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山田玲司のヤングサンデー 第136号 2017/5/22

無責任なリスが森を作る

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何度も思い出す「リスの話」がある。


かなり昔に聞いた話なのだけれど、リスの中には冬に備えて見つけた餌の木の実をあちこちに隠す習性があるらしくて。


同じ場所にせんぶの餌を隠しておくと、その場所に何かあった時に困るので、リスはくるみやドングリをあちこちに隠しておくわけだ。

つまり「リスクヘッジ」しているわけで、リスというのも中々やりおる。


ところがリスの中には、自分がどこに餌を隠したか忘れるものもいるらしい。

なんとも間抜けで可愛い話なんだけど、その「忘れた木の実」が発芽して、やがて大きな木になることもあるらしい。


つまり、リスの間抜けな失敗が木を増やし、森を作っている、とも言えるわけです。

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僕はこの話が大好きで、自分も車の中に少しのお金を隠しておいて「僕のくるみ」とか言ってみる。

バカみたいだけど、駐車料金が微妙に足りない時なんかに、その「くるみ」は僕を救ってくれるのです。


とは言え、車の中の少しのお金は、後に巨額の資産なんかになる事はない。


でもこの「くるみの話」

数年前に寂聴さんに聞いた話にもつながっていて面白い。


寂聴さんは僕に「あなた映画監督になったらいいわよ」と、言ってくれたことがあります。

映画は僕の「密かな夢」の1つだったので、それはもう嬉しかったのだけれど、寂聴さんは「あたし無責任にそういうこと言うのよ」と言って笑った。


そして、そんなふうに「言ったこと」を忘れてしまうらしい。


でも、こんな事を言われた方は忘れられない。

寂聴さんは無責任に人に「あなたならできるわよ」なんて言いいまくっていて、そのまま忘れるらしいけど、その言葉は「言われた人の中」で育っていって、やがて「大木」に育つこともあると思う。


まさにこれ「くるみの話」だ。