働かないアシスタントを雇っていた理由とは?
その頃、僕の漫画の仕事場は、昼の1時に集合するのが決まりだった。
そんなに無理のある集合時間とは思えないし、仕事場も埼玉とは言え東京寄りで、交通の便もいい所にある。
なのに「あいつ」は集合時間がとっくに過ぎた午後3時頃に、まったく悪びれずに入って来たものだった。
「あいつ」とはそうです。今週の放送で話題にしていた僕の元アシスタント「ウエダハジメ」です。
彼は大学時代の漫研の後輩で、当時そのサークルにはプロの漫画家の在校生は僕しかいなかった。
なので、入って来る新入部員は僕にある種の「敬意」みたいなものを持って接してくれていたし、僕の方もそんな後輩を大事にしていたわけです。
なのにこの後輩「ウエダハジメ」は、とにかく偉そうだった。
普通に考えたら、そんなヤツをアシスタントにするなんて考えられない。
いや、むしろその態度に怒り出す人もいると思う。
でも、僕はすぐに「その青臭い態度」が、自分の中の「何か」を守るための「武装」であることに気づいた。
それを見抜いていたのは僕だけじゃない。彼の同級生の多くが彼の「恐ろしく純粋な部分」に気づいていた。
彼はいわゆる「特撮オタク」で、特に昭和のヒーローモノが好きだった。
僕は彼を思い出す時いつも「快傑ズバット」を思い出す。あんな感じで生きているのだ。
その他にも政治的なドキュメンタリーなんかも好きで、なんだかんだ詳しい男だった。
彼が好きな「70年代のヒーローモノ」は、とにかく「虐げられたものたちの思い」が描かれている。
彼はそんな「悲しきアウトサイダー」や「貧しく正しい者達」なんかの話が好きで、彼は更にそんな物語に含まれる「弱きものの欺瞞」みたいなものにまで目を向ける男だったのだ。
僕が彼をアシスタントにしていたのは、そんな彼と「深い話」をしながら漫画を描きたかったからなのだ。
当時の僕の周りには、幼馴染の「ヤンキー」と、地元でフラフラしている男子高生みたいなのが中心で、明るくて楽しいけど、とにかく「深い話」ができなかった。
とはいえ、彼を雇ったり、長年友人でいる理由は「それ」だけではなかったと思う。
今回その件を考えていて、わかった事がある。
それは「遺伝子」に関わる問題だ。
この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。
働かないのは目で見る部分で、心の部分ではバッチリ働いている。
そんな感じがしました。
自分とは違う何かを持っている人間
それを毛嫌いして関わりを持たないようにする事は簡単なことだけれど、その人と関わることで自分も成長することができるんだなあと思いました
そんな生き方をしてきたからこそ、山田玲司先生は魅力的だし
逆にウエダハジメ先生も玲司先生に救われていたんじゃないかと思います