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香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。桜の季節を迎える香港でも、新型コロナウイルスとの戦いは続いています。そんななか周さんは、WHOの対応に関して疑問を呈します。(翻訳:伯川星矢)

周庭 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第34回 桜咲く香港と、新型コロナウイルスとの戦い

春。桜の季節。

今年はゆっくり花見ができない年になってしまいました。皆さんも私も、今回の新型コロナウイルスの流行で焦燥と不安に満ちていることでしょう。香港と日本は同じく、いろいろな業種がこのウイルスの影響によって休業に追い込まれ、学校も休校になっています。無症状の感染者も存在するとされており、自分も実は感染者ではないかと、街の人々が怯えています。

私もよくこう聞かれます、「怖いか?」と。それはもちろん怖いです。

なぜなら、多くの国々で証明されてしまったとおり、若いから安全ということは一切ありません。ウイルスに感染した若者で、重症化した例もたくさんあります。たとえば海外では、重症化したスポーツ選手もいました。もちろん免疫力を高めることは重要ですが、感染力が極めて強く、詳細が解明されていないこの未知のウイルスの前では、誰もが感染者になりえます。今はただ人との接触を減らし、清潔を保ち、消毒をする以外に打つ手はないです。このウイルスの前では、人間は誰もが脆く弱い存在なのです。

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▲最近は、仲間たちとYouTubeの撮影も行っています。


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この武漢に端を発したウイルスの流行で、この世の多くの不条理をみることになりました。WHOがその例の一つです。WHOはもはやWinnie Happiness Organization(プーさんと愉快な仲間たち)になったようです。WHOは要所要所で中国を守る発言をし、中国の利益が世界中の健康と安全よりも優先されたかにも見えました。中国が感染発生初期にそれを隠蔽したことによって世界に拡散した可能性が高いことを責めることなく、国内で爆発的感染が起き多くの死者が出た時でも、WHOはこれをパンデミックと認めず、結果として多くの一般の人たちや他国政府の警戒・対策遅れへとつながりました。

台湾がWHOに加わるべきかについても、WHOは最悪な態度を取りました。少し前に香港の公営メディアがWHOのブルース・アイルワード事務局長補佐にインタビューし、再び台湾のWHO加入を考慮するかについて質問したことがありました。アイルワード氏は困って慌てるかと思いましたか? いえ、それ以上ひどいことになったのです。彼は、通信状況が悪いから音声が聞こえないと言い出しました。記者は質問を繰り返してもいいかと尋ねましたが、彼はそれを拒否し、次の質問をするよう要望しました。そして、台湾の状況がとても気になっているとその記者が発言したあと、なんとアイルワード氏との電話が切れてしまったのです。

WHOの代表たるものが記者の電話を勝手に切ってしまうのでしょうか? 記者はすぐに電話をかけなおし、台湾のウイルス対策に対する評価を聞こうとしましたが、「私はすでに中国の状況を説明しました。中国国内の様々な地域を観察し、とてもうまく対処したと思います。」と質問を回避しました。そう、WHOは中国の機嫌を損なわないよう、「台湾」の二文字すら口に出さないのです。事実上、台湾のウイルス対策は世界トップクラスで成功しているように見えます。今日に至っても感染者・死亡者ともに低い水準で収まり、市民は普段通り生活しています。先日台湾の方のFacebookでこのような話をみました。投稿者の友人は台湾の衛生部に勤めていて、その友人になぜ台湾がそれほど早い対応ができたのかを尋ねてみたそうです。友人の方はこう言ったそうです、「17年前(2003年のSARS時)、台湾は世界から仲間外れにされた。だから台湾人はいつ来るかわからない大疫病にずっと備えてきた。なぜなら私たちは知っている、自分しか頼りにならないことを」。

WHOは、中国に対する態度だけではなく、マスクをつけるべきかの判断も二転三転していて、自らの発言と行動が世界中の人類の健闘と命に影響していることを全く自覚していないようです。当初はマスク不要と言い、感染症予防に有効なデータはないと発表した。しかしその後は香港の経験でマスクの必要性を感じたとコメントしました。たしかに、マスクをつける点ではアジア圏と欧米圏の国家で、見解の相違があるのかもしれません。たとえば香港の専門家はマスクの着用を推奨していきましたが、欧米圏の専門家はマスクをつける方が、リスクが高まるとの見解を出した方もいます。でも今となれば、マスクの着用を義務化する国々も増えています。

世界規模に起こっている理不尽の前で、私たちにできることはただ自分をしっかり守ることだけです。だから日本のみなさんは可能な限り外出を減らし、感染リスクを最低限にしてください。香港では在宅する人が増え、任天堂Switchが売り切れになってしまい、私も入手できていません(笑)。毎日家から出られなくて苦しんでいる人もいますが、でも病気にかかった苦痛を想像してみると、その「外出欲」を抑えられるかもしれません。この辛い日々を耐え切れるよう、みなさんも頑張ってください。

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▲最近のデモの様子。警察官の数が非常に多いです。

▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。

『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。

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