■オープニングトーク
宇野 時刻は午後11時30分を回りました。皆さんこんばんは、宇野常寛です。今日は冒頭から、友情について考えてみたいと思います。仕事柄、僕にはアナウンサーの友人が何人かいるんです。いろいろあってNHKを辞めたやつとか、現役でフジテレビに勤めている人とか、何人かいらっしゃいますけど。今日これから話すのは、仮に某放送局のYさんとしておきましょう。彼がどの局でどんな番組をやっているか、僕には全くわからなくて、風の噂では、毎週月曜日から木曜日に漫画とかアニメとかゲームとかが好きな若者向けの放送をやっているらしい、ってそんなことを聞いたことがなきにしもあらずなんですけどね。諸般の事情で、僕はその番組はここ何ヶ月のあいだ全く聞けていないんです。特に月曜日は全然聞けてないんですよね。そんな某Yさんと僕は、プライベートで仲が良いんですよ。彼の方が3つ上なんですけど、歳が近くて、同じくアニメファン兼アイドルオタクで、すごく話が合うんですよ。僕がいま作っている雑誌、「PLANETS」の最新号のオリンピック特集にも参加してもらっています。
それで、先週かな? アナーキー・ミュージックシェアっていうコーナーをこの番組でやっているじゃないですか。リスナーの皆さんから寄せられたアナーキーな選曲に、全力でJ-WAVEスタッフが答えますっていうコーナーですよね。そこで、ある80年代のアニメの主題歌のリクエストがあったんですよ。僕は、これが来たか! と思って、かけようとしたんですけど、残念ながら僕の手元に音源がなかったんですよ。で、J-WAVEのライブラリーにもないんです。なので僕は、知り合いのツテで探したんですよ。「この音源持ってない?」ってメールとかLINEとか手当り次第に打ったんですけど、誰も持っていないんです。これはどうしたもんかな、って途方に暮れたとき、一人だけ持っていそうな男の顔が浮かんだんですよ。浮かんだんだけど、さすがにこいつはまずいだろうと、ちょっと思ったんですよね。やっぱり大人の事情っていうものがあるじゃないですか。っていうか、さすがに”真裏”だし、どうなんだろうとか思ったんだけど、ちょっと聞くだけ聞いてみようと思って、LINEで「よっぴー」という文字列を探して、すかさず連絡したんです。「~の音源持ってない?」ってきいたら、すぐに既読がついて即レスで「あー、懐かしいですね! でも、個人的には持っていません」と返信が来るんです。それで、さすがのアイツも持っていなかったか……って、落胆すると同時にちょっとホッとしたんです。で、そこからですよ。すかさずLINEで続きが来て「ニッポン放送のライブラリーにあるかもしれないですが、用途はなんですか?」……沈黙ですね。さすがに沈黙しましたね。一瞬、悪い考えが頭をよぎったんですよ。黙って音源を借りて放送したら、いったいどうなってしまうんだろうとかね。むしろ、僕がそうすることによって、彼を体制の楔から解き放つことができるんじゃないか、とかね。いろんなことが頭によぎったんですけど(笑)。僕は友情とは何かということを、この瞬間にすごく考えたんです。で、数秒考えた結果、僕は正直に話しました。さすがに、僕のせいでクビになったりしたら、本当に申し訳ないのでね。と、ういうことで、さすがにお互い最後の一線を踏み越えることなく、その夜は別の曲がアナーキー・ミュージックシェアでかかったわけですが、私宇野常寛とニッポン放送吉田尚記アナウンサー(よっぴー)はズッ友です! それではJ-WAVE「THE HANGOUT」、裏番組に負けずに今夜もスタートです。
