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独立派の団体を違法化する「社団条例」|周庭
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独立派の団体を違法化する「社団条例」|周庭

2018-08-28 07:00
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。香港政府が独立派に対して加えた次なる弾圧は、政治団体の運営の法的な禁止でした。違法団体には罰金・禁固が課せられる「社団条例」の適用により、周庭さんの所属する香港衆志も重大な危機に晒されることになります。(翻訳:伯川星矢)

    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
    第19回 独立派の団体を違法化する「社団条例」

    香港政府は、独立と民主自決を主張する候補者の議員への立候補を禁止したあと、どのような手段で反対者を弾圧するつもりなのか。二週間前の対応によって、その答えがわかりました。

    この記事を執筆する二週間前の7月17日、香港政府の保安局局長が記者会見を開きました。
    内容は「社団条例」の権力を行使し、国家と公共の安全確保を理由に、独立を主張する香港民族党の運営を禁止するという考えの表明です。

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    ▲香港衆志の街宣活動の様子

    簡単に言えば、政府はいかなる手段を使ってでも、政府の意向に逆らう意見を「違法」とみなし、法律で取り締まりたいと言う考えです。候補者・議員資格の剥奪はその手段の一つでしたが、法律によって政党・組織の運営を禁止するというのが、もう一つの手でした。


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    保安局長・李家超(リーカチュウ)は、「社団条例」第8条1aに基づき、社団事務主任は、あらゆる社団や付属機関の運営を禁止する権限を有し、国家・公共安全・秩序、または他人の権利・自由を守るために必要であると判断した場合、保安局長は香港民族党に運営禁止命令を発令することできる、としています。

    それでは、なぜ民族党は「国家の秩序にとって危険」なのか?
    李局長は「社団条例」の中に、登録団体は中華人民共和国の国土の完全性と独立自主を守る義務があることに言及し、国家主権の破壊、領土の完全性の破壊、国家分裂を助長するあらゆる行為を「レッドライン」と表明した上で、「絶対に触れてはならない」としています。
    さらに「香港政府の独立意見に対する立場は明白であり、香港政府には国家の安全を守る義務がある。いかなる国家安全を破壊する行為も、国家・香港の利益に反し、そのような行為は香港社会に悪影響を与え、公共安全・安寧・秩序を破壊し、重大な治安・社会・生活問題を引き起こす」とコメントしています。
    政権側は「国家の安全」を理由に反対側の立候補を却下し、今度は政治団体の組織すら許されなくなるのです。

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    ▲街頭で人々に呼びかける香港衆志のメンバー

    政府は当初、香港民族党に21日間の答弁期間を設けて、期限内に過去の言論に対して説明する必要があるとしていました。民族党の招集人・陳浩天(アンディ・チャン)は、21日間の答弁期間では不足であるとして、10月上旬までの期間の延長を要請し、保安局は49日間(9月4日まで)への延長を認めています。これは一見、民族党に答弁するための機会が設けられたように見えますが、実際には政府側は、その回答を聞く前に香港民族党を「違法団体」とみなすことできるのです。

    「社団条例」に基づいた、違法団体に関する罪状と処罰は下記の通りです。

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    この通り、上記の罰則には罰金刑と禁固刑が設けられており、最大禁固年数も2〜3年あります。すなわち、もし香港民族党が違法社団として認定された場合、いかなる政党会議も、活動も、募金も、そのすべてが違法とされ、民族党のメンバーは重い法的リスクを背負わなければならなくなる可能性があるのです。

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    ▲スタンフォード大学の民主理論学者・Larry Diamond先生と

    わたしは香港民族党のメンバーではありませんが、だからといって無関係だということは断じてありません。
    今回の香港政府の行為と決定は、香港人の「結社の自由」を侵害することになります。本来、香港憲法にあたる「基本法」では、香港人の基本的な言論の自由・結社の自由を保証しています。しかし、市民の権利と自由を尊重しない政権の下では、法律も政権の道具に成り下がったようです。
    もし今回、政府が香港民族党を「違法団体」と認定してしまえば、今後「国家安全」という理由で、他の組織や団体を「違法活動」として取り締まることができてしまう。私が所属している政治団体、民主自決を提唱する香港衆志もまた政府の取り締まり対象となります。

    先月の連載でお話した、2003年の50万人に及ぶデモ、国家の安全を理由とした「言論の自由」の弾圧に反対した「反基本法23条デモ」においては、一部の穏便な親中派の保留によって一時的な撤回に成功しました。しかし、2018年の今日、23条はまだ立法されていませんが、政府はすでにあの手この手で、反対者と民衆の自由を求める声を弾圧しています。さらに、学者が学術によって香港の将来を研究することすら許されなくなっている。これではもはや反基本法23条が通ったも同然です。

    香港の時事番組の司会者が、次の様な話をしていました。
    「一体、私たちは香港に生きているのか? それとも香港という名前の別の場所に住んでいるのか?」
    この言葉がとても重く響きます。

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    ▲中学生とのイベントに参加しました

    (続く)

    ▼プロフィール
    周 庭(Agnes CHOW)
    1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。

    『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。

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