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山田玲司のヤングサンデー 第38号 2015/6/22
「アニーの明日」は本当に幸せか?
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そんなこんなで流行りのリブート版「アニー」も観てしまいました。
この「シンデレラ型物語」には、「貧しい者の価値」という事がとても大事にされてきました。
僕が漫画でデビューした頃の事です。
原稿を持って講談社の「モーニング編集部」に行くと、当時の編集長が僕に声をかけてきました。
彼は元・“手塚番”で、『三つ目がとおる』の担当だった人です。目がいつも笑っていなくて怖い人でした。
彼は当時20歳の僕に言いました。
「24時間漫画のことだけ考えろ!」
そんなわけで、今だに寝ても覚めても漫画の事を考えています。
特に新連載の準備の時は何をしていても漫画の事ばかりです。
そんな中でも、ろくでもない政治(経済)と歪んだ報道の件は耳に入るので、今週はかなりハードでした。
漫画に煮詰まると、とにかく映画を観ます。
その映画に作り手の「聖なる魂」を感じると、疲弊していた心と体が回復して、「先輩、俺も頑張ります!」という気分になるからです。
ところが、そうでもない「魂を売って、商売だけの映画」なんかに出会うと(しょっちゅうだけど)力を奪われます。
「映画アニー」を許せるか?
そんなこんなで流行りのリブート版「アニー」も観てしまいました。
僕はミュージカルが基本的に好きなので、そこは問題ないんだけど、この映画はなかなか「イライラさせられるもの」がありました。
基本構造は『シンデレラ』『足長おじさん』とか『花より男子』なんかのバリエーションの1つで「貧しいけど心は豊かな子が、金持ちだけど何かを忘れた大人(の心)を救い、そして(金銭的に)救われる」という話です。
つまり、「金持ちに自分を認めさせて金持ちになる」という話です。
時代が不景気だと「お金持ちに助けられたい」という本音と「貧しくてもプライドは捨てない」という、2つの気持ちを満たしてくれるコンテンツが求められるのでしょう。
今回のアニーは現代的な解釈や設定などが入っている上に、映像的な気持ちよさに力を入れているので、これを映画館で観てしまっていたら、あの「圧倒的な曲の力」も相まって騙されそうだけど、今回僕はDVDで家での鑑賞。どうしても「作り手の魂の不在」に目がいってしまうのです。
登場人物は「色々とまともそうなこと」を言っているけど、「アニーの価値」がちゃんと描かれていないので「結局金持ちが偉いの?」という気分になるわけです。
前回の放送で少し触れたけど、ドラクエやワンピースなどの「選ばれしもの」であればそれでいい、という世界では、「選ばれなかったものに努力の余地がないという問題がある。
「アニー」は「選ばれなかったもの」が、なんとなく「選ばれた」という話で終わっています。
しかも、あくまでもその選択権は「金持ち」にあって、同じ立場だった孤児の友達は、「選ばれなかった」というだけの理由で何も変わらないわけです。
それならせめてアニーには「選ばれるだけの価値」がある、という部分はしっかり描いて欲しいんだけど、それがちゃんと描かれていなかったのが最大の「がっかりポイント」でした。
「アニーの価値」とは何か?
この「シンデレラ型物語」には、「貧しい者の価値」という事がとても大事にされてきました。
シンデレラは働きものだし、『花より男子』の主人公も庶民が失っていない「精神的なまともさ」を売りにしている。(つまりはプロレタリアですね)
選ばれただけで金持ち特権を得るなんて都合が良すぎる、という気分に「こういう良いところがあるんだよ」と描いて、観客を納得させるようにしてきたわけです。
その点、今回のアニーでは単に「元気で歌の上手い、よく踊る女の子」に見えてしまう。
ここまで書いておきつつ実は僕はアニー型のキャラは嫌いではないんです。
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