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宇野 J-WAVE深夜の溜まり場「THE HANGOUT」。月曜担当ナビゲーターの宇野常寛です。まさかお互い、裏番組になるとまでは思っていなかったわけですよ。狭い業界なんで、こんな日も来るかなって予感はどこかにありましたけど、もうね、僕の裏番組の友達は荻上チキだけじゃないんですよ。僕らなりに、周りの仕事仲間たちに義理っていうものあってね、すごく僕らなりに考えて、世界には”H”も”M”もなくなる日があって――具体的には金曜日ですね――この日だけは、僕らはすべてのしがらみから解放されるということで、この前の金曜日に、宇野&吉田で、ぶっ通しでニコ生やったんですよ。3時間くらい。2014年サブカルチャー総括と題して、はじめは90分の予定だったんですけど、僕もよっぴーも超おしゃべりなんで、3時間ぶっ通しで夜11時半から2時半くらいまで、ずーっとしゃべっていましたね。もう、二人ともしゃべりだしたら本当に止まらないんですよ。ネットにあがっているんで、気になる人はぜひ見てほしいですね。
こんな感じで、よっぴーと僕はよくコンビ的な感じでやっているんですけど、思い出すのがちょうど去年の今くらいですね。高田馬場のカフェを貸しきって、うちの雑誌「PLANETS」の年末イベントをやったんですよ。その時も、彼は普通にお客さんとして来ていて、いつの間にか登壇していて、なし崩し的な感じで登壇するだけだったらその場のノリですけど、結局その後の打ち上げとかも来ていましたからね。カラオケで僕と二人でアニソンデュエットとかしてました。
はい、ということで、この番組は夜更かし族の皆さんの溜り場です。ツッコミや質問も大歓迎。みなさんの積極的番組参加をお待ちしております。ハッシュタグは#hang813です。メールの方はこの番組のメッセージボタンから送信してください。YouTube Liveではスタジオの様子を同時生配信中です。と、いうわけで。宇野常寛がナビゲートJ-WAVE「THE HANGOUT」。
今夜の一曲目は、まさに昨年の年末イベントの打ち上げで、僕と吉田尚記アナウンサーがデュエットをかましたこの曲をお聴きください。トッシュで、「ヤットデタマンの歌」。
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■フリートーク
宇野 ということで、お送りしましたのはトッシュで「ヤットデタマンの歌」でした。この曲は男性二人のボーカルの歌なんですけど、僕とヨッピーアナウンサーでね、パートを分けて完璧に歌い分けることにチャレンジしたんですよね。懐かしい思い出です。はい! 改めましてこんばんは。J-WAVE深夜の溜まり場「THE HANGOUT」。月曜担当の宇野常寛です。
Twitterひろっていきましょうかね、これはTwitterネーム、ねくすまんさん。
「ヤットデタマンの曲めちゃめちゃかっこいい! ベースラインがパネェ」
この曲って、音楽に詳しい人が聞くとみんなベースがいいって、そう言う曲なんですよね。続きましてTwitterネーム、まくらうどさん。
「オタスケマンの次はヤットデタマンだと知ったときには、ネタ切れで苦しいネーミングだなと思ったんだけれど……」
なるほどね。「ヤットデタマン」は、「ヤッターマン」とかの「タイムボカンシリーズ」のわりと後半に出て来た作品で、それまではかっこいい系の巨大ロボットが出てきたりとか、男女が両方とも変身していたんだけど、「ヤットデタマン」からは一人になったりとか、わりとシリーズの新機軸を入れてきた作品だったりするんですよね。
はい、引き続き、Twitterのハッシュタグは#hang813です。メールの方は番組HPのメッセージボタンから送ってください。このあと、11時55分頃からは、南沢奈央ちゃんのNIPPON SEKIJUJISHA “GAKUKEN” The Reason Whyのお時間が待ったます。そしてJ-WAVE「THE HANGOUT」各曜日のナビゲーターが毎週共通のテーマを語るシェア・ザ・ミッションのコーナー。今週はクリスマスについて語ります。そして、アナーキー・ミュージックシェアのコーナー、いろいろ問題を起こしそうなコーナーなんですけど、J-WAVEの他の番組では絶対かからないであろうというアニメソング、特撮ソング、アイドルソング、映画やドラマの主題歌や劇伴などなど、アナーキーな一曲をリスナーの皆さんの選曲でお届けしちゃいましょうというコーナーです。メールのほう、まだまだ受け付けております。使用する音源はきわめて正当な手続きを経て入手したものをかけます。宇野常寛が深夜1時までお送りいたします。深夜の溜り場「THE HANGOUT」、ここで一旦お知らせです。
