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「プリクラ」「電車でGO!」「音ゲー」ブームは何を変えたか
――“最後の都市文化”としてのストリートカルチャーとゲーセンの交錯
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.10.23 vol.185
今日のほぼ惑は、大好評の中川大地さんによるゲーム史連載。今回は1990年代後半に流行した「プリクラ」「電車でGO!」「音ゲー」通じて、ゲームセンターとそこをめぐる社会的状況を解説します。
「中川大地の現代ゲーム全史」前回までの連載はこちらから
第8章 世紀末ゲームのカンブリア爆発/「次世代」機競争とライトコンテンツ化の諸相
1990年代後半:〈仮想現実の時代〉盛期(3)
■ストリート文化の変容の中のゲームセンター
家庭用ゲーム機でのプレイステーションの登場によるゲームのライトコンテンツ化と同じ傾向の変化は、アーケードゲームの領域においても進行していく。もともと1985年の風営法改正以降のゲームセンターは、営業時間の短縮と家庭用ゲーム機の伸長によって緩やかに市場規模を縮小しつつ、女性ターゲットやカップル層に訴求する愛らしいぬいぐるみなど提供してクレーンゲームのスタイルを一新した「UFOキャッチャー」の登場などを機に、徐々にカジュアル化していく流れにあった。
1990年代前半に一世を風靡した対戦格闘ブームは、そんな長期的傾向の中で、久々にゲーマーらしいゲーマーたちが集って腕前を競い合う濃密なゲーセン文化の一時的な再興としてあったわけだが、90年代後半時点では社会現象的なムーブメントとしての全体性はほぼ拡散している。『ストII』『バーチャ』の二大シリーズがマイナーチェンジを重ねて一定の人気を維持しつつ、『THE KING OF FIGHTERS』(SNK)や『ヴァンパイア』(カプコン)といった追随シリーズ群によって多様化が進み、ちょうどシューティングゲームとならぶマニアックな愛好家向けジャンルとしてのニッチ化の段階に入りつつあったと言える。
対して、この時代のゲーセン空間の変貌を最も端的に示す風景となったのが、1995年の「プリント倶楽部」(アトラス)の登場だろう。証明写真撮影機のようにユーザーが自分の姿を撮影し、そこに様々なフレームやデコレーションを加えた小さなシール状の紙焼きを提供するプリントシール機は、追随した他社の製品も含めて「プリクラ」と略称され、女子中高生を中心に口コミで爆発的な人気を獲得。友達や恋人と一緒に撮ったプリクラシールを交換・収集し、「プリクラ帳」にストックしたり身の周りの小物のデコレーションに用いるといった特異なコミュニケーションカルチャーが発達していくことになる。
おりしも同時代的のコミュニケーション環境としては、ポケベルからPHSや携帯電話への移行期にあたり、それにまつわる若者たちの独自の符牒や装飾術などが話題を呼んでいたおりにあたる。加えて、ルーズソックスやガングロといったファッションアイコンで識別される「コギャル」の席巻や、ブルセラ・援助交際の社会問題化など、女子中高生たちが大人たちの理解を超越した都市風俗の主役として認知されていく大きな動きが、プリクラ流行の背景になっていたと言える。
こうしてUFOキャッチャーとプリクラが、女子主導のカジュアル層に向けてゲーセンの入口近くを占めるようになる一方で、その少し奥側のスペースに男性サラリーマン客などを集めていたのが、『電車でGO!』(タイトー 1996年)であった。その名の通りリアリスティックな列車運転シミュレーターとして登場したVR的な志向は、ちょうど実在の自動車の運転感覚の再現を目指したプレステの『グランツーリスモ』の方向性に近い。
▲タイトー『電車でGO!』
ただしカーレースのような非日常ではなく、駅間を運行する列車の発車や停止といった日常から半歩だけズレた状況を運転士となって疑似体験する点にゲームとしての価値を見出した点が、本作の際立った特徴だ。コアな鉄道マニアによる支持も強かったものの、『電車でGO!』は総じて普段あまりゲームをプレイしない層にも訴求するヒットに成長し、実在の乗り物や職業のシミュレーターゲームの登場も相次ぐ。
これは従来からのゲーマー層に受けるシューティングや対戦格闘といったジャンルが、マニア化するにしたがって、SF的・ファンタジー的な物語性やキャラクターデザインの意匠性を強めていったのと、まったく対照的な変化であった。
続いて、さらに大きくゲームセンターの空間性を変えていったのが、『beatmania(ビーマニ)』(コナミ 1997年)や『DANCE DANCE REVOLUTION(DDR)』(コナミ 1998年)の登場によって起こった「音ゲー」ブームの到来であろう
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最終更新日:2024-11-13 07:00
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