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記事 19件
  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第16回 スタンフォード大学での講演

    2018-05-29 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。 今回は初めて訪れたアメリカで、スタンフォード大学でのイベントに参加しました。官僚との貴重な討論の機会となった本イベントでは、香港に関わる人同士の異なる意見がぶつかり合う場にもなりました。(翻訳:伯川星矢)
    執筆の二週間前に、わたしはアメリカのスタンフォード大学の招待を受けるという幸運に恵まれ、民主主義論の第一人者である政治学者のラリー・ダイアモンド氏、そしてサンフランシスコ在住の香港経済貿易所所長と香港の政治情勢について話し合いました。わたしはアメリカに行くのは初めてで、正直なところ、渡航前はアメリカンサイズの食べ物くらいしかアメリカについてのイメージがありませんでした(笑)。

    十数時間の飛行機に乗ってアメリカに到着すると(成田乗り換えだったので日本のお土産も買いました)、二人のスタンフォード大学の学生が迎えに来てくれました。二人ともスタンフォード大学香港学生の会(Hong Kong Student Association, HKSA)のメンバーです。アメリカの多くの大学では、香港人を主な構成員としたHKSAが組織されています。アメリカで香港人学生同士で知り合う場としての機能はもちろん、彼らはお茶会や、香港のポップスを歌うカラオケなど、香港文化のプロモーションも行っています。今回の香港政治に関するイベントも、スタンフォード大学HKSAの「広東語週」のイベントの一つです。

    わたしが一番驚いたのは、スタンフォード大学のHKSA会長は中華系の方ではなく、アメリカで生まれ育ったペルー人だったということです(一部香港の血が入っているそうです)。スタンフォード大学HKSAは他の大学とは異なり、 香港出身の留学生メンバーは多くありませんでした。会長ほど多文化を背景に持っている例は珍しいのですが、ほとんどの会員が中国系アメリカ人(American-born Chinese, ABC)で、あまり広東語を話せません。それでも、彼らは香港文化を愛し、香港で起こっている出来事にも非常に関心を持っています。
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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第15回 香港の未来のため、岐路に立つ民主派

    2018-04-03 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月11日の補欠選挙出馬無効を言い渡された周庭さんでしたが、急遽民主派の代表として立候補した区諾軒(アウ・ノックヒン)氏の応援活動をすることになりました。同氏の当選、楽観視できない香港の政治状況について、選挙戦を振り返りながら解説します。(翻訳:伯川星矢)
    数日前に立法会の補欠選挙が終了しました。4つの議席のうち、民主派が勝ち取ることができたのはわずか2席でした。「悪くない結果ではないか」と思われる方もいるかもしれません。そこで、今回の補欠選挙の背景について改めてご説明したいと思います。
    1年前、民主派議員6人が全人代の基本法解釈と政府の司法審査により、議員資格剥奪となりました。今回の選挙は、このうちの4つの空席を埋めるために行われました。つまり、これらの議席は本来民主派が2年前の立法会選挙で勝ち取っていたはずのものだったのです。政権が市民の選択を無視して強引な資格剥奪が行ったりしなければ、この6人の議員は今も議事堂の中で政府を観察し、政策の審議に携わっているはずでした。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第14回 認められなかった立候補

    2018-02-22 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月11日の補欠選挙への出馬を表明していた周庭さんでしたが、その立候補は認められませんでした。政見の審査による出馬無効、香港人が立たされている困難について、周庭さんが語ります。
    今年の3月11日、立法会の補欠選挙が行われます。本来だったら、この時期に様々な選挙活動や、公開討論、ディベートなどでわたしの予定はいっぱいになるはずでした。しかし、政権の不条理、反対意見を持つ者への心の狭さのために、わたしは立候補することができませんでした。