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宇野 J-WAVE深夜の溜り場「THE HANGOUT」六本木ヒルズ33階J-WAVE、Bスタジオから生放送。月曜日は宇野常寛がお届けしております。今夜もメールたくさん頂いております。ラジオネーム、ちよこさん。
「宇野さんこんばんは! いつも楽しくラジオ聴いています。ところで、そろそろクリスマスですね。私はクリスマスなど、いかにも楽しげなイベントが少し怖いんです。というのも、そのイベントに向けて、両親など親しい人々が、人を喜ばせようと、ケーキやプレゼントなどを楽しそうに用意しているのを見ると、自分も楽しい気持ちになったりはするのですが、それ以上に、何かの手違いでケーキを予約し損なっていたりですとか、プレゼントが届かないなどというアクシデントに見舞われて、楽しいはずのイベントが一転、気まずいものになってしまわないかと不安になってしまうからです。なんというか、いかにも楽しそうな様子が、この先訪れる不幸の伏線のように見えてしまう時があります。宇野さんはこういうことはありませんか? 妙にひねているなと思いながらも、楽しいイベントごとの前はいつも少し緊張してしまう私です」
これ、結構ネガティブシンキングな方ですね。僕は、なんというか、かりにアクシデントがあったら、アクシデントを逆手に取って面白いことにするっていうのが正解だと思うんですよね。結局、世の中って何が起こるかわからないじゃないですか。そして、あらゆる状況って、利用していくしかないんですよね。ケーキを予約するのを忘れたら、そのことを面白おかしいズッコケ話モードにもっていけるかどうかっていうのが、わりとエンタメ力みたいなものだったりすると思うんです。なので、ちよこさんは、むしろ不幸なことがあると、それはコント的においしいみたいなふうにシンキングしていくことによって解決してください。それがたぶん正解です。僕が保証します。
はい、続きまして、ラジオネームはじめさん。
「宇野さんに質問があります。メディアでは景気が回復傾向にあると言われ、アベノミクスの効果がこれから地方に広がるといわれています」……こんな質問僕にするな(笑)!
「金融緩和により、円安となり、輸出に関連のある大企業の業績が回復する期待から、株価が上昇する。しかし、これはただの数字の話で、内需も増えず、雇用も回復しません。中小企業まで景気回復していくとは思えません。しかも、輸出先にとって日本の製品が割高となれば、外需も下がるかもしれません。実際は増税と円安による物価上昇で生活はどんどん厳しくなり、GDPも下がってきています。アベノミクスとは何を目指して、どうなることがゴールなのでしょうか。テレビやネットのニュースくらいの情報では理解できない部分が大きいので解説していただけると嬉しいです」
というか僕は経済学者ではないので全く解説できませんが(笑)、このメールのポイントは最後の一行ですね。「テレビやネットのニュースくらいの情報では理解できない部分が大きい」これってつまり、世の中って複雑かつ大きくなりすぎていて、マスメディアで簡単に噛み砕いたニュースとか、仕組みの解説を受けるだけでは、自分が世の中と繋がっている感覚が持てないってことだと思うんですよ。税政だったり法改正だったり、マクロなレベルでのシステムやバランス調整っていうものが、自分の生活をどう左右するのか実感できないということだと思うんです。僕はこのことは、単純に規模の問題だと思いますね。つまり、世の中がある程度以上広いか複雑になると、人間っていうのは社会と繋がっている実感が持てなくなるじゃないですか。僕はこれだけ複雑になった以上は、社会を小さくするしかないと思っています。
