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統計学者・鳥越規央インタビュー(後編)「ゲームデザインはポピュリズムとどう向き合うか――スポーツからAKBまで」(PLANETSアーカイブス)
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統計学者・鳥越規央インタビュー(後編)「ゲームデザインはポピュリズムとどう向き合うか――スポーツからAKBまで」(PLANETSアーカイブス)

2019-05-24 07:00
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今朝のPLANETSアーカイブスは、日本における「セイバーメトリクス」の第一人者、統計学者・鳥越規央さんへのインタビュー後編をお届けします。前編ではセイバーメトリクスの日本ローカライズ事情について語ってもらいましたが、今回はセイバーメトリクス的な思想を応用した先にある、普遍的な「ゲームデザイン」とマスメディア的公共性の関係について聞きました。
※前編はこちらのリンクから。
※この記事は2051年2月17日に配信された記事の再配信です
■ゲームデザインはポピュリズムとどう向き合うか

宇野 鳥越さんは48グループのペナントレースの設計にも関わられていますよね。セイバーメトリクスの歴史は、可視化できない、しにくいものをどんどん可視化、数値化していったことでその射程距離を伸ばして来た歴史だと思うのですが、ああいった主観的な評価がからむ演技や表現を評価するというのは、まだまだ難しいんでしょうか。

鳥越 誰もが納得できる採点基準を作れるかという意味で大変難しいと言わざるを得ない。いい例がフィギュアスケートでしょう。昨年のソチオリンピックのフリーで浅田真央は6種類8回の3回転ジャンプを飛び、ファンのみならず世界のフィギュア関係者からも絶賛を受けたのですが、そんな彼女でも技術点は全体の2位。そのからくりはGOE(Grade of Execution)という各演技要素に対して、その技がきれいに決まったかどうかを審査員がプラス3からマイナス3までの幅で加減点するポイントにあります。技術点は基礎点とGOEで構成されていまして、難しい技を組み込めば基礎点は上がります。浅田の基礎点は全選手の中で最も高く、次に高い選手よりも5点以上差がついていました。ご存知のとおり、浅田はフリーをノーミスで演技を終えました。しかし浅田の12個ある演技要素に対するGOEでプラス1を超える評価は2つしかありませんでした。それに対し技術点1位の選手のGOEは11個。過去5人しか成功させたことないトリプルアクセルに果敢にチャレンジし、結果成功させても「それきれいじゃない」と判断されたら高得点が期待できないシステムなんです。このGOEがプラスに評価される基準ですが、正直ガイドラインには抽象的な表現が多く客観性があるとは言いづらい。
 さらに言えば、演技構成点(いわゆる芸術点)に関してはもう何が何やらです。だって選手ですらどうすれば高得点になるかわかってないようですし。

 先程宇野さんもおっしゃったように、私はAKB48グループのペナントレースの設計に携わりまして、AKBに関してどんなものが数値化できるかということに関して運営のみなさんと議論を重ねてきました。残念ながら諸事情があってペナントは中止となってしまいましたが、私の中ではAKBに限らず、アイドルを評価するための基準を作るために必要なデータって何だろうってことを常々考えていました。そこで提案なのですが、『朝までオタ討論!』で論客の皆さんに自分の知っている色んなデータを挙げてもらい、それについて議論してみたいと思っていまして。
 いま、『クイズいいセン行きまSHOW!』っていうボードゲームが巷で来ているらしいんですが、これはまず――例えば「48グループの卒業適正年齢は何歳?」っていうお題を出したとします。それに対して5人、もしくは7人の回答者に答えてもらい、その中央値をそのお題の適正とするという遊びです。
 平均値だと、各人のポイントにものすごく格差がある場合、その極端な数値に引っ張られるという特性があるので、感覚的にどうかな?と思うものが出てしまう場合があります。でも中央値ってそういうことが起きにくいので、この方が「代表値」として我々にしっくりくる値になることがあるんです。で、ゲームとしては、その中央値を出した人に100ポイントを与え、最大値と最小値の人はマイナス50ポイント。これをいろんなお題で何回か繰り返していって、ポイントが最も多い方がAKBマイスターの称号を得られるというルールにしてみる。そんな感じで「AKB48グループに関する事象の数値化」というのを、ゲーム性を織り込んで議論してみると面白いんじゃないかと思っています。

