希蝶さん のコメント
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第313号 2019.5.7発行 「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…実にいろいろあったが、平成から令和への御代替わりが無事に行われ、まずは安心している。さて、今回は新帝陛下の天皇として最初のおことば(令和元年5月1日、即位後朝見の儀)に注目したい。上皇陛下の天皇として最初のおことば(平成元年1月9日、即位後朝見の儀)と比較すると、興味深いものが見えてくるのだ。お言葉から拝察できる新天皇陛下のご意志とは?
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…BBCの特集番組に続いて、カルバン・クラインのキャンペーンに起用され、さらに『Newsweek』の「世界が尊敬する日本人100」という特集でも選出された伊藤詩織氏。彼女がレイプされたと訴えている某ジャーナリストは、不自然なほど詳細に事件当日の状況を証言しているが、その証言や陳述は変遷しており、話がまるで変わってしまっている。Y氏の証言の驚くべき矛盾とは?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!高齢者の運転免許更新はどうあるべき?明らかにヅラと思える俳優は、時代劇などでカツラを被るときはどうしているの?読書について「読み飛ばしのススメ」をどう思う?戦前の憲法が天皇主権だったとすると、戦争責任もあるということになるのでは?ディズニーランドやUSJはあったほうが良いの?愛子さまに皇位継承権を認めると壬申の乱が起きる!?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第323回「即位のお言葉から見える主体的意思」
2. しゃべらせてクリ!・第270回「天高く御世替わりを祝福しまーしゅ!!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第125回「伊藤詩織『Black Box』裁判記録とその検証〈3〉~『やむなく』の矛盾」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第323回「即位のお言葉から見える主体的意思」 実にいろいろあったが、平成から令和への御代替わりが無事に行われ、まずは安心している。
それにしても、天皇が生前退位したら「国体の危機」だとまで言って反対した自称保守言論人たちが、いざ生前退位の実現を目の前にしても誰一人諌死するわけでもなく、それどころか相次いで祝意まで述べたのには心底呆れ果てた。
共同通信の世論調査では、 今後の天皇についても退位を「認めるべきだ」とする回答はなんと93.5% 、 「認めるべきではない」はわずか3.5% だった。 安倍政権や自称保守がいくらご譲位を「特例法」に基づく「一代限り」のものだと言おうと、今回が先例となり、今後もご譲位が行われるようになるのは確実である。 もっとも、その都度特例法を作るのではなく皇室典範を改正する必要があるし、女系・女性天皇、宮家を認める典範改正はさらに速やかに行わなければならないということは、言うまでもない。
さて、今回は新帝陛下の天皇として最初のおことば(令和元年5月1日、即位後朝見の儀)に注目したい。
まずは全文を掲げよう。
日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。
この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。
顧みれば、上皇陛下には御即位より、30年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心を御自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。
ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します。
これを、上皇陛下の天皇として最初のおことば(平成元年1月9日、即位後朝見の儀)と比較すると、興味深いものが見えてくる。
なお文中の「大行天皇」とは、崩御した天皇が諡号を贈られるまでの呼び名で、ここでは昭和天皇のことである。
大行天皇の崩御は、誠に哀痛の極みでありますが、日本国憲法及び皇室典範の定めるところにより、ここに、皇位を継承しました。
深い悲しみのうちにあって、身に負った大任を思い、心自ら粛然たるを覚えます。
顧みれば、大行天皇には、御在位60有余年、ひたすら世界の平和と国民の幸福を祈念され、激動の時代にあって、常に国民とともに幾多の苦難を乗り越えられ、今日、我が国は国民生活の安定と繁栄を実現し、平和国家として国際社会に名誉ある地位を占めるに至りました。
ここに、皇位を継承するに当たり、大行天皇の御遺徳に深く思いをいたし、いかなるときも国民とともにあることを念願された御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません。
構成も内容もほとんど同じで、同じ言葉も多く見られる。つまり、同じ部分は新天皇陛下が上皇陛下からそのまま引き継ごうとされていること、そして違っている部分は、新天皇陛下が新たに考えておられることであろうと推察できるわけである。
まず目につく違いは、もちろん当然なのだが、 新天皇陛下のおことばには先帝に対する追悼がないこと で、新天皇陛下の即位が上皇陛下の時とは違い、「深い悲しみのうち」のものではなくてよかったと、改めて思わされる。
そして今回特に話題になっているのは、最後の段で上皇陛下の時は 「日本国憲法を守り」 とおっしゃった部分が 「憲法にのっとり」 に変わったことだ。
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!
感想のようなものは、上記までで述べてしまったように思えますが、ハプスブルクの例をまたまたあげることにします。下らない話ですが、いちおう説明します。
オーストリアの大公兼ボヘミア・ハンガリー女王であったマリア・テレジアと神聖ローマ皇帝フランツ1世の息子にあたる後継皇帝は、ヨ-ゼフ2世ですが、そのあとをついだレオポルド2世の治政はわずか2年で終わっており、このことは現天皇陛下のあとを秋篠宮殿下が継いだ場合の参考になるかと思われます。ヨ-ゼフ2世の場合も、女子しか居らず、この場合は早世しているので、後継者が弟しかいなかったわけです。
さらにそのあとをついだレオポルドの皇子のフランツ2世が悠仁様の立場になろうと思われます。こちらはたまたま運良く息子・皇女がたくさん産まれ(その中にナポレオンの後室になったマリア・ルイーズがいます)、ハプスブルク帝国が存続できたわけですが、これと同じ奇蹟が日本の皇室の場合にも成立すると、男系派は想像しているわけなのでしょうか。むしろ他山の石とすべきは、レオポルドの治政の方だろうと思います。
それ以前にヨ-ゼフ、レポポルトの親であるフランツやマリア・テレジアが息子や(マリー・アントワネットなどを含む)娘を「多産」したこと自体、かなりのプレッシャーやストレスがあったことと想像されます。テレジアの妹も、ヨ-ゼフの兄弟と結婚しており、この場合は子供を残せていないので、テレジアに寄せられた国民の期待はかなりのものだったことでしょう。
そんな中で、オーストリア継承戦争や七年戦争を戦い抜き、宰相カウニッツと協力して国政改革を実施したマリア・テレジアの生涯はまさに壮絶なものであり、艱難の日々であったことが伺われます。決して、竹田恒泰が朝生で取り出した、怪しげな出生率の紙のようには進行しなかったろうと思われます。
以上、日本の天皇家の例とはあまり関係ない話でしたが、おかれている情況は、ある程度似通っていると私は理解します。秋篠宮は現天皇の後継者になるにしても年齢が近いため、自ら太子である立場を避けられたのだから、そのことを尊重し、天皇陛下の嫡子である愛子内親王殿下が皇太子になる道を探るのが、保守としてとるべき最良の道なのではないでしょうか。赤ん坊のうちに両親から引き離して誘拐するなんて非人道なことを考案するよりも、餘程現実性がある話のような気がします。
という当たり前のようなことを、なぜ今もって主張しつづけなければいけないのか、皇室のことは宮内庁の意向通りに進行できないのか、なぜ政府や日本会議だかの第三者の思惑が絡んだり、識者と称する男系派の学者の一方的な定見が横行したりするのか、よく分かりません。かりに私たちの家庭で男子だ、女子だなどという争いが起こり、それにその家の伝統を知っているとする他者が首を突っ込んだとしたら、「餘計なお世話だ」で済まされてしまうのではありますまいか。
一刻もはやく、この問題が上皇陛下や天皇陛下の意向通りに解決することを願います。
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