はてさて、ボーイング787型機「騒動」で納得がいかない「謎」は、どうしてボーイング社の経営トップが表に出てこないのか。更には、どうして日本のみならずアメリカのメディアも会見を求めないのか、であります。そう思いません?
 実は僕が知らないだけで、「1000%の確率」wで会見を行っている、会見に応じている、のかな。御存知の方が居たら、御一報下さい。tanaka@nippon-dream.com

「朝日新聞」には「『787型機の性能に自信』米ボーイング幹部が電話会見」という見出しからして、“イエロー・ジャップ”が小馬鹿にされている記事が1月10日にアップされていて、

「運航上の安全には当然、私たちは100%の自信を持っている」
「新しい機体を導入したときには、最初の段階で、ある程度の不具合は生じることがある。毎回、それを調整し、乗りこえる作業が大事なことだ」
と上から目線な発言を、「787型機担当チーフエンジニアのマイク・シネット」なる御仁が「電話会見」しています。

「電話会見」って、誰と誰と誰が参加したのかなぁ。まさか1年半で利用者が日本とアジアを中心に1億人を突破した「LINE」を使った訳ではなさそうだしw、仮に「朝日新聞」との単独電話インタヴューなら、その旨を明記するでしょうし、僕が知る限り、「欧米かぁ!」(古っ)の他のメディアには、件(くだん)の「電話会見」はアップされていないし、超~「謎」です。

そもそも「100%の自信を持っている」なら、ザ・ボーイング・カンパニーのW.ジェームズ・マックナーニ会長・社長兼CEOが「顔」を出すのが当然でしょ。それが「ノーブレス・オブリージュ=noblesse oblige」ってもんでしょうに。

ジェネラル・エレクトリック(GE)からスリーエム(3M)を経て2005年から「ボーイング社の会長、社長兼CEO(最高経営責任者)に就任、年商609億ドル、従業員16万人を擁し、回転翼航空機や電子・防衛システム、ミサイル、衛星、そして最先端情報通信システムなどを提供する世界最大の民間航空機および軍用機メーカーの総責任者として、同社の事業戦略全般を統括します」
と記されているなら、猶の事。
 まあ、振り出しのプロクター&ギャンブル(P&G)の次にニャンと、マッキンゼー&カンパニーに勤務と記されているから、「三十六計逃げるに如かず」と狡猾にも熟知しているのかもw。

 それって、国民を奈落の底に突き落としても平然としていた旧日本軍幹部みたいなもんですな。
因みに「大辞林」には、

三十六計逃げるに如かず:
 〔南斉書(王敬則伝)〕作戦はいろいろあるが,逃げるべきときには逃げて身の安全を保ち,のちの再挙を図るのが最上の策である。
 (転じて)面倒な事からは手を引いて逃げるのが一番よい,というたとえ。逃げるが勝ち。三十六計走るを上計となす。

と記されています。
 
「ブルームバーグ」は「ボーイング:787型機の納入、一時停止-安全確保を優先」と題する19日アップの記事の中で、「ボーイングの広報担当、マーク・バーテル」なる御仁のインタヴューを掲載していますが、
「バッテリーに関する直近の耐空性改善命令(AD)に準拠するための当社の措置をFAAが承認し、その措置が実行されるまで787型機の引き渡しはしない」
と殆ど“他力本願”。当事者意識が皆無。
だから、会見しないのかも。

他方で、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、「米FAA、787認可でボーイング提出資料を過剰に信用=関係者」という深い記事を19日に掲載。
「787型「ドリームライナー」に乗ってファーンボロー国際航空ショーに到着したボーイングのジム・マックナーニCEO(2010年)」
とクレジットされた写真も「拝謁」可能です。

「連邦航空局(FAA)は、2011年に米ボーイングの787型「ドリームライナー」の旅客輸送開始を認可した際、それまで大型ジェット機に使用されていなかった高度なバッテリー装置が冗長性という特徴を備え、不具合が絶対に起こらないとするボーイング側の提出データに大きく依存していたもようだ」
「このようなメーカーへの依存は、FAAがとる標準的アプローチだ。航空機の安全性は現在、史上最も高いとされる。だがドリームライナーの安全性に対しFAAが180度方向を転換させたことで、航空機が旅客輸送を開始する際の認可過程に新たに焦点が当たっている」
「新型ジェットの承認過程では長年、メーカーと当局間で譲歩が繰り広げられていた。FAAは自前で詳細な検証を行う予算もマンパワーも持ち合わせていない」
「FAAは結果的に、ボーイングや部品メーカーが提出した技術的・工学的見地からの分析をおおむね受け入れてきた」
「関係者によれば、11年夏の認可に先立ち実施された20万時間の陸上および飛行テストの中では、FAA高官はバッテリーの安全性を大幅な見直しが必要な問題として取り上げるに至らなかったようだ。新型のバッテリーシステムに対して、2007年に下された最初の使用許可が変更されることはなかった」
「米国家運輸安全委員会(NTSB)の元委員、キティー・ヒギンス氏は、『FAAの認証制度や過程が、現在の世界で求められている水準にあるかどうか。それが最大の問題だ』と語った」