    立候補申込書提出後の1月27日の午前、わたしは政府選挙主任から「立候補申請を認められない」という旨のメール連絡を受けました。つまり、わたしは選挙に出ることができないということです。選挙主任はメールのなかで拒否理由を十数行述べていました。そこにはわたしの所属する政治関連組織が香港衆志であることが理由として挙げられていました。香港衆志は「民主自決」を志す政党であり、「香港独立」に関しては住民投票によって民意を問うべきだと主張をしています。そのため、わたしが「心から基本法(第一条『香港特別行政区は中華人民共和国の不可分の部分である』)を遵守するとは思えない」ことを理由に、立候補を認めることができないということでした。その後、更に香港独立を主張したことある2人の立候補者が出馬不可となりました。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第13回 わたしが補欠選立候補を決意するまで

    2018-01-24 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月11日の補欠選挙への出馬を正式に表明した周庭さん。その決意をするまでには様々な葛藤がありました。(翻訳:伯川星矢)
    2018年になりました。まずは新年のご挨拶をさせていただきます。みなさん、あけましておめでとうございます。昨年の12月、わたしは今年の3月11日に行われる立法会選挙香港島区への出馬を「前向きに検討する」と発表しました。そのときから、わたしとわたしのチームは休む間もなく様々な準備活動や宣伝活動、公約の準備などを進めてきました。この原稿を書き始めた今日はすでに1月10日、あと3日で選挙出馬を発表し、正式に選挙戦へ突入することになります。
    今思い返してみると、「選挙出馬」はわたしにとって手が届くはずのないものでした。正直なところ、わたしは自分が選挙に出ることはあまり考えたことはなかったのです。これまでネイサン・ロー立法会議員事務所の政策研究補佐として働いていましたが、まさか自分が議事堂に立ち、議会戦争の最前線に立つと思いませんでした。去年の8月のわたしの戦友の収監をきっかけに、この考えは変わることになりました。
    わたしは考えました。今この険しい政治情勢の中、わたしは自分たちの政党のために何ができるのか。わたしは香港の民主活動に何ができるのか。どうしたら刑務所にいる戦友たちの負担を減らせるのだろうか。そこで心の奥底から湧き上がった選択肢は「選挙に出る」ことでした。ネイサン・ローを含む6人の民主派議員が議員資格剥奪となり、補欠選挙が目前でした。わたしの戦友で2人が禁固刑になり、被選挙権が5年間剥奪となりました(編注:香港では条例により、3ヶ月以上の実刑判決を受けた場合はその後5年間議員選挙に立候補できない)。戦友たちとこれまでやってきたことを発展させるため、これまで民主派が目指してきた議会方式を継続させるためにも、わたしはこれまでした中で一番の覚悟を持って、一番大きな決断を下さなければなりませんでした。
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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第12回 3月11日の補欠選挙へ向けて/ストラスブールでの国際フォーラム

    2017-12-12 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。先日、来年3月の補欠選挙への立候補を前向きに検討していると表明した周庭さんが、その心境を語りながら、先月のストラスブールでの国際フォーラムを振り返り、国際的なつながりを深める意義について考えます。(翻訳:伯川星矢) 
    3月11日の補欠選挙へ向けて
    12月4日の夜、わたしはFacebookで来年行われる香港島区の立法会補欠選挙への立候補を前向きに検討することを発表しました。この補欠選挙は、香港政府による民主派議員の議員資格剥奪に端を発するものです。わたしが立候補しようとしている選挙区は、先日香港衆志の主席ネイサン・ローが解任された議席です。
    今回の選挙戦は候補者同士の争いではなく、陣営・政治理念の争いになるでしょう。議員は資格剥奪で解任される事態が起こり、意を唱える人は監獄へ送られ、立法会はもはや全人代のものになりつつあるこの険しい時代です。そこでも、香港人は選択をしなければなりません。政府を監督できる議会を求めるのか、それとも非民主かつ高圧的な政府が統治する社会を求めるのか。全身全霊で市民の権利を守る議員を選ぶのか、それとも中国の利益を優先するあやつり人形を選ぶのか。
    選挙は来年の3月11日。これからは厳しい戦いとなりますが、命を賭けてこの戦いに挑みます。
    フランス・ストラスブールでの国際フォーラム
    先月、わたしはフランスのストラスブールに向かいました。
     