宇野 情報技術の発展が生んだものの一つとして、コミュニケーションや「空気」といったこれまで数値化できなかったものの数値化が可能になったことが挙げられると思うんです。たとえばFacebookの「いいね!」数やTwitterのリツイート数だったり、トラフィック数だったりと色んなものが数値化されている。ああいった情報化以降に新しく生まれた数値を使うのも、セイバーメトリクス的な思想の延長線上の可能性としてあるんじゃないかと思うんです。

鳥越 いわゆる「テキストマイニング」というものですね。Twitterとかウェブ上に流布してる大量のテキストデータから、情報を取り出していくわけですよね。ただ問題は、取り出した情報が、人気や実力にどれだけ寄与するものかを判断する術をどうするかってことですよね。天気予報を例に挙げれば、昔は気圧や風の変化といった地上で取れるデータで行っていたものが、今は衛星からの画像だったり、上空の気温だったりとさまざまなデータから推測していくわけです。テクノロジーが増えるごとに見るべきデータも増えていって、より予測性能が上がっていく。だから、どういうテクノロジーを開発すればより精度が高くなるのかを考えていかないといけない。

宇野 この議論でいちばん出てきやすいのって、選挙制度だと思うんですよね。データをどう活用すれば、より民意に近いものを選挙結果に反映させることができるのか。でも、選挙制度を考えるときにこういったアプローチってあんまり聞かないですが、これはなぜなんでしょうか?

鳥越 だって民意を反映させることによって、政権与党が不利になるような制度にしないでしょう(笑)。ドント式(日本の比例代表選挙で用いられている議席配分の方式)ですら大政党に有利なゲームデザインですし。

宇野 つまり、民意を反映させようと思ったらもっと公平性のあるゲームデザインが可能なんだけど、それだと政権与党にとって不都合になりかねないという問題が大きいということですか。

鳥越 いちばん良いのは、比例代表で自民党が18%取ったら、100議席の18%だから18議席を配分する、とやれば簡単ですけど、おそらくそれでは最大政党に不利ですよね。少数政党でも議席が獲得しやすくなりますし、今のように選挙のタイミングでの趨勢で議席が大きく動くようなことにはなりにくいですから。

宇野 つまり今のやり方は、おそらくプレイヤーの側の充実感や納得感を優先して、現実的なフェアネスを犠牲にしているような仕組みになっている、と。

鳥越 あとゲームデザインを考える上で、テレビの存在は非常に大きい。たとえば今年度のJリーグがまた2ステージ制に変わることになって、ファンの多くは「それはゲームデザインとして悪すぎるんじゃないか」と大反対している。でもJリーグ側が2ステージ制にこだわったのは、結局プロ野球のクライマックスシリーズが興行的に大成功しているからですね。

――クライマックスシリーズは12球団のうち6チームが出場できて、リーグ戦の3位でも日本一になれるという明らかにダメなゲームデザインですけど、興行としては上手くいっていますよね。

鳥越 そう、Jリーグも2ステージ制にすれば、「チャンピオンシップ」でお客さんをたくさん集められるし、テレビの放映権料もしっかり入ってくる。リーグ戦だけだとどの試合で優勝が決まるかわからないけど、チャンピオンシップがあればそこで優勝が決まるので、テレビ的な注目を集めやすいわけです。
 テレビを意識するという意味では野球やサッカーだけでなく他の競技も同じ問題に直面していて、たとえば今のバレーボールは実はあんまり良いデザインではないんです。バレーボールってサーブを受ける側のほうが点数を取りやすい。だから昔はサーブ権を持っているチームがラリーに勝ったら一点というルール(=サイドアウト制)だったんですが、そうなると試合時間が4時間とかかかってテレビサイズに合わなくなってしまう。だから今のようにラリーポイント制(サーブ権の有無に関わらず、ラリーに勝ったチームに点数が入る)になったんです。
 でもそうなると、24対21ぐらいになった時に勝っているチームがサーブ権を持っていると、わざとサーブを外して24対22にしてからサーブを受けたほうが先に25点を取れる確率が高くなる。実際にラリーポイント制になった当初はそれをやっているチームが多かったですね。本当はサーブ側と受ける側で得点の重み付けを変えたりできたらいいんですが、そうなると別の問題も出てくるし、何よりわかりづらいルールになるでしょう。
 

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すっごい未来からの記事。
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