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【無料公開】
インターネットの理想はIoTでこそ実現される?
落合陽一 meets DMM.make AKIBA
第1回ゲスト:小笠原治・前編
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2015.12.10 号外
ネットでもリアル書店でも話題沸騰中の落合陽一さんの著書『魔法の世紀』。本の内容をさらにフォローアップすべく、PLANETSメルマガでは落合さん出演のイベントや記事を連続で無料公開していきます!
第1弾となる今回は、日本のメイカーズムーブメントの拠点「DMM.make AKIBA(以下make)」で行われた、makeの前プロデューサーで現在はエヴァンジェリストとして活動中の小笠原治さんとの対談イベントの様子をお届けします。『魔法の世紀』で詳細に語られることのなかった、「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)」を取り巻く日本特有の状況とは? 本記事の後編は今週土曜に公開予定ですので、そちらもお楽しみに!
【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
▼プロフィール
落合陽一 (おちあい・よういち)
1987年生,巷では現代の魔法使いと呼ばれている。筑波大でメディア芸術を学んだ後,東京大学を短縮修了(飛び級)して博士号を取得。2015年5月より筑波大学助教,落合陽一研究室主宰.経産省より未踏スーパークリエータ,総務省より異能vationに選ばれた。研究論文はSIGGRAPHなどのCS分野の最難関会議・論文誌に採録された。作品はSIGGRAPH Art Galleryを始めとして様々な場所で展示され,Leonardo誌の表紙を飾った。応用物理,計算機科学,アートコンテクストを融合させた作品制作・研究に従事している。BBC,CNN,TEDxTokyoなどメディア出演多数,国内外の受賞歴多数.最近では執筆,コメンテーターなどバラエティやラジオ番組などにも出演し活動の幅を広げている。
小笠原治(おがさはら・おさむ)
1971年京都府京都市生まれ。株式会社nomad 代表取締役、株式会社ABBALab 代表取締役。awabar、breaq、NEWSBASE、fabbit等のオーナー、経済産業省新ものづくり研究会の委員等も。さくらインターネット株式会社の共同ファウンダーを経て、モバイルコンテンツ及び決済事業を行なう株式会社ネプロアイティにて代表取締役。2006年よりWiFiのアクセスポイントの設置・運営を行う株式会社クラスト代表。2011年に同社代表を退き、株式会社nomadを設立。シード投資やシェアスペースの運営などのスタートアップ支援事業を軸に活動。2013年より投資プログラムを法人化、株式会社ABBALabとしてプロトタイピングへの投資を開始。
■ 小笠原さんの自己紹介
落合:まずは小笠原さんの自己紹介をお願いします。
小笠原:では、ざっくりとしましょうか。
ウィンドウズ95が出た頃に、「さくらインターネット」というデータセンターをやっていたんです。と言っても、当時はまだデータセンターなんて言葉もなくて、仲間と「日本のインターネットを安くして、自由に使える環境を作ろうぜ」と始めました。
落合:その前はどんなことをしていたんですか?