    今年のWorld Forum for Democracyに招待していただく幸運に恵まれ、世界各地の社会運動組織や政党の代表、メディア関係者たちと、民主主義・政党運営・メディア運営などの意見交換を行うことになったのです。香港からストラスブールの宿泊先のホテルへ行くためには、まず飛行機でパリへ行き、それから電車に乗って、さらにトラム乗り換える必要がありました。ところが、トラムを降りてからSIMカードが不調でWiFiが見つからず、Google Mapを使うことができなくて、道に迷ってしまいました。ホテルは駅から5分ほどの距離だったはずなのですが、最初に降りた駅からずいぶん離れてしまい、一つ先の駅まで歩いてしまいました。どうしようもなく、周りの人たちに聞くことにしました。

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  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」質疑応答編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】

    2017-11-15 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の質疑応答編をお送りします。会場からの質問に答えながら、香港人としての民主を目指す思いを語ります。(構成・翻訳:伯川星矢) ※文中の役職は、講演当時のものです。 ※この記事の前編はこちら・後編はこちら
    政党を作るという決断、正しいことをしていると信じて
    倉田 大変興味を持ったことがありますので、私からいくつか質問をしたいと思います。学生運動は学生が卒業すると終わってしまうから、それを永続的にするために政党を作るという選択をしたというお話がありました。ただ、まだジョシュアくんも周庭さんも、現役の学生であり、立法会議員のネイサン・ローさんも学生です。私たち日本人から見て現役の学生が政党を作るというのはなかなか想像ができないことです。お金もかかるし、ものすごいマンパワーも必要なり、勉強の時間も犠牲にしなければならない。実際ネイサンも留年をしているようですね(笑)。また、学民思潮のようなインターネット上で広がった組織を、実体のある組織にしていくというのも大変な努力が必要だと思います。そのなかでなぜ政党を作るという選択肢にいたったのかお聞きしたいです。 なぜ、香港に他にある既存の政党に入るという選択にならなかったのか。また、日本で若者が活躍していたSEALDsは政党を作るよりもすでにある政党と協力することを選びましたが、お二人はなぜ今ある政党と協力するのではなく、自分たちの政党を作るという方向性に行ったのでしょうか。その選択の理由を教えてください。
    周庭 どうして既存の政党に加入しなかったかというと、わたしたちの代表となるべき政党がなかったからです。公民的なことを目指す政党はあっても「民族自決」を主張する政党はありません。私とジョシュアが学民思潮に所属していたときに解散を検討したこともありました。でも、政治活動を続けたい人も多くいました。学連もありますが、首席を務められるのは一年だけです。だから、自分たちの政党か必要でした。倉田 雨傘運動のあとに民主派という伝統的な集団に加えて、自決派、本土派と呼ばれるような様々なグループが出てきて、複雑な状況になっていますね。それぞれのグループ・主張の間にどのような違いがありますか。周庭 民主派、自決派、本土派の違いには日本の政治環境とは異なる難しさがあると思います。まず、保守的民主派は親北京派と深い関係にあるがゆえに「一国二制度を守る」と主張しています。わたしたちの目指す「自決」とは香港市民が自ら未来を決めるということを意味しています。住民投票という方法を使って自分たちの未来を決められる状態が、民主自決です。香港にはその権利がありません。中国政府がそれを望んでいないからです。中国政府は一国二制度を主張する一方、同時にその破壊を進めています。
     本土派は「中国」と「香港」は違う個体だと主張していて、中国大陸から来る人々に対しても厳しい態度を取っています。わたしたちは香港に来た人は歓迎しますから、その辺りの考え方が違います。実は本土派はまとまっていなくて、去年も内部分裂していました。本土派で一番有名なのは青年新政です。議席を取り消された議員が2名所属しているのは、この青年新政です。まさか何万票もの得票で選出された議員がこういうふうになるとは……。こんな不公平なこと、日本では想像ができないと思います。倉田 これからのDemosistoには大きく3つの路線があるということでした。議会での活動、国際社会とのつながり、あとは街頭での抗議活動。このなかでも街頭での抗議活動を当初から重要視されていましたが、それには恐らく社会の人々を駆りだすような状況が必要だと思います。政府の対応に左右される面もありますね。例えば雨傘運動に関して言えば、2014年9月28日に政府が催涙弾を撃つ対応を行い、これは結果的に非常に多くの人がこの運動に参加するきっかけとなりました。つまり、今の梁振英行政長官がタカ派であるということが影響していると思います。  もうすぐ7月1日が来て、行政長官がキャリー・ラムになります。現状支持率も上がっているように見え、そうなると今度からは街頭にたくさんの人を動員するのは難しいのではないかとも思えます。それでも香港での抗議活動は続くと思いますか?
    周庭 まもなく7月1日になり、非民主的な制度で選出された新しい行政長官が生まれますが、新旧の行政長官ともに中国にコントロールされている人ですから、わたしたちにとって大した違いはありません。キャリー・ラムはソフトな路線でいこうとしていますが、政策などはやはり中国共産党の態度次第になると思います。今度習近平が来訪するので、そのときのスピーチから彼の態度と意向も推測できると思います。
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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第11回 議員資格剥奪・収監・反権威主義運動【毎月第3水曜配信】

