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ライフスタイル化するランニングとスポーツの未来 『走るひと』編集長・上田唯人×宇野常寛・後編(PLANETSアーカイブス)
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ライフスタイル化するランニングとスポーツの未来 『走るひと』編集長・上田唯人×宇野常寛・後編(PLANETSアーカイブス)

2018-10-15 07:00
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    今朝のPLANETSアーカイブスは、雑誌『走るひと』編集長の上田唯人さんと宇野常寛の対談の後編です。ランニングが持つシンプルさと間口の広さ、「ライフスタイルスポーツ」人口の増加とその背景、新しいホワイトカラーの生活とテーマコミュニティ化するランニングの今後についてなど、「PLANETS vol.10」と『走るひと』のコラボレーションの、思想的な背景がわかる対談となっています。(構成:望月美樹子)
    ※この記事は2016年2月19日に配信した記事の再配信です・前編はこちら

    【告知】
    本記事に登場する『走るひと』編集長の上田唯人さんが、10月17日(水)に開催されるオンラインサロン・PLANETS CLUBの第8回定例会で、ゲストとして登壇されます。イベントチケットはこちらで販売中。PLANETS CLUB会員以外のお客様も購入可能です。ご参加お待ちしております!

    ▼雑誌紹介
    雑誌『走るひと』
    東京をはじめとする都市に広がるランニングシーンを、様々な魅力的な走るひとの姿を通して紹介する雑誌。いま、走るひととはどんなひとなのか。プロのアスリートでもないのになぜ走るのか。距離やタイム、ハウツーありきではなく、走るという行為をフラットに見つめ、数年前とはひとも景色もスタイルも明らかに異なるシーンを捉える。 アーティストやクリエイター、俳優など、各分野で活躍する走るひとたちの、普段とは少し違った表情や、内面から沸き上がる走る理由。もはや走ることとは切っても切れない音楽やファッションなど、僕らを走りたくてしようがなくさせるものたちを紹介している。

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    ■「走ること」の持つシンプルさが間口を広げている

    上田:2020年のスポーツ文化を考える時に、もっとこういう視点で読み解いたらいいのにと思うところや、他のカルチャーから学ぶことはありますか?

    宇野:他のカルチャーから学べることで言うと、エンターテインメントジャンルのノウハウを取り入れることで、スポーツをアップデートできると思うんですね。まさにeスポーツ学会が実践していることです。近代スポーツや近代体育のロジックが画一的な身体観に基づいている一方で、エンターテインメントは個々のプレイヤーの個性や多様性を使って盛り上げていく特性を持っているので、それを取り入れることでスポーツというゲームの更新ができるはずです。
    もう一つはライフスタイルでしょうね。現在のランニング文化の変化は、適度な運動が健康管理の上でポジティブな効果を持つという認識がようやく浸透して、運動がカジュアルなライフスタイルとしてしっかり根付いてきた結果ですよね。その中で、身体を動かすことを含んだ生活を、多様性を帯びつつどうポジティブに見せていくのかということです。運動することが特別ではなくなるのが大事だし、勝手に変わっていくとも思います。

    上田:これまで取材をしてきた中で、面白いと思っているのが、ロックバンドのアーティストにめちゃめちゃ走る傾向があることなんです。特に、ボーカルとドラムの人がすごく走っているんですよ。

    宇野:へえー。ギターやベースのひとはあんまり走らない(笑)

    上田:走ってる人もいるんですけど、気付いたらボーカルとドラムが一緒に走っている。理由の一つはボーカルとドラムが特に体力を使うことです。アーティストにとって、今はCDを売ってどうこうよりも、ライブツアーをしていかに食っていくかが重要だから、それに耐える体力が必要になったということです。
    でも、それ以外の背景があるような気もしているんです。ロックの表現が衝動的なことや、有り余ったエネルギーを表現のモチーフにしていることと、走ることの間に関係があるのかなという想像もしていて、『走るひと2』でロックの精神性のようなテーマを少し紐解いてみたんですよ。
    例えば、AKB48のまりやぎちゃんが走ったというので、その理由を聞いたんですけど、喘息を患わっていたぱるるの快気を祈って走ったと言うんです。「祈って走る」というのは、論理的に因果関係がないですよね。でも、彼女にとっては、走るという方法で祈りを示すことが、ぱるるを勇気付ける手段になっている。これはどういうことなのかと疑問に思ったんです。

    宇野:まりやぎ結構いい奴ですね(笑)。

    上田:良い奴なんですよ。クールに見せて、割とそういう人間ぽいところがある。話を聞いているとすごく家族思いだったり、近しい人間への愛情がある人だなというのをすごく感じました。そういうふうに、『走るひと』では人が走ることをいろいろな捉え方でやっているんです。

    宇野:面白いですね。変な例えですけど、僕の中で長距離ランナーといえば村上春樹なんです。趣味でずっと走っていて、マラソンまで出ちゃう。ああいう人って、イメージとしては草食動物で穀物を食べている感じなんですよ。一方で、ロックバンドとか短距離ランナーの人たちは、朝まで飲んで喧嘩するような、肉食のイメージがある。だから今のアーティストの話を聞いて思ったのは、もともと草食な人たちのものだったランニングが、肉食の人たちまで巻き込もうとしてるということです。ランニングが多様になってメジャー化していく中で、本来ならコツコツ走ることが性に合わないタイプの人も巻き込みつつある。この比喩で言うと、僕自身はお酒を飲まなくて甘いものが好きなので、お菓子の人間なんですよね。

    上田:お菓子の人間かわいいですね(笑)。

    宇野:だから僕は歩いて適当にカフェに入って、本読んだりお菓子つまんだりする。僕みたいに、酒飲まなくて甘いモノが好きでオタクで、というようなお菓子型の人間も、ロッカーのような肉食型の人間も、ランニングは同時に包摂しようとしている。僕はランニング史には詳しくないのですが、ガジェットが充実してきたことや、ランニングが都市部のライフスタイルとして定着してきているといった背景があって、間口がどんどん広くなっている。それで、本来なら対象外にあるタイプの人間まで巻き込もうとしている感触があるんですよね。

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