おいおいでしょ。「グロ-バル・スタンダード」と称する「アメリカン・スタンダード」を居丈高に押し付ける皆々様は、斯くも深刻なモラル・ハザード状態に陥っていた、という訳ね(涙)。

 改めて冒頭で紹介した「『787型機の性能に自信』米ボーイング幹部が電話会見」から再録すれば。
「新しい機体を導入したときには、最初の段階で、ある程度の不具合は生じることがある。毎回、それを調整し、乗りこえる作業が大事なことだ」
って発言の心智=メンタリティは、「製造物責任法=PL法」を歯牙(しが)にも掛けていない証左です。

「新しい期待」wじゃなかった「新しい機体」を「新しい車種」と置き換えて、仮に日本の自動車会社がコメントしたなら袋叩きでしょ。韓国の自動車会社なら更に。
 なのに、飛行機だと許されちゃう、って「謎」。「オスプレイ=マイペンライ」発言も同様の“甘え”ですね。

 実は、「まだ経験の浅い飛行機なので、初期故障については当然予測している」という“居直り”とも取られ兼ねぬ発言を、16日の高松空港緊急着陸を受けて同日11時半から羽田空港で行った緊急記者会見で篠部(しのべ)修副社長も行っています。

伊東信一郎社長も同日、「ボーイング787が従来の機材より問題があると現時点では思っていない」と述べた旨、共同通信が配信しています。

何れにしても、「科学を信じて・技術を疑わず」でなく、「科学を用いて・技術を超える」心智こそが不可欠、と従前から繰り返し申し上げてきた僕としては、「だから、言わんこっちゃない!」なのですが、こんな所で自慢しても仕方なく、「フェイルセーフ=Fail-safe」の哲学が希薄だったんじゃないの、ボーイング社も米国連邦航空局=FAAも、と慨嘆したくなります。
 因みに、「広辞苑」では
「安全装置の一種。たとえ誤りや失敗が起きても、安全を保障するための機構。機械やシステムを暴走させないための歯止めや異常時の自動停止機能を含む」
「大辞林」では
「あるシステムが,起こりうる障害(誤作動や誤操作)に対して安全な方向に動作すること。また,それを実現しようとする設計(思想)のこと。石油ストーブで転倒に備えて自動消火装置を備えることなど」
と解説されています、

で、「高松空港緊急着陸」以降も「顔」を現さないボーイングCEOと「違って」、目立ちたがり屋と目されるレイ・ラフード運輸長官が18日に「1000%安全」発言を行います。
 各メディアが報じましたが、ここでは「讀賣新聞」から再録します。

B787運航再開、米長官「いつかわからない」

【ニューヨーク=越前谷知子】
ラフード米運輸長官は18日、重大なトラブルが相次いでいる「ボーイング787型機」の運航停止について、「当局は1000%安全と確認できなければ、再び飛行することを許可しない」と記者団に述べ、徹底的に安全確認を図る考えを示した。
 運航の再開時期については「いつになるかわからない」としており、運航停止が長期化する可能性を示唆した。
 一連のトラブルは、バッテリーとして使われていたリチウムイオン電池に原因があるとみて、精査していることも明らかにした。
 一方、米ボーイングは、バッテリーの安全性を当局が認めるまで、787型機の納入を見合わせることを明らかにした。生産は続けるという。
 ボーイング社は世界の航空58社から約800機の受注残がある。
(2013年1月19日10時43分  読売新聞)

敢えて「讀賣新聞」を再録したのは、クレジットされた女性記者名にクスッと苦笑いしてしまうであろう諸兄諸姉へのサーヴィスです(苦笑)。う~む、お判りにならぬ方は中川昭一氏の酩酊会見を想起して下さい。