    2017-10-18 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。香港では民主派議員の議員資格が剥奪され、著名な若手活動家たちに禁固刑が言い渡されるなど、大きな変化が起こっています。民主を目指し活動する周庭さんが、改めて香港の未来について考えます。(翻訳:伯川星矢)
     わたしが書いた文章を掲載するのはとても久しぶりとなってしまいました。前回はブラック・バウヒニア行動と返還記念日デモのお話をしました。7月1日の返還記念日から今日までの間で、香港の政治情勢はまた大きく変わってしまいました(恐らく日本でも同じですが)。今回は、この変化についてお話をしたいと思います。
    民主派議員の議員資格剥奪
     まず7月14日、香港の最高裁判所は香港衆志のネイサン・ローを含む4人の民主派議員の議員資格剥奪の判決を下しました。この件についてあまり詳しくない読者もいるかもしれませんので、簡単に説明したいと思います。昨年の10月、香港の律政司は「香港独立」を主張する二人の立法会議員が就任する際の宣誓内容に不備があると称し、議員資格の有効性について司法審査を要請しました。11月、全人代は基本法の内容に対して解釈権を行使しました(実際は解釈のみではなく新たな制限を設けており、実質的には改正でした)。12月、香港政府はさらに4人の民主派議員の議員資格の有効性について司法審査を要請しました。その結果、現在合計6人の民主派議員の資格が剥奪となりました。
    ▲雨傘運動3年集会の様子■PLANETSチャンネルの月額会員になると…
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  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」後編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】

    2017-09-20 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。香港で民主活動をしているジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、雨傘運動後の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
    ※文中の役職は、講演当時のものです。
    ※この記事の前編はこちら

