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中華圏ゲームの発展史:2000〜2010年代前半編(後編)|古市雅子・峰岸宏行
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中華圏ゲームの発展史:2000〜2010年代前半編(後編)|古市雅子・峰岸宏行

2022-02-25 07:00
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    北京大学助教授の古市雅子さん、中国でゲーム・アニメ関連のコンテンツビジネスに10年以上携わる峰岸宏行さんのコンビによる連載「中国オタク文化史研究」の第11回(後編)。
    2010年代、日本風アニメ系MMORPGの誕生を皮切りに中国ゲーム市場が爆発的に拡大するきっかけを分析します。ネット環境や輸入制度の整備などが進んだ結果、巨大な消費者層として認知された「オタク」たちがゲーム市場に組み込まれていく過程を辿っていきます。
    前編こちら

    古市雅子・峰岸宏行 中国オタク文化史研究
    第11回 中華圏ゲームの発展史:2000〜2010年代前半編(後編)

    オタクがギーク主力の国産ゲームビジネスに組み込まれるまで

     オタクは当初、中国のゲーム市場ではほとんど注目されないユーザー層でした。あくまで、ネットカフェで遊ぶギークたちが主力であり、より課金もしていました。また、オタク層は国産ゲームにはあまり興味がなく、あったとしても、『剣網参』のようなBL色の強い、仲間がみんな遊んでいる作品にしか手を出さなかったので、二つの層が互いに交わることはほとんどありませんでした。

     オタク層は数字に表れることは少なく、イベントに人がたくさん来ようが、あるいは開発会社にオタクが数人いようが、あくまでも小規模なサブカルのファン、という認識でした。
     2013年は中国においてゲーム産業のシンギュラリティが起こった年と言えます。今、日本人が親しんでいる中国ゲームが登場するために必要な要素は、ほとんど2013年に起こります。

     ビジネスの大きな流れは、市場、企業、政策に影響されます。
     2000年インターネットの登場以降、ゲーム業界を含めた中国の各産業は非常に速いスピードで展開、変化しました。ゲーム業界がオタク層に目を向け始めた背景として、当時のゲーム市場がクライアントゲーム、ブラウザゲーム、携帯アプリゲームの3種類に分かれていたことを知る必要があります。

     PCで遊ぶゲームには、インターネットの接続を必要とするものとしないものの2つがありました。そして通信プレイも、身近な範囲で接続するローカル通信と、何千キロも離れた人と通信できるインターネット通信の2つがあります。
     1990年代から発展した中国のゲーム界隈では、インターネットが普及する2000年前までは、ローカル通信が主流でした。例えば『Counter Strike』や『Age of Empire』など、ゲーム機を持ち寄り、比較的近い距離の仲間とプレイする、という形です。これはゲームソフトやデータなどを、PCにインストール、保存してプレイします。別のPCでは保存されたデータは使用できませんが、ローカル通信で完結していました。

     これが発展したのが、クライアントゲームと呼ばれるものです。PCにクライアントというゲーム起動ソフトをインストールし、ゲーム会社が運営するゲームサーバーに接続してゲームをプレイする、という形式で、それによって、多人数が同時に同じサーバーに接続し、同じ場所でプレイすることを可能にしました。これがMMORPG、大規模多人数同時参加型オンラインRPGと言われるものです。こちらはPCに一定のゲームデータを保存しますが、ゲームの進捗や所有状況をゲーム会社所有のサーバーに保存するため、友人のPCでも、自分のアカウントでログインさえすれば、自分のゲーム進捗を呼び出すことが可能です。

     この、「サーバーにゲームの進捗が保存」されることによって、中国のゲーム市場は大きく変化しました。海賊版ゲームの販売を大きく抑制することに成功し、中国のゲーム市場のマネタイズ化に大きく寄与したのです。
     それまで、CD、DVD、BDのような物理的なメディアでソフトとして販売されているゲームは、一度データさえ手に入れば、遊ぶことができました。しかし、MMORPGでは、ソフトを通してサーバーに接続しなければプレイすることができないため、正式なルートでゲームを購入するか、あるいはサブスクリプションしなければ、サーバーにアクセスすることができません。何らかの方法でデータメディアを入手するだけではプレイできず、きちんと運営するゲーム会社に正規にお金を支払わなければならないのです。

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    ▲夢幻西遊のログイン画面。IDとパスワードを入力してゲーム会社が運営するゲームサーバーにログインすることで始めてゲームをプレイできるため、海賊版問題が解決された。

     これは、単体ゲームをいくら作っても海賊版で販売され、収益化に悩む中華圏のゲーム会社に福音をもたらしました。台湾や大陸で制作された質の高いゲーム作品について安心してビジネスを構築できるようになったのは、サーバーとの連携が必要で、ソフトを複製するだけではプレイできないMMORPGのようなゲームが登場してからといえるかもしれません。
     2000年以降、インターネットの普及とともに、持続的にビジネスになるクライアントゲームを多く作るようになり、CD媒体を購入して一人あるいはローカル通信で多人数でプレイするスタイルから、MMORPGが主流となっていきました。


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    最終更新日:2024-11-13 07:00
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