もちろん、経済規模というか、予算の規模はある程度大きくないと軍事面が絶対に無理になってくるので、社会やシステムの規模自体は大きくあるべきだと思うんですよ。そのうえで、自分が実感を持って接続できる共同体の大きさっていうのは、もっと小さい方がいいと思うんですよね。なので、ここから先、国家っていうのはいろんな価値観が共存するためのプラットフォームにしかなり得ないと思うんですよ。かと言って市町村とか、町内会っていうのは本当に具体的な生活そのものに密着していて、もっと保健所を作ってほしいとか、保育所をどこに建てた方がいいのかとか、そういった現場の問題に対応するアプリケーションみたいになっていくと思うんですよね。だから、想像の共同体というか、同じ価値観をこんな社会を作っていこうっていうことをみんなで合意して一緒にやっていく共同体は、僕は都道府県レベルのものがちょうどいいと思っていますね。僕はそういった意味で、道州制にはわりと賛成なんです。
次はラジオネーム、紅ボタンさん。
「宇野さんこんばんは。すっかり宇野さんに慣れたこのごろです」……ということは、僕のトークを受け入れるには、なんらかの慣れが必要だということが、このメールから明らかになっていますね。厳粛に受け止めます(笑)。
「市川猿之助さんが『ONE PIECE』を題材にした歌舞伎を、来年上演すると発表したそうです。宝塚は『べルばら』で大成功していますが、歌舞伎はどうこの原作をどう演出するのか楽しみですね。主演は猿之助さんです。宇野さんが他の登場人物を配役するとしたらどうしますか? ぜひユニークなキャスティングをお願いいたします」
いやー、『ONE PIECE』のキャスティングは難しいよね。だって、『ONE PIECE』ってストーリーはべたべたというか、仲間最高、友情最高のような、わりかし現代的なコミュニケーション観をダイレクトに引き受けたものだと思うんだけど、マンガの画は信じられないくらいアクが強いんですよね。で、あの独特の身体感覚を実際に三次元の人間が表現するのは難しいので、僕がキャスティングするとしたら、個性が強いタイプじゃなくて、与えられた役になりきるっていうタイプの人をどんどん選んでいった方がいいと思う。具体的には、『テニスの王子様』とか『弱虫ペダル』のミュージカルで注目を浴びている、村井良大くんとかがね、僕はいいと思う。ごく一部の女性のオタクにしかわからない固有名詞を僕は言ったけど(笑)、村井良大くんがいいと思います。
次はラジオネーム、もやっとさん。
「宇野さんこんばんは。私の大学ではTOEICテストを受けることが半強制的に決められています。学校で土日に受けるのですが、受けないと英語の成績から減点する方式になっています。したがって、だいたいの人が仕方なしに受けている状態で、寝ている人や、適当にマークしている人もいて、正直意味をなしていません。こうまでして受けるまで、TOEICテストは必要なのでしょうか? 宇野さんの考えを教えてください。よろしくお願いいたします」
これはですね、もやっとさんの人生プランの問題ですよね。大学の問題でもなければ、日本の教育問題のせいではなくて、もやっとさんがこういった、英語力を示す基準っていうものをこの先、就活や個人的な人間関係の武器に使っていこうと思っているならば一生懸命やればいいし、必要ないと思えば切っちゃえばいいんじゃないですか。就活だって大学の成績なんてそんなに見ていないですよ。なので、僕はもやっとさんの内面の整理がついていない問題を、システムの問題として受け取りすぎていると思いますね。
