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3/8のお蔵出し:川上量生×奥田誠司×宇野常寛「新スタンダードアニメのビジネス戦略」
        (初出:シアターカルチャーマガジンT.【ティー.】18号)

  日本のコンテンツ(とりわけアニメ)はどのように消費されているのか、また、世界に伝えていくにはどうしたらいいのか。この難題に日々、向き合っているお三方を紹介しよう。
川上量生さんは〝ニコ動〟ことニコニコ動画で知られるドワンゴの代表取締役会長でありながら、スタジオジブリの代表取締役・鈴木敏夫氏のもとに〝見習い〟として就き、ジブリにも所属中。奥田誠治さんは実写のみならず、ジブリ映画や細田守監督作のエグゼクティブプロデューサーも務めており、宇野常寛さんはアニメをはじめ、現代のコンテンツ全般に精通する気鋭の批評家だ。
  鼎談はまず、宇野さんの、次のような刺激的な考察から始まった。
(取材・文=轟夕起夫)

宇野「いまの日本のアニメって僕が考えるに、まったく異なる2つの階層で動いていると思うんですよ。つまりどちらかと言えばアニメーション本来の〝動画と物語の快楽〟で観客を魅了するジブリ的な作品と、映像自体から半ば独立してキャラクターや背景の科学設定や架空歴史が二次創作的にファンコミュニティに消費される傾向が強いマニア向けの作品では楽しまれ方のメカニズムがまったく違うはずなんです。もちろん、たいていの作品はこの2つの要素を同時に備えている。しかし、いまの日本のアニメの〝受け取られ方〟を見ていると、両者の差ははっきりと出ているように思えるんです。ちなみに後者は70年代の『宇宙戦艦ヤマト』に端を発し『機動戦士ガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』といったシリーズもの、はたまた現在の多くの深夜アニメが該当します」

川上「15年前、『エヴァ』の最初の劇場版が登場してアニメ史を刷新しましたが、その年にジブリの『もののけ姫』も公開され、当時の日本映画の興行成績を塗り替えた。極端に言えばそれらは、別の階層で起こった現象だということですよね」