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わさビーフンさん のコメント

ライジング感想です。岡田・玉川両氏と、光田氏との比較、分析があまりに見事で、思わず書き始めてしまいました。光田氏の、他に比べ貧しく、見劣りするという劣等感・不平等感。ゆえに「恵まれている奴ら」と気後れすることなく肩を並べたい、二度と侮らせない、頭を下げさせたいという承認欲求・上昇志向。ハンセン病という、持ち駒のない自分が入り込めた数少ないフロンティアが、自分の色に染まっていく気持ちよさ・充実感。自分を軽く見て、なめた態度をしてきた医学界、同僚たちに(権威主義の世界でしょうから当然、不遇な経歴の光田氏も悔しい思いをたくさんされたと思う)鼻を明かしてやったという喜び・勝利感。
だから、自分の築いた「王国」に異を唱えた、小笠原登という、経歴も実力もエリートで、そして人格さえ高潔な本当の権威、本当の尊敬すべき医師、自分にないもの全て持っている人間の出現に、常軌を逸した敵愾心を抱いたのはわかる気がします。「こいつを潰さないと俺の王国が滅びる、昔の、周りから馬鹿にされる何もない弱い惨めな俺に戻るだけでなく、恐怖扇動・隔離政策というでっち上げの嘘をついた、嘘つきの差別者ということがバレてしまう。それが知れたら世間から一生後ろ指を刺され、歴史にも悪名が残り後世に永遠に侮辱される」という、心からの恐怖がわいたのも、彼の性格と置かれている状況なら自然なことと思います。  
先生が書かれていたように結局、正しかった小笠原先生は潰され、光田氏が勝利しました。そして死ぬまで彼の脳裏には、小笠原氏を陰険な方法で排除して未来を閉ざし、過去・現在・未来、ハンセン病患者たち全ての運命を決定的に狂わせたという罪悪感は、わかなかったと思います。日々、自分の心に芽生える後ろめたさ感、申し訳なさ感を周到に、丁寧に潰し続け、セルフ・マインドコントロールし続け、ニコニコと充実感と満足感、「いいことやった」感に満ちたまま、亡くなったと思います。
なぜなら、もし真剣に自己を見つめ、正しい自己批判を始めたら、罪悪感・申し訳なさがあふれ出して精神が崩壊するからです。自殺しかねないほどの衝動が起こるだろうし、それだけの罪深いことを彼はしていて、先生のおっしゃるように、彼は自分の嘘と罪を十二分に承知しているからです。だから一生、言い訳を作り続けたと思います。人間は言い訳をいくらでも作れる生き物です。ゴー宣4巻の岡崎氏のように、完全にイラク戦争が間違っていたと証明され、アメリカもそれを認めているのに「なるようにしかならないんですよ」と意味不明な運命論に逃げて、自分の責任をごまかして自己弁護できる生き物です。(想像になってしまいますが、岡崎氏も死ぬまで自分の間違いを認めず、充実感をもって亡くなったでしょう。経済的にも恵まれ、承認欲求的にも周りからそれなりに尊敬されていたでしょうし)
だから生前「お前は間違っている」と完全否定されることがなかった光田氏だったなら、なおさらです。
だけど、パール判事が「虚偽が理性で剥がれるとき必ず真実が照らされる時が来る」(意訳)とおっしゃったように、こうしてよしりん先生や、光田氏の足跡を調べた人たちによって、彼の本当の姿が映し出される時が来ています。コロナ論やゴー宣にこの話が出るでしょうから、ますます光田氏の真実の認知、そして小笠原医師の名誉回復が成されるでしょう。 
 自分は、光田氏の劣等感と悔しみ、引け目感、成り上がり根性、そしてハンセン病を「出世のチャンス」と考えた、その泥臭い思考法に共感してしまいました。そこは嫌いになれません。好もしく思ってしまいました。