ということで、私宇野常寛にぶつけたい質問を、この先もノンジャンルでお待ちしております。ハッシュタグは#hang813です。メールの方はこの番組ホームページのメッセージボタンから送ってください。J-WAVE「THE HANGOUT」。この後は南沢奈央ちゃんがお送りするNIPPON SEKIJUJISHA “GAKUKEN” The Reason Whyのお時間です。それでは、南沢奈央ちゃんにバトンを渡す前に1曲お聞きください。毎週この時間はですね、南沢奈央ちゃんをイメージした1曲を僕が選んでいるのですが、今日僕はふと、過ちに気付きました。今まで毎週、数々の奈央ちゃんのテーマを選んできましたが、僕は奈央ちゃんの表面的なイメージにとらわれて、人間が本来持っている多面的な魅力ってものを見失っていたんじゃないかなって、すごく反省したんです。なので、今夜は奈央ちゃんが持つ多面的な、六つも七つもある側面を網羅すべく、この曲を選びました。
それでは聞いてください。今週の僕から奈央ちゃんに捧げる1曲です。アニメ「愛の戦士レインボーマン」の主題歌。水島裕とヤングフラッシュで「行けレインボーマン」。
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宇野 J-WAVE深夜の溜り場「THE HANGOUT」改めまして月曜担当ナビゲーター宇野常寛です。
メールいきましょう。ラジオネーム、流出のかしゅーむさん。
「本日やっと『楽器と武器だけが人を殺すことができる』を購入しました」
ありがとうございます! 最近僕は、自分が作っている雑誌とか主催するイベントの話ばかりしていてすっかり触れていないんですけど、本を出しているんですよ。皆さん忘れているかもしれませんけど、僕の本業は物書きですからね。サブカルチャーについて評論するのが僕の本来の仕事です。『楽器と武器だけが人を殺すことができる』っていう、こういうタイトルの評論集を出しました。「ダ・ヴィンチ」っていう本の雑誌があって、そこに僕が毎月一番語りたい作品について、6,000〜10,000字くらい書くという連載を2年も3年もやっていて、その評論をまとめたのがこの本です。取り扱った作品は、山崎貴さんの『STAND BY ME ドラえもん』とか、宮崎駿さんの『風立ちぬ』とか、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』とか、僕の好きなあたりだと、『ガンダムUC』とか『イナズマイレブン』だったりとかね。固い物から柔らかい物まで、僕の趣味全快というか、本当にその時に一番語りたいと思っていることについて、思う存分好きにさせてもらっている連載をまとめたものですね。これがちょうど19日の金曜日に発売になりました。僕としては、書き系の仕事で一番力を入れている連載なので、みなさん、よかったら本屋で見かけたらぜひとも、手に取ってぱらぱらめくって一個でもひっかかる作品があったら読んでほしいなって思うんですが、感想を頂いています。メールの続きです。
「非常に濃厚な内容でまだ読了できておりませんが、現段階で印象に残っているのは、『フル・フロンタルこそ真の可能性の獣である』という章です」
これは『ガンダムUC』について書いた所ですね。僕は、作品内でひどい扱いを受けているフル・フロンタルというキャラクターが好きで、むしろ彼にこそ、『ガンダムUC』のテーマを建設的に展開する鍵があったんじゃないかって思っていて、まあ一言で言うとボロクソに書いているんですよね。『ガンダムUC』ってガンダムファンにもの凄くヒットしている作品なんですけど、僕はそれをけちょんけちょんに書いているんですね。あの作品、結構ヤバいんですよ。基本的には同じパターンの繰り返しなんです。まず、主人公であるニュータイプの少年が、40〜50歳くらいの先輩の兵士とか敵の将軍とかのオッサンに説教されてちょっと感動ちゃって、感動したまま出撃してちょっと活躍して、また敵か味方かのどっちかに捕まって、またオッサンに説教されて、「それでも世界は!」とか言いながら一生懸命ガンダムで戦って、プチ活躍してまた捕まって、っていうことを7回くらい繰り返すんですよね。お前はそんなに説教したいのか! みたいな感じなんですよ。
