今朝のメルマガはPLANETS CLUBで開催された、家入一真さんと宇野による対談の後編をお届けします。後編では、将来的に訪れるであろう個々が直接的につながるインターネットのあり方や、お金がネットワーク化された先にあるヴィジョン、プラットフォームが金融の機能を担う可能性、「遅いプラットフォーム」の具体的なプランなどについて語りました。(構成:鈴木靖子)
※本記事の前編はこちら
本記事はPLANETSCLUB第7回定例会の内容を記事化したものです。PLANETS CLUBへの入会はこちらから
若い世代を送り出すという遺伝子の残し方
家入 「遅いインターネット」には、たとえば落合陽一さんとかはあちゅうさんとか、けんすうさんとか、いろいろな人が関わってると思うんですけど、この輪ってもっと拡がっていくんですか?
宇野 僕は第二、第三の落合陽一を出したいのね。それは、テクノロジーだ、イノベーションだでバズるという意味ではなくて、20代でその専門の業界では注目されつつあって、この先、世の中に対してインパクトのある仕事をしていく人の背中を押したい。
僕自身、落合くんとの出会いは衝撃的だったんだよね。彼の考えていることはこれからの世の中を考えていくときに、とんでもなく大きな意味があると。ただ、そのことを理解して、しっかり世に送り出せる人間は、申し訳ないけどいまの出版業界で自分以外いないだろうなと思ったの。それで、当時まだ暦本研(東京大学大学院学際情報学府 暦本研究室)の大学院生だった彼に、「本を書かないか」って話をしたんだよね。
彼の言っていることは僕が本にまとめないと、この才能があんまり良いかたちで世に出ないんじゃないかというある種の焦りというか、変な使命感があった。でも、本を出したあとに、これはメディア人としてすごく充実感のあることだし、幸福なことだなと思ったのね。
僕も40歳になるし、落合くんみたいな若い才能を送り出すことを、これからの仕事としてやっていきたいなって思ったんだよね。これはそれまでなかった欲望なんだけど。
家入 僕も今年の12月に40歳なります。
宇野 同い年だからね。僕は今年の11月に40歳。
家入 やっぱりそうなっていくのかな。僕もここ1、2年くらいでそういう責務みたいなことを感じるようになった。下の世代に対して何ができるかって意識は急に生まれたものではないかもしれないけど、本当に思うことが増えた。
宇野 自分の本や雑誌を作ることは前提として大事なんだけど、若い世代を送り出すという遺伝子の残し方もあるって思ったわけ。その方がより多様なかたちで世の中に対してポジティブな影響を与えることができるんじゃないか。それは、落合くんと出会って学んだんだよね。
家入 それはいつぐらいですか?
宇野 2014、5年かな。2014年にPLANETSを法人化して、メルマガをもっとメディアっぽく使っていこうと思って、いま僕の知っている一番トンガッてる人にインタビューしようと呼んだのが落合くんだった。そこで「魔法の世紀」って言葉が生まれて、メルマガの連載につながっていくんだよね。
▲『魔法の世紀』
家入 じゃあ、いまの活躍ぶりは感慨深いものがあるね。
宇野 そうなんだけど、なんか「ちょっとあいつ凄すぎる」って感じもあって(笑)。僕が想像していたのとは違う方向だけどね。
家入 どういう想像をしてたんですか?
宇野 アメリカに行くと思ってた。某グローバル企業が彼と組みたい的な話もあったはずだし、その流れで向こうに行くのかなって思っていたんだけど、意外と日本に残ってるなって。じゃあもう1冊作るかと思って、『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』を作ったんだよね。
▲『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』
そんなわけで最近は、落合くんに続くような若くて新しい著者を探しているんだよね。でも、未来の落合陽一になる彼ないし彼女の担当も、本当は僕じゃなくてもっと若い人がやるべきだと思う。
家入 箕輪さんとかですかね。箕輪さん、今後どうするんだろう。それこそ彼が「こいつヤバい」っていう若い人を発掘して、本でガッと押し出すみたいな役割を担っていくのかなって思うんだけど。
宇野 市場にアクセスして一気にメジャー化することに意味があると思えば、彼はやると思う。ああ見えて、かなり考えてる人だから。ただ、僕はああいう10万部級のものを作るという意思はないんだ。もちろん売れたら嬉しいけど、瞬間最大風速に興味はない。
プラットフォームが消えても言葉とコミュニティは残る
宇野 家入一真が今後、どうするのかを聞いてみたい。家入さんは、どこかのタイミングで「インターネットはお金に結びつかなければ脆弱だ」と思ったはずなんだよね。
家入 うーん。
宇野 インターネットって人間の意識を結ぶだけのもの。でも、家入りさんは、先に意識が結ばれて、お金が結ばれていないことに対して違和感を覚えていたんじゃないかな。お金がつながらないと自分の信じるインターネットは実現できないと思ってやっていたはずなんだよね。
家入 たしかに。僕は「お金をなめらかに」という言い方をよくするんだけど、「なめらか」ってどういうことかを考えると、たとえば、困ってる誰かを助けるとき、あるいは誰かの「やりたい」という気持ちを応援したいとき、銀行振込でお金を送ると手数料がかかりますよね。10円送るのに300円かかったら意味がないし、遠くに住んでいると手渡しも難しい。
僕には「お金は質量を失った瞬間、コミュニケーションとともに流れる世界になっていく」という思想があるんです。それが「お金をなめらかに」って話なんですね。クラウドファウンディングもそうだし、それをもう少し先鋭化したアプリ「polca」だったり。挨拶くらいの感じでお金が飛び交う世界をどう作るか。それが思想としてあるんですよ。
ただ、僕らが企業体としてそれを提供する以上、なにかしらのマネタイズが発生せざるを得ない。もちろん従来より全然安い手数料でやれるんだけど、そのためにもっと大きな経済圏を描かなくてはならないというジレンマもある。
コインチェックの事件でブームは落ち着きつつあるけど、ブロックチェーン、ビットコインなどの仮想通貨が本質的に実現しようとしていたのは、プラットフォームを解体する動きなんですね。
どういうことかというと、クラウドファウンディングひとつとってもそうで、たとえば宇野さんがこういうことやりたいって言ったとき、CAMPFIREを介して手数料を取る必要なんてないわけですよ。
宇野さんを応援したい人たちが直接、宇野さんとつながって、宇野さんの試みを応援する。あるいはまだつながってはいないけれど、試みが伝播して「面白いから自分も支援してみたい」と、個人と個人が直接つながってお金が行き交う世界ができれば、プラットフォームなんて必要ないんです。
メルカリだってそうですよね。「こういうものが欲しい」って人と「こういうものを売りたい」って人がいるなら、プラットフォームを介さず直接つながり合えばいい。
その実現は、たぶんもうちょい先だと思うんですが、プラットフォームがいまだに存在するということは、まだまだ旧態然とした古臭い状況にあるということは事実なんです。本質的には、僕らみたいな存在が消え去ることが一番いいんだと思う。
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箕輪さんは台風みたいに風速で色々巻き込んで爪痕を残すけど、宇野さんは雷みたいに強く迸って爪痕を残すイメージ。
役割というか、在り方が違うのだろうと思った。、