    雨傘運動を終えての失望と、民主活動の危険性
    ジョシュア ここからは雨傘運動が終わった後のお話をしたいと思います。雨傘が終わったあと、香港人の間には失望感がありました。民主を実現するのは非常に難しいことなのではないか、という疑問も出始めていました。  ご存知の方も多いかとは思いますが、中国政府を批判する本を販売したとして銅鑼湾書店の店主さんや関係者の方たちが、昨年相次いで中国中央政府に拉致・拘束されるという事件が起きました。そして今年の1月末頃に、親中派であるビジネスマンが中央政府の内部闘争に巻き込まれ、香港のホテルで拉致されるという事件も起きました。  かつての香港は最低限の安全が保たれていると思われていましたが、これらの一連の出来事によって、香港は安全ではないのだと思い知らされました。去年までだったら、香港にいればとりあえずは安全だと僕自身も思っていましたし、中国側に立っている人物だったらなおさら問題ないと言えたはずなのですが、親中派のビジネスマンまでもが拉致されたことにより、その考えは誤りなのだと痛感しました。移民をしたり、もしくは外国籍を持って香港に住んでいるのならば、大丈夫だと思っている香港人も多くいたことでしょう。しかし、実際に拉致されたのは、イギリスやスウェーデンなどの外国籍を持っている人たちでした。香港は安全だという考えは間違いかもしれない、そう思いながら活動をしなければならない。これは、活動を行う上で、かつてと今との大きな違いです。  皆さん、想像してみて下さい。香港の繁華街にある、とても豪華なホテル。そこで突然人がいなくなり、拉致される。そして香港政府の目から逃れて、国境線を潜り抜け、中国大陸へと連れていかれる。そういったことが今、香港で起きているのです。一連の事件では、一国二制度がありながら、中国の中央政府関係者が香港で中国の法律を執行したということになります。このような大事件がありながらも、果たして一国二制度は機能していると言えるのでしょうか? 香港ではもはや、最低限の安全すら守られていないというのが現状です。  さらに民主制度に基づく選挙で選出された議員が資格を剥奪されるという事態も起こっています。香港では、立法会(日本の国会にあたる)の議員が就任する際には「香港は中国の一部」と定めた香港の基本法(日本の憲法にあたる)を遵守するという定型の宣誓文を読むことになっています。しかし、 基本法の解釈権を持つ中国の全人代は、故意に法定通りでない宣言をしたとして、反中派の議員たちの宣誓無効を言い渡しました。  中国と香港の政治制度は異なり、香港は三権分立がある法治社会です。それにもかかわらず、中央政府が「気に入らないから」というだけで、香港の法律を「解釈」してその議員を追放してしまいました。こんなにもあっさりと議員資格が剥奪になるのかと驚くほどです。選挙で3万から5万得票を得て、民選議員になった人であっても、行政長官と中央政府に気に入られなければ議員資格剥奪となるということになります。今の行政長官が当選したときの票数はわずか689票です(編注:香港の行政長官選挙では約1200人の選挙委員のみが選挙権を持つ/参考:「香港返還20周年・民主のゆくえ」前編)。そんな行政長官が、民衆から数万票を獲得した民選議員よりもはるかに大きい権力を持っているのです。  今のところ、香港独立を主張する2人の民選議員が立法会から追放されました。そして今、民主派で公民的不服従を主張する議員4人が議員資格をめぐる裁判にかけられています。その中のひとりが、香港衆志の主席でもある、ネイサン・ローです。今はまだ議員ですが、突然来週裁判の結果が出て、議員ではなくなるということもあり得ますし、ここにいる私たちふたりも議員のアシスタントとしての職を失うことにもなります。その上、政府との裁判なので、もしここで負けたら約200万香港ドル、日本円で言うと約2500~3000万円もの裁判費用を支払いしなければならなくなります。(編注:講演後の7月14日、ネイサン・ロー氏ら4人の議員資格を剥奪するという決定が下された。その後、ネイサン・ロー氏、ジョシュア・ウォン氏ら雨傘運動のリーダーは、違法な集会への参加や扇動をしたとして実刑判決を受けた) 
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  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」前編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】

    2017-08-23 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。立教大学の倉田徹教授の解説のもと、ジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、民主を求める香港の学生によるここ5年間の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
    ※文中の役職は、講演当時のものです。

    倉田 本日は多数のご来場ありがとうございます。こんなに人の入った講演会でお話をすることは滅多にありませんが、もちろん皆様のお目当ては私でないことは、よく承知しています。

