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山田玲司のヤングサンデー 第188号 2018/5/28

「マカロニほうれん荘」の何が凄いのか?

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小学5年の頃だったと思う。

僕はある漫画に取り憑かれて、寝ても覚めてもその漫画の事ばかり考えていた。

他にも好きな漫画はあったけど、その漫画だけは特別だったのだ。


人生の中であれほど発売日を待ちわびたコミックスはない。

漫画雑誌の購入を控えるように親に言われても、我慢できずに「少年チャンピオン」を買ってしまう。


すべてがあの「マカロニほうれん荘」を読むためだった。

それはもうセリフを暗記するくらいに読み返し、雑誌を切り抜いた。

切り取ったマカロニのキャラクターを自分の漫画に貼り付けて、勝手に「コラボ漫画」を作っていた。



同世代のきたがわ翔も同じように「マカロニ」に取り憑かれ、彼は漫画のページごと模写したと言っていた。



そんな「マカロニほうれん荘」の凄さを、リアルタイムで読んでいない世代の人達に伝えるのは難しい。


しかし、その漫画は明らかに「それ以前」と「それ以後」の漫画を劇的に変えてしまったのは明らかだ。


それを他の世代で例えるなら「ビートルズ登場」とか「ドラクエ登場」とか「Mac登場」とか「初音ミク登場」とか「エヴァンゲリオン登場」とか、「ガンダム」なんかもその1つになるだろう。


鴨川つばめ先生の描いた「マカロニほうれん荘」はそういう作品なのだ。




そんな「マカロニほうれん荘」の原画展が開催された。


大変な事だ。何しろ「あの」マカロニの生原稿を直接見る事ができるのだ。

そんな事は今までなかったのだ。




そんなわけで、僕はきたがわ翔と一緒に原画展に行ってきた。


会場は大混雑で、スタッフさんは何度も「入り口付近に留まらないでください」と言っているのだが、

そうはいかない。

何しろ入り口に入るなり「マカロニほうれん荘」の伝説の第1話の生原稿が全ページ展示されているのだ!!!!


そこにいるのは「僕ときたがわ翔」だ。そんなもん動けるはずがない。

使われている画材や、修正の跡や、アシスタントの手が入っていない画面の処理、コマ割り、セリフ、ページの流れ、トーンを使わないテク、など1つ1つを2人で検証していく。

止まるわけがない。

その場所でニコ生放送を3時間は余裕でできる素材だ。



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マカロニはあまりにも革新的で、その後の世代のデフォルトになった表現も多いので、今見ると「そういうのって昔からあったんだ」という印象になるのは否めないと思う。


おまけに真面目すぎる4段構成のコマ割りや、フルショットの多用、ノリだけ進む動きとリズムだけの展開が70年代マナーなので、そこが原因で古い印象になるかもしれない。


同時期の手塚治虫作品のブラックジャックのように「重厚なテーマ」があるわけでもない。


ところが実際に原稿を見てみると、そんなつまらない考察を吹き飛ばす「圧倒的なデザインセンス」が今見ても新鮮で、漫画そのものが生命力に溢れている。



引用ネタは「ピストルズ」や「クイーン」「キッス」などのバンドネタから「特撮モノ」「時代劇」「ディズニー」や「スヌーピー」まで実に幅広い。


明るい画面に「旧日本軍ネタ」「ミリタリーネタ」が頻繁に入るのもマカロニほうれん荘だ。


70年代半ばの連載なのを考えると、この頃ようやく「戦争体験」をネタ化していい空気になったのではないかと思う。



マカロニの魅力を箇条書きにすると。