大友啓史監督『プラチナデータ』
原作/東野圭吾 監督/大友啓史
出演/二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美、生瀬勝久、杏、水原希子
政府が水面下で収集した国民のDNAデータ「プラチナデータ」をもとに犯罪捜査が行われ、検挙率が大幅に上昇した2017年。科学者の神楽は、DNA捜査の専門家として警察庁の特殊捜査機関「特殊解析研究所」に所属していた。そんなある日、DNA捜査のシステム開発者の殺害事件が発生。現場から神楽のDNAデータが検出される。身に覚えのない神楽は逃亡し、ベテラン刑事の浅間が神楽を追跡するが……。
☆☆☆☆☆ 今の日本映画のアベレージそのもの
【森直人:5点】
DNA万能主義を起点とした陰謀と破綻というテーマ設定自体に今更感がありすぎて(97年の傑作『ガタカ』で充分ではないか?)、その説明を多く背負う鈴木保奈美(科学者役)の後半の熱演がしんどかったが、全体としてはそこそこ手堅く楽しめた。大友啓史の演出はテレビドラマで培ったリアリズム路線で、良くも悪くも『るろうに剣心』のような意外性はない。東野圭吾の人気原作、ジャニーズ+シブ系のキャストなど、出来も含めて今の日本映画のアベレージそのものといった印象。
☆☆☆☆☆ 特段に悪いところはないが、良いところもない
【松谷創一郎:5点】
特段に悪いところはないが、良いところもないタイプの作品だ。原作のDNAによる管理社会といったテーマの古さをまるでバージョンアップできていない。さらに二宮和也には、天才科学者という設定はまるでフィットしておらず、鈴木保奈美の存在も無駄に目立っている。チェイスシーンなど大友啓史独特の妙も見られるが、いまいちポイントが不鮮明。卒なくまとまっているがゆえに、5年後には忘れられる作品だ。尺も134分と無駄に長い。
☆☆☆☆☆ アクションとドラマの壁
☆
【那須千里:6点】
大友監督が前作『るろうに剣心』で見せた華やかなアクションが、本作では臨場感のあるダイナミックな逃走シーンに受け継がれており、存在を脅かされた者の危機を描く作品全体の象徴となっている。一方でSFの要素を持つストーリーや二宮演じる天才科学者のキャラ設定とお芝居はやや現実離れした漫画的なものであり、その世界観と生々しい逃亡劇におけるリアリティの軸が噛み合っていないように思う。ジャンルものとして処理できない「アクション」と「ドラマ」の間にある壁を感じる。
▼上映中!『プラチナ・データ』公式サイト
http://www.platinadata.jp
▼執筆者プロフィール
森直人
1971年生まれ。映画評論家、ライター。
著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)など。
http://morinao.blog.so-net.ne.jp
松谷創一郎
1974年生まれ。ライター、リサーチャー。
著書に『ギャルと不思議ちゃん論 女の子たちの三十年戦争』(原書房)など。
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH
https://twitter.com/TRiCKPuSH
那須千里
映画文筆業。
「クイック・ジャパン」(太田出版)、「キネマ旬報」等の雑誌にて執筆。