    会場 (笑)。
    倉田 こちらにいらっしゃるのは黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんと周庭(アグネス・チョウ)さんです。香港衆志という政治団体で幹部を務めていらっしゃいますが、ジョシュアくんは香港公開大学、周さんは香港浸会大学の、現役の大学生3年生という立場でもあります。皆さんが2人のことを知るきっかけになった出来事は、おそらく2014年の雨傘運動ではないでしょうか。
     ジョシュアくんは、香港での真の普通選挙を求めるこの運動を起こし、香港の道路占拠を行った中心人物です。彼はまた同年に『タイム』の表紙を飾ったこともあり、世界的にも名の知られた人です。しかし、実は彼が香港で知られるようになったきっかけは、それよりも前、2011年からの反国民教育運動です。中国式の愛国教育に反対するその運動は、後に普通選挙を求める運動に変化していくことになりますが、そこで彼はリーダーを務めていました。

    (画像出典)
     こちらの周さんは学民思潮に加入し、スポークスパーソンとして活躍をされました。日本ではよく知られていることですが、彼女は私よりも日本語が上手ですね。
    会場 (笑)。
    倉田 ボキャブラリーの使い方がうまかったり、日本のポップカルチャーに詳しかったりと、私は彼女にいろいろ教えてもらう立場にあります。そして日本のテレビなどのメディアを通しても非常に人気のある2人でもあります。今年の7月1日に香港返還から20周年を迎えますが、それにあたって日本の皆様に話したいことがあるということで、この場に来ていただきました。皆さんもご質問などでこの場を盛り上げていただければと思います。よろしくお願いします。
    民主を求めて、香港の若者の政治活動
    ジョシュア (日本語で)こんにちは、私はジョシュアです。

    会場 (笑いと拍手)
    ジョシュア (以下、広東語で)周庭ほど日本語ができないので、ここからは広東語で話させていただきますが、ご了承ください。今回は香港の民主運動の過程を中心にお話をさせていただきたいと思います。この5年間の活動内容と、雨傘運動の後にどんなことをやってきたかの紹介、そして日本の方々へのメッセージをお伝えしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
     あらためまして、ジョシュア・ウォンです。香港公開大学の3年生で、学民思潮の元リーダー、現在は香港の政治団体、香港衆志(デモシスト)の秘書長を務めています。2011年から学生運動・民主運動に参加しています。
     日本に来るのは今回で5〜6回目になりますが、今回は初めて公開の場でお話しさせていただくことになり、実はけっこう緊張しています。まずお話したいことは、日本の文学が大好きだということです。日本のアニメは私にとっては欠かせないものです。『進撃の巨人』Season 2も観ていますし、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』や『機動戦士ガンダム00』も大好きです。
    会場 (笑)。
    ジョシュア 雑談はこれくらいにしておいて、本題に入りたいと思います。みなさんご存知のように私たちは雨傘運動に参加していました。まずは私たちがかつて所属していた学民思潮の紹介と、今所属している組織、香港衆志の紹介をさせていただきます。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第10回 ブラック・バウヒニア行動と初めての逮捕拘束

    2017-07-25 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。7月1日の返還記念日を前にデモに参加した周庭さんは、初めての逮捕拘束を経験しました。公民的不服従を主張しデモに参加する上での覚悟、逮捕後の様子を語ります。(翻訳:伯川星矢)


