。(出典

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    ▲スズキ・スペーシア。(出典

    もちろん作り手側がこだわっているポイントはたくさんあり、個々にユニークな機能もあるのですが、ユーザー視点から見たとき、全体的にかなり似ていると感じられるのではないかと思います。軽自動車という決められた規格の中で利便性や快適性を追求し、車内スペースの確保や製造コストの低減などを突き詰めていくと、どうしても似た見た目になってしまうんです。近年の空力解析技術の向上によって、最適解が似通ってしまうという側面もあります。軽自動車に限らず、大衆車と呼べるような自動車はどれも外見的に近づきつつあるんですね。
    コモディティ化という言葉はネガティブな意味で使われることも多いのですが、性能を追求していくことは基本的にはいいことです。誰もが安価で性能のいい自動車に乗れる、まさに「どこにでもあるもの」になったということは、大衆車のそもそものコンセプトの完成だとも言えます。


    ■ファミリーセダンが担っていた機能の分裂

    一億総中流という幻想が生きていたファミリーセダンの時代には、誰もが同じ自動車を手に入れることを夢見ていました。ところが時代が下るにつれて、ファミリーセダンが担っていた機能はいくつかのパターンに分裂していったんです。
    現在の日本の大衆車がどのようなカテゴリーに分かれているかを考えるために、今日本で最も売れている自動車のランキングを見てみましょう。

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    これは通常別々に集計されている普通自動車と軽自動車の2015年度新車販売台数を合わせて並べ、上位20位までを抜き出したものです。これを見ると、現在の日本で売れている大衆車は軽自動車、ハイブリッドカー、コンパクトカー、ミニバンという四つのカテゴリーになっていることがわかります。ひとつだけSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)というカテゴリーのホンダ・ヴェゼルがランクインしていますが、ランキング上位20台のうち実に19台が、上記四つのカテゴリーのどれかになっているわけですね。

    上位20台のうち半分を占める軽自動車は「スペース系」と呼ばれる、居住性の高さを追求したタイプが人気を集めています。軽自動車については、この連載の第5回(そして小さいクルマは立派になった―黎明期国産軽自動車のトライ&エラーとその帰結)と第6回(21世紀に必要なのは「もっと遅い自動車」だ―超小型モビリティが革新する「人間と交通」の関係)で扱いました。また1位、2位、7位に登場するハイブリッドカーは、前回詳しく語っています。そこで今回は、残りのふたつ、コンパクトカーとミニバンについて見ていきたいと思います。


    ■小さなボディに秘めた走りの良さ――コンパクトカー

    「コンパクトカー」とは、普通自動車でありながら、ダウンサイジングを意図して設計された自動車のことです。法律でその存在が厳密に規定されている軽自動車よりはやや曖昧な分類ですが、普通自動車なので軽自動車よりも居住性や走行性能を確保する上で寸法的には余裕があります。そのため、軽自動車ではちょっと物足りないという人や、長距離移動をする人に支持されています。ファミリーセダンにあった「通勤の足」としての機能は、軽自動車だけでなく、コンパクトカーにも引き継がれたと言えます。

    コンパクトカーと呼べる自動車の歴史は長いのですが、現在のそれに直接繋がる車が登場したのは、00年代のはじめです。トヨタ・ヴィッツ、日産・マーチ(3代目)、ホンダ・フィットがその代表格ですね。今もモデルチェンジを繰り返しながら販売され続けているベストセラーです。これらの車は、たとえばヴィッツならカローラとその弟分であるスターレット、マーチならサニー、フィットはシビックとその弟分のロゴという、おもに70〜90年代にかけて人気を博した大衆車の系譜上にあります。ライバルと競う形で、あるいはユーザーの生活レベルの向上と共に、少しずつ大きく贅沢になっていったカローラ、サニー、シビックの弟分として、兄貴分が生まれた当時のポジションを再現すべく投入された経緯があると言ってもいいかもしれません。だいたい自動車の企画から販売までは4年程度かかりますから、バブル崩壊を受けて90年代後半に企画された車なんですね。

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    ▲トヨタ・ヴィッツ(初代)。(出典

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    ▲日産・マーチ(3代目)。(出典

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    ▲ホンダ・フィット(初代)。(出典


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