チームラボ代表・猪子寿之さんの連載〈人類を前に進めたい〉。今回は、まもなく北京で開催される大規模な展覧会での新作から、現在計画中という「森のアート展」についてまで語りました。彷徨いながら、自分すら失うアート体験とは?(構成:中野慧)
PLANETS Mail Magazine
猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第20回「都市生活者が忘れてしまった時間感覚・位置感覚を取り戻したい!」
猪子 この5月から10月までの5ヶ月間、北京で大規模な展覧会をやるから、今回はその紹介をしたいのね。中国語でのタイトルは「花舞森林与未来游乐园」。つまり、花舞森林と、未来の遊園地の展覧会。
今回初公開の『花の森、埋もれ失いそして生まれる』(以下、『花の森』)が、会場全体を、まるで覆うように花が咲いている。場所によって咲いている花が異なっていて、とある場所では最初は5月の花が咲いているけれど、やがて6月、7月の花になり、逆に手前の空間が5月の花になり……というふうに、空間全体で花の分布が変わっていくの。
猪子 会場では、『花の森』が全体に展示されているなかに、他の作品が展示されている小さな空間や大きな空間があるの。花の分布は移り変わるから、ある作品の空間に入って、そこから戻ってきたら、景色が変わっているのね。さっきまでは目の前に咲き渡っていたヒマワリが、いまは向こうの方で咲き渡っている、といったような。
全体の花の分布が動いていくことによって、鑑賞する人は方向感覚を失って森に迷い込んでしまったようになる。まるで彷徨うように、そして彷徨っていくなかで、自分と作品の境界すら失っていく中で、いろいろな作品を見たり体験したりしてほしい、と思っているんだ。
宇野 なるほど。展示自体をひとつの作品で包み込むって、チームラボの作品では意外と今までやってこなかったよね。複数の作品を同じ空間に展示するもの(『teamLab: Transcending Boundaries』(London, Jan 25 - Mar 11, 2017))はあったけれど。
猪子 『花の森』が、その他の作品たちをゆるやかに包み込んでいて、鑑賞する人はその世界を彷徨いながら、作品の中に埋もれていくようなかたちにできたらいいな、と思う。
それと今回のメインになる新作は「Fleeting Flower」シリーズといって、『菊虎』、『牡丹孔雀』、『向日葵鳳凰』、『蓮象』という4つの連作なんだ。
▲『菊虎』
▲『牡丹孔雀』
▲『向日葵鳳凰』
▲『蓮象』
猪子 たとえば『菊虎』は、小さな菊の花がびっしりと咲ていくの。咲いていく菊の花々の中に、虎のイメージが描かれていく。花が咲き渡るにつれ、虎のイメージが明瞭に浮かび上がってくる。そして、花はやがて散るんだけど、それぞれの花は、散る瞬間にそのイメージを固定し、イメージの一部ごと散っていく。散った花とともにイメージの一部は消えんだけど、再び咲いてくる花によってイメージの部分は再び補われて、他の花々とともに、イメージ全体を描き出していくんだ。
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