    ▲7月1日の返還記念日デモに参加する周庭さん
    先月の連載を見返してみると、京都や台湾への旅、そして六四燭光晩会など、すべてが遠い昔に起きたことのような気がします。ここ一ヶ月であまりにたくさんの出来事がありました。香港の情勢は激しく変化していて、毎月さまざまなことが起きているものですが、それでもこの一ヶ月、わたしは人生で初めての体験をいくつもしました。それはわたし自身の視野を広げ、更なる覚悟を決める機会でもありました。
    ▲返還記念日前のデモ、1回目のブラック・バウヒニア行動 (撮影:jimmy lam)
    ▲2回目のブラック・バウヒニア行動 (撮影:jimmy lam)
    前回、台湾に向かい林飛帆氏の結婚式に参加し、翌日香港に戻り、更にその翌日に東京へ行ったというお話をしました。それとはまた別に、今回はジョシュアと二人で東京に向かいました。とても厳しいスケジュールをこなしながら、わたしたちは初めて海外で記者会見を行いました。日本記者クラブで会見を行う機会をいただいたのですが、約40〜50人もの記者の方たちが参加されました。これほど多くのメディアの方が参加されたことに、本当にびっくりしました。たとえ香港で記者会見を行っても、雨傘運動のような大事件でもない限り、40〜50人もの記者が参加するということはほとんどありません。かつて、ジョシュアとネイサン・ローが台湾の政党・民間団体と一緒に記者会見を行ったり、アメリカも国会の公聴会に出席したりする機会がありましたが、単独での海外記者会見はこれで初めてでした。「主権移行20年」と題した海外会見がこれほどの成功を収めたことは、本当に想定外でした。
    記者会見以外にも、わたしたちは東京大学の阿古先生のご招待により、東京大学駒場キャンパスで行われた講演会に出席しました。その日、わたしとジョシュアは雨傘運動後の香港についての講演を行いました。たとえば中国共産党体制を批判する書籍を出版・販売していた香港の銅鑼湾(どらわん)書店の関係者5人が連続して失踪した事件や、親中派のビジネスマンが香港から中国大陸に誘拐された事件、そしてジョシュアがマレーシアとタイに入国拒否されたことなどについてお話をしました。また、わたしたち香港衆志の理念についても紹介しました。講演に来てくれたみなさんにわたしたちが民主的な制度を求めていると同時に、香港の民主主義と民主自決を求めていることを知ってもらいたかったのです。そしてとても驚いたことに、当日の参加者がとても多く、150人分の席がいっぱいになり、隣の教室から椅子を運び込んで座っている人もいましたがそれも入らなくなり、最後には廊下に椅子を並べてドア越しに講演を聞いている人も大勢いるほどの大盛況でした。正直、「すごすぎる」としかことばが出ません。当日参加された方たちに本当に感謝しています。
    ▲東京大学での講演の様子
    東京から香港に戻ると、わたしたちは7月1日の返還日記念日前後のデモ活動について考えを巡らせていました。今年の7月1日は香港の主権移行20周年でもあり、習近平が初めて国家主席として香港に来訪する日でもありました。毎年この日に、わたしたちはデモに参加していますが、公民的不服従を主張する組織として、デモ以外にも更に積極的な行動も行いたいと思っていました。7月1日よりも前に直接的な行動を起こすことによって、民衆が習近平の来訪を意識する空気を作り出し、返還記念日デモにももっと参加してもらえるのではないかと考えていたのです。
    最終的に、わたしたちは「“ブラック”・バウヒニア行動」を決行しました。20年前、中央政府は香港に、香港の「永遠の繁栄」を象徴としてゴールデン・バウヒニア(編注:ハカマカズラ科の植物)像を贈りました。土台と柱は「中国が香港をやさしく包み込む」ことを表しています。わたしたちはこの“贈り物”を行動地点とし、香港の「偽りの繁栄を破り捨てる」ことを表そうとしました。もしも繁栄と強さが人権弾圧によってもたらされるものなのだとしたら、わたしたちはそんなものは必要としていません。あの日、朝6時、わたしを含む約10人の香港衆志メンバーが湾仔(ワンチャイ)にあるゴールデン・バウヒニア像に黒い布を被せました。警察側は事前にこの行動の情報をつかんでいなかっため、わたしたちは布を被せることに成功し、目標の行動を達成しました。

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