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複数の世代感覚を媒介することに成功した
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
(『石岡良治の現代アニメ史講義』
10年代、深夜アニメ表現の広がり(5))
【毎月第4木曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.9.22 vol.695
今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回は富山のアニメ制作スタジオP.A.WORKSの諸作品に注目しつつ、2011年を代表するヒット作となった『あの花』へと至る「深夜アニメ的表現」の系譜を考えます。
▼プロフィール
石岡良治(いしおか・よしはる)
1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に
『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、
『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
■P.A.WORKSの諸作品と『SHIROBAKO』の達成
前回は動画工房について語りましたが、この連載では京アニとシャフトに関しては、独立した項目を設けていました。もうひとつ、独立した項目を設けていませんが、ここ十年の比較的重要なスタジオとして、富山県南砺市城端に本社を置く、P.A.WORKS(ピーエーワークス)が挙げられると思います。
元請け第一作の『true tears』(2008年)は、今から振り返ると『心が叫びたがってるんだ。』(以下『ここさけ』)のプロトタイプと言えるアニメで、一応は同名のゲームを原案としていますが、今ではほぼアニメの印象のみが顕著な作品です。P.A.WORKSは富山県に限らず、北陸を舞台にした聖地アニメを多数制作しています。たとえば近作では、黒部ダム近辺を舞台に展開される『クロムクロ』(2016年)というロボットアニメがありますね。あくまでも地元をコンスタントに舞台にし続ける、そういうスタジオです。
アニメ聖地巡礼的な文脈でいうと、『花咲くいろは』(2011年)が旅館ものとしての重要作で、作中では架空の祭りとして設定されていた「ぼんぼり祭り」が、金沢湯涌温泉でアニメをきっかけに「湯涌ぼんぼり祭り」として実際に誕生し、今でもイベントが行われています(2016年に第6回を開催)。このように、比較的長期的なスパンで地域に根差すような聖地巡礼アニメを作っています。
P.A.WORKS制作で規模的にヒットしたものは、北陸アニメだけではないですね。具体的にいうと『Angel Beats!』が挙げられます。学園のモデルは金沢大学なので、聖地アニメ性がないわけではないのですが、『Kanon』や『Air』で知られるノベルゲームブランドKeyの麻枝准が原作シナリオを担当しており、特に終盤においてある種のバッドテイスト性を伴いつつも大ヒットしました。2015年の『Charlotte』も麻枝准シナリオのアニメで、こちらの主要な舞台は東京都国立市です。麻枝准原作のこの二作については色々と興味深いのですが、考察は別の機会にできればと考えています。
むしろここで考えてみたいP.A.WORKS作品は、『ガールズ&パンツァー』(以下『ガルパン』)の水島努監督が手掛けた『SHIROBAKO』(2014-15年)という「アニメ制作もの」のアニメです。こちらは、武蔵野アニメーションという架空の制作会社を舞台にしており、JR中央線の武蔵境駅近辺がモデルになっています。この舞台設定は、中央線沿線に数多くのアニメスタジオが存在している状況を反映したものといえるでしょう。
『SHIROBAKO』の概要について簡単にいうと、アニメの制作、声優、アニメーター、それとCGグラフィッカーといった仕事に同じ高校出身の女性たちが就いているという設定で、「高校の同級生がみんな業界で活躍する」というファンタジー要素を軸に、しかし仕事の現場についてはリアル寄りに描いたアニメです。実際の苛酷さを知っている人からみるとアニメ業界を美化していると言われることも多いです(ショートアニメ『ハッカドール THE あにめ〜しょん』の第7話「KUROBAKO」が、タイトルの時点ですでにアニメ業界の「ブラック企業」的暗部をパロディにしています)が、それでも割とシビアな側面や新旧世代の対立などを丁寧に拾っているアニメです。
『SHIROBAKO』で個人的に興味深いと思ったのは後半のモチーフです。武蔵野アニメーションは前半と後半では異なるアニメを制作しているんですが、前半がアクションアニメ(『えくそだすっ!』というタイトルでアメリカンニューシネマ風のシナリオが展開されます)なのに対して、後半は萌えミリタリーものを題材にしているからです。『第三飛行少女隊』という架空の萌えミリタリーアニメは、空軍という題材的に明らかに『ストライクウィッチーズ』(2008年)(略称『ストパン』の由来はある意味ひどいのですが)がモデルだと思われますが、もちろん実際には水島努監督自身が『ガルパン』で得た経験を元にしているわけです。
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