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落合陽一「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」 第4回 オープンソースの倫理と資本主義の精神(後編)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.764 ☆
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落合陽一「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」 第4回 オープンソースの倫理と資本主義の精神(後編)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.764 ☆

2017-01-05 07:00

    落合陽一「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」
    第4回 オープンソースの倫理と資本主義の精神(後編)
    【毎月第1木曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2017.1.5 vol.764

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    今朝のメルマガは落合陽一さんの『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』第4回の後編をお届けします。
    オープンソースの思想は、資本主義と拮抗しながら、バイオやハードウェアなどの分野に拡大しつつあります。プロテスタンティズムに由来する資本の絶え間ない再投下の果てに、インターネットが辿り着いた「脱倫理」と「全体主義」という二つの思想について論じます。


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    【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)

    ☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
    取り扱い書店リストはこちらから。

    ▼プロフィール
    落合陽一(おちあい・よういち)
    1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
    音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。

    ◎構成:長谷川リョー

    『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』これまでの連載はこちらのリンクから。


    ◼︎オープンソースの精神が変えつつある社会

    すでに私たちは、オープンソースなしでは生きていくことができなくなっています。オープンソースの上に成り立つ資本主義の世界を生きている。そういう意味において、私たちは知らず知らずのうちに「オープンソースの精神」を身に付けていると言えそうです。
    オープンソースという概念や、それよって支えられたインフラは、インターネット以降の人類のみが持ち得る特殊な環境です。こうした環境が整備されることが人間の社会をどのように変えていくのでしょうか。

    いま我々が生きているのは、「オープンソースの精神」と「資本主義の精神」が拮抗する世界です。2000年以降に全面化してきたオープンソースを、どうやって資本主義と共存させていくのか。オープンソースが生み出したものを、いかにして市場経済の枠組みの中に取り込むんでいくか、という葛藤があらゆる場所で起き始めています。
    オープンソースと資本主義の関係は、いまのところ繊細なバランスの上に成り立っています。たとえば、もし仮に、全てがオープンソースとなってシェア化されたときに、果たして資本主義経済は維持されるのでしょうか。資本主義は資本の集積と再投下によって成り立っていますが、全てが共有財産になった場合、シェアされた利益は誰の一存で再投下されるべきなのか、その判断は非常に難しいと思います。
    その一方で、公共的なプラットフォームが資本主義的な価値観によって運用されている状況は、必ずしも安定的ではありません。たとえば、Appleが突然App Storeを閉鎖したり、GoogleがAndroidの機能を停止する可能性はゼロではなく、そこに関して我々は極めてセンシティブにならざるをえません。
    また、オープンソースから資本主義側に価値を提供する流れでは、さほど大きな問題は起きていませんが、もし資本側がオープンソースを買収しようとすれば、これは大きな問題となるでしょう。

    オープンソースによって社会が少しずつ変化すると、それによってプラットフォームの構造も変わってきます。たとえば、Googleの情報検索やFacebookのソーシャルグラフといった技術は、オープンソースとしては公開されていませんが、その代わり、APIが提供されることによって、外部のプラットフォームから自由にその機能を利用できます。ようは、自由に価値を提供したり、逆に価値を享受できるような枠組みが求められるようになってきたということで、それを体現しているのが、近年登場してきた「シェアリングエコノミー」や「ソーシャルグッド」でしょう。
    いま、シリコンバレーから拡大し全世界的でメジャーとなりつつあるビジネスモデル、限界費用ゼロのサービスを提供することで薄く広くユーザーを獲得し、そこに資本主義的な資金の投下を繰り返すことで、最終的に利益を生み出すまで事業を育てていく。こうしたモデルが、オープンソースと資本主義が共存を始めた社会においても続いていくのか、改めて考えていく必要があるでしょう。


    ◼︎各分野で生まれるオープンソースによる二層構造

    ここまでの議論では、インターネットやコンピュータ業界において、オープンソースという新しい価値が蓄積されるようになったという変化を論じてきましたが、そういった動きは、ほかの分野にも拡大しつつあります。

    たとえば、バイオ分野の研究では、遺伝子のコーディング、CRISPR-Cas9によるゲノム編集、iPS細胞の製造といった先端技術の基本的なアイディアは、オープンに公開されています。もちろん多数のバイオ系企業は特許によって売り上げを得ているのですが、iPS細胞であれば、最初の発見者である山中伸弥先生の特許を確保した上で開放しているため、公的な研究機関であれば無償で利用できるし、関連企業はライセンス料を支払うことで製造を手がけられる。このように最新の研究成果が「知のインフラ」として整備されることによって、自前で細胞を製造できない小規模なベンチャーでも、バイオ系企業に依頼してIPS細胞を購入し、新しい心筋細胞や網膜細胞を作る、といったアプローチが可能になってきています。
     同じことはハードウェアの分野でも起きていて、Arduinoなどに代表される、オープンソースハードウェアが登場しています。これはインターネット上でハードウェアの設計図や回路図が無償で公開されていて、深圳の工場に発注をかければ、誰でも安い金額で用途に応じたパーツを製造できるわけです。


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