この『ガンダムUC』って、15,6歳くらいの少年が観て、俺もロボットのパイロットとかになって、大人の世界に混じってエースパイロットとして活躍したい! みたいな、思春期の願望とかを満たすためのものじゃなくなっているんですよね。もしくは、敵のお姫様とラブして自己実現、とかそんな話じゃないんですよ。これって僕に言わせると、明らかに目線が中年のオッサンで、自分の説教を素直に聞いてくれる若いやつらが欲しいみたいなストーリーなんですよ。それで、僕は本当に思ったんです。ファーストガンダムの世代ってもう40代半ばとかになっていて、彼らはもう性欲とか落ちているんですよね。社会的な地位もそこそこになっていて、だから、大人に交じって活躍したいとか、女の子をゲットしたいとか、そういった気持ちは薄れてきていて、もう彼らの欲望は自分の説教を素直に聞いてくれる新入社員が欲しいとかいうことになっているんですね。しかもニュータイプだから、教育コストゼロで大活躍みたいなね。僕は『ガンダムUC』ってそういう作品だと思っていて、その悲しさについて書いたんです。そしたら初代ガンダムの富野由悠季監督が読んでくれて、結構褒めてくれたんですよ。ちょっと自慢ですけどね。はい、メールの続きです。
「正直に言うと、ガンダムに対して全く知識がありません。しかし、この章を読んで、ガンダムという作品に触れてみたいと強く思いました」
ありがとうございます。ただね、この作品を見ても、最近の40代って自信ないんだな、ってことしか伝わらないと思うので、ぜひともファーストガンダムとか見てください。続きましてこちらは、ラジオネームいちごももさん。
「『楽器と武器だけが人を殺すことができる』を買って読んでいます。私が宇野さんのラジオ番組を毎週聴いたり、イベントに行くようになったこの1年半の評論がおさめられていて、読んでいてすごくワクワクします。『風立ちぬ』の評論は、映画を観る前にラジオで聴きましたが、映画を見た後に読むと、映像が頭の中に浮かんできたりして、本を通して再び作品を楽しめています。表紙もかっこ良くてすごく気に入っております」
ありがとうございます。僕は、評論文を読んで作品をもう一回見たいなって思えるのがいい評論だと思うので、こう言ってもらえるとすごく嬉しかったりします。
はい、ということで、ここでもう一曲お聴きして頂きたいと思います。さきに断っておきますけど、この選曲には、たいして意味付けはしていません。決して、いつかこっちにゲストに来てほしいとか、有楽町もいいけど六本木もすごくいい所だよとか、そういうことが言いたいわけではありません。僕がアイドルファンになるきっかけになった、SKE48の松井玲奈さんの曲を聴いてもらいたいと思います。それでは1曲いきましょう。松井玲奈で「枯葉のステーション」。
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宇野 はい、お送りしましたのは、松井玲奈で「枯葉のステーション」でした。松井玲奈さんも、いつかよっぴーと一緒にゲストに来て欲しいですね。
J-WAVE深夜の溜まり場「THE HANGOUT」。月曜日は宇野常寛がお届けしております。メールいっぱいもらっています。これはラジオネーム、らぶしどさん。
「宇野さんこんばんは。今日の朝、東京駅100周年記念のSUICAが発売され、買えなかった一部の人が暴徒化するニュースを見ました。僕はこれを見たとき、ショックを受けました。震災の時、日本人は未曾有の災害にも関わらずコンビニなどにちゃんと並んでいる姿が海外から評価されていました。僕はその姿が日本人らしさだし、誇りに思っています。宇野さんは何か感じられたことはありますか?」