しかし、ハンセン病患者の境遇をここまで狂わせたこと。小笠原医師のような真に尊敬すべき人を貶めたことは、心理的な動きは理解できても、共感はできませんでした。これは、玉川・岡田両氏のように、勢いと乗りでここまできてしまったけど、そして自分が嘘ついて間違った方向に導いたのは自分が一番自覚してるけど、今さら変えられないし、かなり良い生活レベルができる収入・待遇も、みんな頭を下げてくる権威も世間のちやほや感も絶対に手放したくないから、このままいっちゃえ、嘘つき続けちゃえ!という人間の小ささ、卑近さから、共感できないのかな、と思いました。「敵ながらあっぱれ」感が全然ない。スケール感がない。セコいだけ。自己保身だけ。生活レベルとちやほや感だけ。光田氏は不遇から成り上がる過程で相当の苦労と悔しさがあっただろうし、玉川・岡田両氏より必死感・切実感は感じられますけど、それでもやっぱり、共感できなかった。
Ifの話になりますが、仮に小笠原医師の路線を光田氏が採用して、ハンセン病の方針を劇的に変えても、彼の権威は保たれていただろうし、ヘンな話ですが彼の「ハンセン病を恐怖の伝染病にしたというでっち上げ、隔離政策推進」の極め付けの罪深さも、うやむやになってそれほど糾弾されなかっただろうと思います。そして、小笠原医師のような人格者が後任だったなら、粗野な扱いを受けず終生、ハンセン病学会から尊敬をもって遇されていたはずです。今こうして悪行が暴かれることなく「ハンセン病を悪い方向に導いた罪はあったが、後任に最高の人間を選んで方針転換という難事業を成し遂げた、苦労人の賢明で優れた医者」としての評価を下されていたでしょう。 
 そして、玉川・岡田両氏です。恐怖あおりすることなく、よしりん先生・泉美先生のようにコロナを一生懸命、研究・検証し、インフルと比較して(驚くべきことにテレビはいまだにインフルと比較しませんね。「おどれら」は1シーズン前にとっくにやってるのに。テレビって本当に狂ってる)、自粛すると経済的にどうなるか。自粛しないとどういうことが考えられるか等々、理性的に冷静に番組を運んでいれば、それでも視聴率はとれていただろうし、後世「あの番組のおかげで一番まともな情報を手に入れることが出来た」と素晴らしい評価を得られていたはずです。そして日本はこんな酷い有様になっていなかったでしょう。残念です。
光田氏と岡崎氏は逃げ切りましたが、玉川・岡田両氏と、あと竹中平蔵三氏は逃げ切らないで、自分の行いを生前に、きっちりと償ってほしいと思います。

 光田氏がそうだったように、玉川・岡田両氏、保身のために自粛を行い世論を地獄に導いた小池知事、店名糾弾さらしの私刑制度の流れを作った吉村知事はじめコロナ脳に基づいた考えや政策の先頭を行く人たちは、終生「コロナ大したことなかった」と認めないかもしれません。自分の悪行も認めないかも知れません。これから失業者、自殺者が恐ろしい数に昇るとしても。ですが、一生後悔と恥ずかしさを、どんなに言い訳をしても拭えない申し訳なさ、罪深さを背負って生きてほしいと思います。なぜなら、彼らは公務員や政治家、大企業の社員や学者など破産する心配がまずない人たちです。自分が犠牲にならない恵まれた安全な立場から、他人に犠牲を強いるからです。
私がコロナ脳たちを軽蔑する最大の理由は、「恐怖あおり、自粛で自分たちが真っ先に収入が絶たれ破産する、犠牲の最前列の立場でも、それでも恐怖あおりをして、自粛を支持するか?」ということです。破産し、職と収入を失い、家と持ち物を失い、一家離散の目に遭うのが確実だったなら、絶対にこんな政策や恐怖あおりはしてないと思います。安全な立場から他人に犠牲を強いる彼らの感覚は、フランス革命直前の王侯貴族・聖職者であり、大本営の高級将校と同じです。貴族や特権階級の、自分たち以外の立場の人間がどうなろうが歯牙にもかけない感覚です。どう彼らが否定しようとも。

そして「呪われてしまえ、地獄へ墜ちろ」と思う理由は、日本人が、同じ日本人を差別し、迫害する状況を作り出しているからです。政治家知事、テレビが結託してナイトビジネスや感染源にされた店をスケープゴートにして弱い者虐めしているからです。そして鵜呑みにする人たちの、なんと多いことか。それだけ心の奥に差別心がくすぶっていたのが表に出ただけなのでしょうが、だけどしかし。
 何が。何が悲しくて、日本人が同じ日本人を虐めるのでしょうか?