 このラフード氏に関するバラク・オバマ氏の「発言」
 レイモンド・ラフッドとウィキペディアでは表記されている御仁は「トヨタ車リコール騒動」でもスタンド・プレイが目立った記憶が蘇ります。

それにしても、「1000%」って惹句(じゃっく)は、洋の東西を問わず、「政事家」は大風呂敷を広げるのがお得意なのかも。
 先のアメリカ大使館の紹介文には、「運輸長官として、5万5000人以上の職員と700億ドルの予算を有し、航空、海上、陸上輸送事業を監督する運輸省を統括する」と記されています。
 とするなら、「年商609億ドル、従業員16万人を擁し、回転翼航空機や電子・防衛システム、ミサイル、衛星、そして最先端情報通信システムなどを提供する世界最大の民間航空機および軍用機メーカーの総責任者」は猶の事、会見すべきで、それを求めないのは「『脱・記者クラブ』宣言」を今から12年前の2001年に発した僕からすると、「ブルータス=アメリカのメディア、お前もか」ですね。

 同時に、「ポーランド国営航空、ボーイングに補償請求へ」という「日本経済新聞」の記事
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1802Q_Y3A110C1EB2000/
に“触発”されて日本の全日本空輸も日本航空も、更には三菱重工業も川崎重工も東レも、別けてもジーエス・ユアサ コーポレーションは「行動」を起こすべきでしょ。
 にも拘らず、旧日本電池と旧ユアサコーポレーションが2004年に経営統合したGSユアサは、驚く勿れ、この段に及んでもHPで何も言及していません。

誤解無き様。日本的心智での「お詫び」や「謝罪」を掲載せよ、と僕は求めているのではありません。
リチウムイオン電池の問題というよりも、ボーイング社の最終組み立て段階に於ける配線ミスの可能性、蓋然性が高いのです。

確かに最近では、モノ作り産業の雄たる日本でも、「木を見て森を見ず」どこか「葉を診て枝す捉えず」とも呼ぶべき視野狭窄なマニュアル的戦後教育の「成果」なのか、「地頭(じあたま)=勘性」を持ち合わせた職人=匠(たくみ)が絶滅種となって、「ポカミス」が生まれています。
が、良くも悪くも大雑把(おおざっぱ)が取り柄なアメリカの現場に於ける「ポカミス」は、日本の比ではない訳で、そうした文脈で考えると、「1000%」発言も、連邦航空局=FAAが敢えて前面に立って、ボーイング社は“雲隠れ”状態なのも、妙に得心します。
いえ、PL法で指弾されるべき最終製造者はボーイング社なのですから、ジャイアンのアメリカが、のび太の日本の納入企業に責任を押し付けようとする今後の展開を是が非でも阻止せねばなりません。
それが外交であり、政治であり、交渉なのです。
なのに、「当社も調査に協力する」ってな一文すらHPに掲載していないのは、それだけで既に「敗北」でしょ。

ポーランド国営航空、ボーイングに補償請求へ 
2013/1/18 11:20 日本経済新聞

【ニューヨーク=杉本貴司】
ポーランド国営LOTポーランド航空は保有する米ボーイングの新鋭中型機「787」の運航が停止に追い込まれたことを受け、同社に補償を求める方針を明らかにした。ダウ・ジョーンズ通信が報じた。787は全日本空輸と日本航空を含む世界の航空8社が保有している。一連のトラブルを受けて航空会社が補償請求を表明するのは初めて。
 ダウ・ジョーンズによると、LOTのバルチェルザック副社長が、運航停止に対する費用が「非常に大きい」として請求すると言明した。LOTは787を2機保有しており、ワルシャワ―米シカゴ便の運航を始めたばかりだった。一方で補助電源システムなど不具合の原因とされる問題が解決されれば、予定している3機の追加購入計画に変更はないとしている。

787騒動に限らず、件の記者の名前がクレジットされた一連の記事は、視点が鋭く、密かに僕は評価しているのですが、
「不具合の原因とされる問題が解決されれば、予定している3機の追加購入計画に変更はない」と述べる一方で、「保有する米ボーイングの新鋭中型機『787』の運航が停止に追い込まれたことを受け」、「運航停止に対する費用が『非常に大きい』として請求すると言明」ってのが、外交ってもんでしょ。交渉ってもんでしょ。喧嘩ってもんでしょ。
 のび太なのに、スネ夫になっちゃってる日本は、いやはやです。「だから、言わんこっちゃない!」。
LOTポリッシュ・エアラインズも加盟するスターアライアンスのメンバーである全日本空輸も、学ぶべきでしょ。況(ま)してや、2004年に50機を全日空が発注する事で開発が実質的に始まったのですから、硬軟取り混ぜての実体を伴った「アクション」というか「パフォーマンス」を執るべきです。2008年5月の納入予定が2011年7月へと大幅に遅れた上に、日本側に責任を押し付けられたのでは踏んだり蹴ったりです。