小笠原:僕は、大学には行ってなくて、建築関係の商売をしてたんです。
その頃、タイからCAD(注1)のデータをどう送ったらいいかという話があって、現地の人に見本の図面を書いてもらって、そのデータを取るためにいち早くインターネットを使ったんです。TCP/IPの実験をするという話でもあったんですよ。でも、当時の速度って9600bpsとかで、今から見るとどうしようもないんです。建築の図面って何百枚もあるしね。
そういう状況の中で立ち上げたさくらインターネットが回りだしてからは、今度はiモードのサイトを作る仕事をしたりしてました。
それで一度大きく儲けたので、しばらく仕事はやめてたのですが、4、5年前から小さなバーを経営し始めたんですよ。そこに若手のエンジニアが来るようになって、彼らの話を聞いているうちに投資をするようになりました。そのうち、ちゃんとやるなら仕事にした方がいいなと思って、abbalab(アバラボ)という会社を作ったんですよ。
このabbalabというのは「Atom to Bit」(原子から電子へ)と「Bit to Atom」(電子から原子へ)の略です。この50年くらいは「Atom to Bit」――つまり、物質がデジタルに向かうという動きがあって、その振り子の反動として、近年「Bit to Atom」の動きが生まれてきた。そういう世界観で、その流れに投資するためのプログラムを、僕と孫泰蔵氏の2人でやっています。
(注1)CAD:2次元、3次元のものをコンピュータによって製図するシステム、ないしソフトウェアのこと。機械や建築物の設計など、それぞれの用途に応じて様々なソフトウェアが使用されている。
落合:このDMM.make AKIBAも小笠原さんの作った施設ですよね。
小笠原:亀山さん(DMM.comの亀山敬司会長)には騙されたってよく言われますね(笑)。でも、やっぱりモノづくりでは、お金の問題は2番目か3番目くらいには重要なことなんですよ。こういう大きな設備があるのはいいことだと思います。
基本的にはプロトタイピングをしたいと思ったら、僕らに相談してもらって、100万円~1000万円くらいの幅でプロトタイプの資金を投資したり、貸したりするんですよ。そのあと、さらにイケそうだったら、クラウドファンディングや他の資金調達の手段で、実際にそれを世に出すかを決めるんですね。
▲handiii
▲オルフェ
どちらもDMM.AKIBAから生まれた、自分の体の動きで表現を作るデバイス。「これ、クラウドファンディングで一番最初に買ったのは僕ですよ」(落合氏)
ただ、この8月からはDMM.makeのプロデューサーを辞めて、エヴァンジェリストとして広報活動をしていくようになりました。一方で、先ほど言ったさくらインターネットに出戻って、インターネットサイドでIoT向けのことをやろうかなと思っているんですよ。
やっぱり、ハードをやっている人は、「もう嫌いなのかな」というくらいに、ネットに疎いじゃないですか。
落合:間違いなく、そうですね。ソフトウェアセンスのあるハードウェアエンジニアがいなすぎるんですよ。CNC(注2)をやる「やる気」の10%くらいはJavascriptにかけてくれればもっとすごいやつになるのに…みたいな人がいるでしょう。
(注2)CNC:機械工作において工具の移動量や移動速度などをコンピュータによって数値で制御すること。多くの工作機械で採用されている。3Dプリンタが主に樹脂系のものを素材とするのに対し、CNCの場合は金属、樹脂、木材など様々な素材を切削・加工できる。
小笠原:でも、CNCを嬉しそうに触っている顔を見るとついつい言えなかったり……(苦笑)。
本当にソフト・ネット・ハードの断絶感って、半端ないでしょう。それを全部できる人って、僕はほとんど出会ったことがないんです。
落合:まあ、その逆に、フロントエンドばかり書いてないでFPGA書いたりCNCいじれよ、みたいな人もいるんですけど。しかも、さらにそこにくわえて物理のセンスなんて言い出したら100%いないですよね。
うーん、だから、それを実現するためには人間性を捧げて成功体験をするしかないんですよ(笑)。
僕がいま筑波大学でやってるデジタルネイチャー研究室は、24時間楽しく頭を使える人で、心が折れない人をたくさん育てる研究室にしたいんです。ソフトでコンピュータービジョンのプログラムを書いているのかと思ったら、被験者実験のデータづけ始めて、論文英語書きながら図を書いて、ハードウェアをガリガリと組みながら、なんとか締め切りに間に合わせられる人材。大体、3ヶ月~半年に1本くらいは何か世界がびっくりするようなアイデアを書いていけるくらいスピード感で生きられる学部生をどれだけ育てられるか、ですね。
そういうのを、これから3年で50人くらいを僕が野に放流すれば、スタートアップ50社くらいはうまくいくと信じてますね。
小笠原:ちょっとお金を出してしまいそうになりますね。おたくの学生さんを早めに紹介してください(笑)。
実際、そういうことを学校でやってくれると嬉しいんですよ。企業では絶対に「ブラック企業かよ」とか言われてしまうでしょ。ちなみに、僕はもう最近ネット業界にすらあんまり投資しなくなりましたから。理由は、ネット業界が急成長して儲かりだして、怠け者ばかりになったからですね。
落合:論文って、別に書いても一円の金にもならないんですけど、胆力だけは死ぬほど身に付くんです。だから、研究したい人が3~5年うちに来れば、猛烈な人間になれると思います。実際、僕も24時間応対しますからね。楽しく合宿とかもやるし、僕自身が自分のスケジュールがわからなくなるくらいの状態になってますけどね。
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