(イラスト:たかくらかずき)
さて、今回のTOKYO INTERNETから、いよいよ「東京が生み出すべき次のネットサービスは何か」というところを考えていきたいと思います。
その前に、まず連載の目的である「都市の土壌を使った次のネットサービスを作る」のには何が必要かという整理をしたいと思います。
結論からいうと
・金銭的資本
・文化的資本
の2つが必要であり、この2つが交差する点に、次のネットサービスの種があるのではないかと思っています。金銭的資本は「雨」のようなもので、文化的資本は「土」のようなものです。雨がきちんとふっていて、かつ豊かな土壌があってはじめて、ネットサービスという芽がでるのです。
この連載の前半では、様々な角度から東京にある、ネットサービスを作る上で活用できそうな文化的資本について考えていきました。なぜ文化的資本についてから考えていったかというと、「日本から世界に出ていくサービスがほとんどないのは、ベンチャーへの投資金額が少ないからだ」という結論になりやすいからです。
もちろんネットサービスを大規模に立ち上げるとしたときにはお金の問題は避けて通れず、どれだけイノベーションに大規模に投資できるか、というところで勝負が決まったりしがちなのです。
しかし、日本において「グローバルサービスは全世界に広がるものなので地域差はない。なので、どこの国からも生まれる可能性がある」という前提に立ちすぎているせいで、文化的資本に関する議論が日本においてあまりに少なく、結果としてネットサービス作りにおいて参照となる言論がない、という課題感を感じています。この連載ではまずそこを埋めたかったのですね。
この連載の初期のあたりで言及したとおり、GoogleやFacebookなどのグローバルサービスが普遍的であるため、どこの地域から生まれてもおかしくなかった、というわけではありません。むしろ、あのようなサービスは「アメリカのシリコンバレーだからこそ生まれた&育った」というほうが的確だと考えています。なので、日本がシリコンバレーで作られるようなサービスを作るのは難易度があがってしまうのです。
というわけで、連載の前半でテキストサイト文化や絵文字、匿名でのコミュニケーションサービスについて深く考察していったわけです。
そして、後半で、i-modeをはじめとするモバイルでの課金の強さなどを元に金銭的資本についても考えていっていきました。そして、今回、そして次回の記事で、本連載の結論部分に入っていきます。その結論に入るということは、前述の通り「金銭的資本と文化的資本が交差するのはどこか」というところを考えていく必要があると思っています。
まず、本記事では、その交差するうちの、大きな1つの点について考えていきたいと思います。
東京ではエコシステムをどう回せるか?
文化的資本と金銭的資本が交差するところはどこか?を考える前に、まず、日本 / 東京という地理において、金銭的資本をどうするのか、という点をもう一度整理してみましょう。それには「エコシステム」が必要です。
エコシステムとは生態系、といった意味ですが、インターネットベンチャー業界では、よく「世代を超えてお金や知識などのリソースが回ることで、ビジネスの生態系が回っていること」という意味で使われます。
たとえば、もっともエコシステムがうまくいいっているシリコンバレーでは、
・テック企業が成功をする
・そこで得た資金を次の世代に投資する
・新規参入社たちが多産多死の状態で様々なイノベーションを試むようになる
と言う形でまわっています。そうして生まれた企業の一部が生き残り、巨大企業になっていったり、M&Aをされることで大企業のイノベーションの源泉になったりしています。
いわば、GoogleやFacebookのような圧倒的に成功したインターネット企業のお金が、同じ地域内でぐるぐる廻ることで、地域全体が巨大なラボのようになっていっているのがシリコンバレーの強さなのです。
この連載のテーマである、地域からサービスが生まれる、という主張の背景には、文化面以外にも、このような金銭面での理由もあるということです。
このような、エコシステムがあってはじめて、その地域からイノベーションを起こす企業がたくさん生まれるようになるわけです。
一方で、日本ではまだ地域のエコシステムが回り始めたくらいなので、まだまだという状態です。
筆者の話でいうと、2009年にnanapiというハウツーメディアの運営する会社の創業をするのですが、その時にエンジェル投資家として投資してくれたのが、小澤隆生氏という、楽天にビズシークという自分の会社を売却した人でした。そして、nanapiも2014年にM&Aをされています。