 地元の「四国新聞」が「787調査、米チーム参加/高松空港は終了」と題して19日に報じた記事は、「米政府が派遣した運輸安全委員会(NTSB)や連邦航空局(FAA)、ボーイング社の関係者らの調査団メンバー4人が18日、来日し同空港で日本側の調査に加わった」が、「米調査団はカメラを手に機体や取り外されたメーンバッテリーを点検。記者会見には応じなかった」と明確に記しているのが、ニャカニャカです。
 他紙も報じている「煙の発生元のメーンバッテリーは第三者機関に委託し、1週間程度で解析を終わらせる意向を示した。当初は解析に約3カ月かかるとしていた。委託先は選定中という」のも奇妙な話で、苟(いやしく)も「プロフェッショナル」を自任する面々が「3ヶ月」を要すると公言してた解析が突如、「1週間程度」で可能と言うのも「謎」でしょ。
 ボーイング社は親方日の丸みたいな体質で、労使関係も最悪。2008年秋に2ヶ月間も続行したストライキを「許してしまう」体質なのです。でもって、この手の官僚的組織は組織防衛だけは一人前なのですから、要注意。性善説の日本の側が試されていると捉えるべきです。

「あとは自分で考えなさい。」ってURLも紹介しておきます。

「B787が全面運航停止、米当局が来日して調査へ 航空各社の戦略に影響も」と題する17日付け「ロイター」
「バッテリー火災の原因究明、困難か-787の運航再開に不透明感」と題する19日付「ブルーグバーグ」
「1週間でバッテリー解析、安全委 緊急着陸の787」と題する18日配信「共同通信」

延々と787騒動の「謎」に言及していたら、昨日号で予告していたNHK福島放送局の「試験操業ことし初水揚げ」に触れるのが、又しても翌日扱いになっちゃいました(苦笑)。
 アーカイブなので、消失の恐れはないかも知れませんが、一応、全文を貼り付けておきます。

試験操業ことし初水揚げ

原発事故の影響で自粛が続く漁の再開を目指し、相馬市沖でことし初めてとなる試験的な漁が行われ、震災後では初めとなるズワイガニをはじめ2トンあまりが水揚げされました。
福島県沖の試験的な漁は、相馬市の沖合を中心とした水深150メートル以上の海域でタコやイカ、カレイなど13種類の魚種を対象に去年の6月から行われています。ことし初めての出漁となる16日は、未明に出発した20隻の漁船が午後2時半ごろから、次々に相馬市の松川浦漁港に戻りました。港では、震災後では初めてとなるズワイガニ450キロをはじめ、5種類の魚介あわせて2トンあまりが水揚げされ、隣接する市場では地元の漁協などの職員が、カニを大きさごとに分けて重さを量るなど2年ぶりの冬の味覚の水揚げに活気づいていました。
県によりますと、震災前、松川浦漁港でのズワイガニの水揚げは年間およそ200トンと、太平洋側の港では全国で最も多く、首都圏や北陸地方での需要もあったということで、漁協では16日に水揚げされたカニを放射性物質の検査をしたうえで、金沢市や富山市などに出荷することにしています。相馬双葉漁協の南部房幸組合長は「震災と原発事故から2年が過ぎようとしているが、本格的な操業を目指してあきらめずに取り組んでいきたい」と話していました。
01月16日 23時09分


何故、福島県沖合で採れたズワイガニが「金沢市や富山市などに出荷することにしています」なのかな?
 長野県知事時代に「長野県原産地呼称管理制度」を創設した理由も含めて明日。

猶、ダイヤモンド社編集委員の畏友・辻広雅文氏が「インフレ・ターゲッティングは万能薬か 超金融緩和論の論点を整理する」と題して「ダイヤモンド・オン・ライン」に1月8日付で寄稿した秀逸な論考を、「リフレ派」一派が冷笑しているようですが、この件も何れ触れますので、お暇な折りに御一読を。
で全文閲覧可能。

(2013/1/20)