うーん、僕は人間一人ひとりは結構信頼しているけど、人間が群衆というかマスになった時はあんまり信用してないので、むしろ、当然こうなるよなあっていう感じですね。というより、このニュースを見て気になっているのは、テレビがいつもの通り、SUICAを買えなかった人が大泣きしましたみたいなやらせをやっていて、この期に及んでまだそんなことをしているのか、ということですね。本当に、もうメッセージを正確に伝えるためには仕込みをやってもいいっていうことが許される時代じゃないことを、理解して欲しいんですよね。僕も結構、討論番組やバラエティー番組のゲストに出たときに、「今のもう1回言ってもらえますか?」とか、「あくまで宇野さまのご意見を尊重しますけど、一応台本に宇野さまのセリフを入れておきました」とか言って、彼らが調べたことがそのまま書いてあるっていうことが何回かあるんですよね。僕はそのたびにテレビの人間とケンカして決裂してきているんですよ。なので、僕はテレビよりはラジオの人間みたいに、だんだんなっていっているわけなんですよね。なので、世の中を維持するための役割とか、必要悪っていうのはもちろん存在するんだけど、それは時代とともに変わっていくということを、もっと理解して欲しいなって思いますね。
次はラジオネーム、ビスちゃんぽんさん。
「宇野さんこんばんは。仕事柄なんですが、感情、特に怒りや恨みをぶつけた文章をよく目にします。こう言ってはなんですが、ただただ厳しい調子をぶつけただけの文章だとそれほど心に残ることも無いのですが、たまに、静かで淡々と綴られた言葉の中に深い悲しみとやり場のない怒りが漂う文章を目にすると、私の心まで引きずられるような気がする時があります。宇野さんはお仕事柄、たくさんの文章と向き合っていると思うのですが、そういった文章と一定の距離をとって、精神を安定させたい時、どうやって対処なさっていますか?」
うーん。これはなるべく目に触れないことですね。人間って、目に触れちゃったものはどうしても気にしちゃうので、なるべく目に入れないように排除していく、ブロックしていく、ミュートしていくっていうのは、基本ですね。あと、僕の考えでは、このビスちゃんぽんさんにはきっと、文章の背景に怒りや恨みを直接ぶつけた文章を読んでも相手が不快になるだけで絶対に説得はできないのに、どうして人はそんな文章を書いてしまうんだろうっていう、そういう思いが背景にあると思うんですよ。でも、この解答は結構ストレートに出せて、みんな説得することって実は目的にしていなくて、吐き出したいだけなんですよね。
結局、コールセンターとかにクレームを入れる人っていうのは、実際にそのクレームを解決して欲しいと思っていることはほとんどなくて、単に文句を言ってスッキリしたいだけっていうことがすごく多いと思うんです。この番組を聴いている人のなかにも、苦情受付的な仕事や、あるいは接客的なお仕事でそういった場面に出くわす人が多いかもしれないんですけど、そういった人たちはあんまり、自分達の対応が解決にならないことを気に病まない方がいいですよ。たぶん、ほとんどの人がクレームを吐き出すこ自体が目的なんでね。
えーっとですね、これはですね、ラジオネーム、スーツキーディードリッヒさんです。
「宇野さんこんばんは。毎週楽しみにしています。実は今日は、心底そりが合わず嫌いなやつと仕事をしないといけない日で、非常にストレスをためました。だから息抜きで聴いています。宇野さんの今のお仕事は、基本は一人でのお仕事が多いような印象があるのですが、最近僕のような経験はありましたか? そういった時、どのように対応しますか?」
いやー、僕ってフリーランスじゃないですか。むしろね、嫌な人間とどうしても付き合わなくちゃいけないっていうこと、ありますよ。会社で嫌なやつだったら究極的には辞めちゃえばいいんですよね。ただ、僕の場合はもう辞めているので、働く業界自体を変えないと周囲の人間って変わらなくて、今から漁師とかにならないかぎり、嫌なやつって絶対にいるんですよ。
