写真提供:映画『リビング ザ ゲーム』
横浜シネマリン(〜5/25)ほか、山口情報芸術センター[YCAM](5/18〜20)、シネモンド(金沢市・5/26〜6/1)にて順次公開
ⓒWOWOW/Tokyo Video Center/CNEX Studio
『ゲームセンター文化論』の著者でゲームセンター研究の第一人者である社会学者の加藤裕康さんと、『現代ゲーム全史』の著者である評論家の中川大地さんの対談の集中連載。最終回である今回は、コミュニティの大切さやビジネスモデルについて、〈eスポーツ〉の今後のあり方について提言をしていきます。(構成:藪和馬+PLANETS編集部) ※本連載の一覧はこちら。
どこにカネを落とすべきか
中川 ここまでの話では、とにかく高額賞金ありきの制度化は、概念としてのeスポーツにとってマストな要素では決してない。それはあくまでもやはり二の次三の次の問題であって、文化としてやはりデジタルゲームを使った競技としてのeスポーツを盛り上げていく上ではやはり多様な参加チャンネルによるコミュニティとかシーンづくりのほうが大事ということですよね。
だからこそ、もし本当に賞金額を上げるためにスポンサードするお金があるんだったら、勝ち上がった一部のプレイヤーにだけにあげるんじゃなくて、サスティナブルなコミュニティができるようなイベントの運営や大会などに投資するチャンネルをつくってくださいよということですね。これは、ももち選手が自分の主張としておっしゃっていたことでもあります。
その主張には本当に同意で、サスティナブルなシーンをつくりたいのならば、ライセンスなんかやっている場合じゃないんです。そんなことで賞金獲得のスキームを作ることじゃなくて、もっと違う金の使い方があります。だから、もっと具体的なかたちでいろんな人たちが提案していくといいかなという感じはしますよね。
加藤 まさに、おっしゃる通りだと思います。ライセンス制の向いている方向は、けっこう内向きです。eスポーツを広げようというふうには言うんですけど、そこは懐疑的です。
中川 広がるわけがない。
加藤 先ほども触れましたが、ゲームシーンの外には大きな壁があります。そこはやっぱりコミュニティとかにお金を落として、楽しそうな場をいっぱい作って、参加者の輪やゲーム文化を広げていかないと先細りしていってしまう気がします。だから本当に今のやりかたでうまくいくのかどうかは、ちょっと見守っていきたいなと思うんです。
中川 例えばももちさんのようなプレイヤーが、もっとスポンサーやIPホルダーと別の形で組んで、JeSUのライセンス制度とは違うスキームでの盛り上げ方をしてくれたらおもしろいなと思うんですね。
実際、彼のパートナーのチョコブランカさんなんかは、大会をイベントとして盛り上げるプロモーター的な役割を実践することで、競技に勝つだけではないプロゲーマー像のロールモデルを示してるわけで。
加藤 すごくわかりやすいのが、闘会議でライセンス制の大会をいくつかやっていたじゃないですか。中川さんと二人で観に行った大会は、どこも観客が少なかったですよね。もちろん、そこではプレイヤーたちの熱い戦いが繰り広げられていましたけれども、観客が盛り上がっているようにはとても見えませんでした。それは配信だけ観ていたらわからないけど、現地にいったら如実に伝わってきてしまう。
闘会議と同じ日に、秋葉原のe-Sports SQUAREでコミュニティ主導の大会が開かれていました。その大会運営には、海外のプレイヤーからも伝説のゲームセンターと謳われる「ゲームニュートン」のオーナーで、株式会社ユニバーサルグラビティーの代表取締役社長、松田泰明さんが協力しているのですけれども、非常に盛り上がっています。闘会議みたいな大きな会場ではありませんけれども、かなりの熱量を持って多くの人が集まっているんですね。ゲームニュートンでは定期的に大会が開かれていて、日頃からプレイヤーの集まる場を提供しています。つまり、コミュニティが大事というのは、そういうことなんです。 プロライセンス制度などを整えても、コミュニティが根付いていない大会は、結局その場が盛り上がらない。そうなったら、やっぱり続けていくのは厳しいですよね。
ストリートファイター系はプロゲーマーも多いし、今の日本では認知度が一番あるので、別格だとは思うんです。それでも、あるときを境に東京ゲームショウなどの大会の観客が少なくなったと感じたときがありました。その頃、格闘ゲーム人気の低迷も言われていましたが、大会を開けば成功するわけじゃなくて、いろんな要因が絡んでいる。コミュニティを無視して単に大きな企業が先導して大会を開いたとしても、それが盛り上がるかどうかっていうのはまた別物だと思うんですよ。
▲2018年4月1日に行われたバーチャファイター系の大会「第16回ビートライブカップ」の模様。コミュニティの根強い支持により、4年ぶりに開催された。
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