【今週の映画】
沖田修一監督『横道世之介』

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原作/吉田修一 脚本/前田司朗 監督/沖田修一
出演/高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛

「悪人」「パレード」の吉田修一による青春小説を、「南極料理人」の沖田修一監督が映画化。1980年代を舞台に、長崎の港町から大学進学のため上京したお人好しの青年・横道世之介や、その恋人で社長令嬢の与謝野祥子らが謳歌した青春時代を、心温まるユーモアを交えながら描く。

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☆☆☆☆☆  原作よりも寓話的な味わいが遥かに増している
☆☆☆
【森直人:8点】
びっくりした。吉田修一の原作よりも遥かに寓話的な味わいが増しており、監督・沖田修一&脚本・前田司郎、そして高良健吾をはじめとする役者陣の律儀な仕事が不思議な表現のマジックを起こしている。内容をざっくり言うと『フォレスト・ガンプ/一期一会』+『サニー 永遠の仲間たち』だが、回想と現在の間にある十数年の「描かれなかった部分」をいろいろ想像してしまう作りで、この抑制の判断も見事。2時間40分の長尺なのに、もっと観ていたいと思った。

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☆☆☆☆☆  吉高由里子が可愛すぎる!
☆☆☆
【松谷創一郎:8点】
凡人の魅力という、映像にとってはハードルの高い表現を実現した傑作。平凡な大学生の話だが、ときおり挟み込まれる20年後を描くことで単なる青春映画に終わっていない(この点は『サニー』に通ずる)。沖田修一の作風と天然がかった横道世之介というキャラクターの相性もバッチリだった。なにより高良健吾と吉高由里子が、さほど特徴のないふたりにしっかりと血を通わせた。プールやカーテンに隠れるシーンの吉高、可愛すぎるよ!

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☆☆☆☆☆  現時点での沖田史上最高傑作
☆☆
【那須千里:7点】
俳優からの支持が高いことでは若手でもトップクラスである沖田修一監督。日常と非日常の間にある一コマを延々とスケッチするようなある種の無邪気でオフビートな作風も、今回は原作に避けて通れない物語上の事件があるため、逆説的にスパイスが効いている。さらにその最大のオチを着地点には持ってこない脚本の構成もまた上手い。自主映画時代のスタンスを変えることなく商業映画に移行した沖田監督の現時点での最高傑作だと思う。


▼2/23公開!『横道世之介』公式サイト
http://yonosuke-movie.com/

▼執筆者プロフィール
森直人
1971年生まれ。映画評論家、ライター。
著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)など。
http://morinao.blog.so-net.ne.jp

松谷創一郎
1974年生まれ。ライター、リサーチャー。
著書に『ギャルと不思議ちゃん論  女の子たちの三十年戦争』(原書房)など。
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH
https://twitter.com/TRiCKPuSH

那須千里
映画文筆業。
「クイック・ジャパン」(太田出版)、「キネマ旬報」等の雑誌にて執筆。