で、この解答は、もう倒すしかないですね。本当につまらない嫌がらせをしてくるやつとか、僕の業界にもいっぱいいるんですよ。「あんな奴に書かせるな」とか言っていたり、根も葉も無いような、1あったものを10くらいに膨らませて、「あいつはとんでもなくひどいやつだ」っていう噂を流したりとかね。僕はそんな嫌がらせを散々受けてきていますけど、最終的には自分がそういった嫌がらせに負けない読者を捕まえて、信頼を得て、育てていくっていうことですよね。自分のフィールドを自分で作っていくか、彼らの嫌がらせに負けないくらい他のまともな人たちから評価を受けていくかの2択なんですよ。これはもう、究極的には力で戦うしかないです。なので、辞めてリセット出来る間はまだましだと思ってください。はい、それではですね、ここでもう1曲お聞きください。これはアニメ『ぱにぽにだっしゅ!』のエンディングテーマ、桃月学園1年C組feat. 片桐姫子で「黄色いバカンス」。
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宇野 はいお送りしましたのは桃月学園1年C組feat. 片桐姫子で「黄色いバカンス」でした。月曜日は宇野常寛がお届けしております。J-WAVE深夜の溜まり場「THEHANGOUT」ここで一旦お知らせです。
■シェア・ザ・ミッション 今週のテーマ:「クリスマス」
宇野 J-WAVE「THEHANGOUT」ここからは各曜日のナビゲーターが毎週共通のテーマを語る、シェア・ザ・ミッションのコーナーです。今週のテーマは「クリスマス」。いやー、ぶっちゃけると僕はあんまりアニバーサリーとか気にしない系の人なんですよ。だから、この話題振られて結構困っちゃったんですけどね。
ただ、去年のクリスマスは結構思い出深かったですよ。僕と仲良くていつも遊んでいる出版社の友達がいるんですけど、彼がね、家に帰りたくなかったんだと思うんですよ、たぶん。昼間に全然別の仕事で会っていたのに、夜になっていきなり「宇野さん、今から馬塲で飯食いませんか?」ってメールが来て、それで二人で高田馬場の「うに小屋」でずっとご飯食べていましたね。それで、その時にもう1人、いつもつるんでいる某出版社の友達、仮名Aさんとしておきますけど、Aさんを呼び出そうとして、ずっとLINEしてましたね。Aさんは自分が担当している本の校了間際で、ずっと仕事していたんですよ。そのAさんってちょっと変わっていて、なんかセックス否定派なんですよね。「俺、粘膜接触とか嫌いですから。セックスとか全然いいっス」みたいな感じの、そういうキャラ設定の男で、それを僕らがいじって「Aさん、オナニーばっかりだと体に悪いですよ」とか、二人してずーっとLINE入れ続けて彼が仕事を出来ないようにしていましたね。「このLINEを止めたければ、今すぐ高田馬場に来い!」みたいなことをずーっと送ってましたね。ちなみに僕もその友達もAさんもみんな30代既婚男性ですからね。いやー、去年は心温まるクリスマスでした。
そのあとは二人で僕の事務所に行ったら、うちのスタッフが僕のいない間にみんなでチキンパーティーやっていたらしくて、ちょっと悔しいから、食べ残したチキンを僕らが食い散らかして、片づけないで帰りました。それが僕のね、去年のイブの思い出ですね。
あとクリスマスの思い出でいうと、さすがに浪人中は僕は結構やさぐれていて、クリスマスとかすっごく嫌いでしたね。札幌で浪人していたんですけど、なんか、11月半ばくらいからクリスマスモードになってくるじゃないですか。地下街の通路とか商店街とか、クリスマスソングとかばんばんかかってね。そこでもう、札幌中のトイレが逆流してくればいいのにな、とか思っていましたね。なんか、へたに殺人事件とかが起こると、ロマンチックな話になっちゃうおそれがあるじゃないですか。だから、徹底的にこのクリスマスイブを破壊するにはどうしたらいいかって僕なりに全力でシュミレーションしたら、トイレが逆流してくるのが一番いいっていうね、そういう結論に至りましたね。
さらに遡ると、高校まで行きますね。当時僕は函館のミッション系の男子校にいたんですよ。仮名某L高校っていうふうに言っておきますけど。その寮のクリスマス会にすごく苦い思い出がありますね。