 ナチスのユダヤ人迫害も、アメリカの排日移民法も、関東大震災の朝鮮人虐殺も、許しがたい、絶対に容認してはいけない蛮行ですが、しかしそれらには人種差別という、人類がまだ解決できない難題が背景にあります。比して、今回の根っこは、ただの職業差別です。確かに「職業に貴賎無し」は嘘で差別だらけですが、しかし人種差別よりはるかに軽い、特定の職業への偏見・差別心を、迫害・弾圧するまでに発展させた愚行は、どんな言葉で非難してもまるで足りない。
特定の職業やお店を、悪の元凶のようにかき立てた罪。世間の八つ当たりに利用し、生贄にした罪は絶対に消えません。
日本人が、同じ日本人を迫害・弾圧(「本音と建て前」の日本人らしく言葉をオブラートに言い換えてますが、実質は迫害・弾圧)していることは、愚劣の限界を越えたというか、どこまで精神が腐って墜ちていくんだと思いました。人種問題を含まない、同じ人種の同国人による、特定の職業への酷薄な虐めは、日本人だけなんじゃないでしょうか? このケースは他の国にはないんじゃないでしょうか?
 
日本が世界に互していける数少ない強みは、高信頼社会であり、互いに協力し合うことなのですが、それも失ったかも知れません。少なくとも差別された側は絶対にこの迫害・弾圧を忘れないでしょう。コロナ以前の関係に戻ると思えない。修復不能な、人間同士の信頼への大きな断裂を生じさせたと思います。差別した側は、どれほどの遺恨を作ってしまったのか考えてもいないでしょうけど。 
 コロナ論、何冊か予約しました。話がわかりそうな人に配ろうと思います。世間が少しでもコロナ脳が解けることで、差別や迫害で苦しんでいる人が減ればいいと思います。もう、元の日本に戻れないでしょうけど。本当のアフターコロナは、日本人が長年かけて築き上げた高信頼社会が崩れた、人間同士の絆や信頼が失われた、偽善の言葉が跋扈する世界でしょうから。その中でゴーセン道場、先生方が数少ない希望です。
長くなってしまい、あと色々間違った部分があるでしょうから、本当にすみません。応援しております。
No.25
45ヶ月前
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第365号 2020.7.21発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※「ゴーマニズム宣言」…先週は、たとえ動機が純粋で、善意と正義のつもりでやったことでも、結果が酷いことになったら、その責任からは逃れられないということを書いた。それは大前提とした上で、今週は、そもそもハンセン病の恐怖を煽った医師・光田健輔や、新型コロナウイルスの恐怖を煽っている玉川徹・岡田晴恵の動機は「純粋」で「善意と正義」に基づいたものなのかを検証したい。 ※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…スウェーデン公衆衛生局が記者会見を行い、さらに、T細胞を介した自然免疫とあわせると、40%近くが免疫を獲得していると推定されるとし、集団免疫獲得はほぼ完成したと発表した。しかし、スウェーデンという存在を認めたくない勢力、そして日本のコロナがとっくに「終了」していることを認めたくない勢力は強い。彼らは飽きもせず「ミラノ、ニューヨークの二の舞になる!」と発狂しているが、一体どういう科学的知見からそう考えるのか? ※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!「コロナが収まる」とはどういう状態のことを言うの?政府が「GoToキャンペーン」から東京を外したことをどう思う?新コロ後遺症って恐ろしいの?現代において、田舎と都会との差異って感じる?旅行先で子供たちに危害が及ぶことが心配…都民は旅行をキャンセルしたほうが良い?リニアは必要だと思う?有名人が公表したくないプライベートなことを、週刊誌が暴露するのって許されるの?…等々、よしりんの回答や如何に!? 【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第381回「歪んだ動機の正義」 2. しゃべらせてクリ!・第322回「ぽっくんを飼ってクリ、支配してクリ~!の巻〈前編〉」 3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第175回「スウェーデンの勝利宣言と、発狂中の人たち」 4. Q&Aコーナー 5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 6. 編集後記 第381回「歪んだ動機の正義」  先週は、たとえ動機が純粋で、善意と正義のつもりでやったことでも、結果が酷いことになったら、その責任からは逃れられないということを書いた。  それは大前提とした上で、今週は、そもそもハンセン病の恐怖を煽った医師・光田健輔や、新型コロナウイルスの恐怖を煽っている玉川徹・岡田晴恵の動機は「純粋」で「善意と正義」に基づいたものなのかを検証したい。  先週も書いた通り光田健輔はエリートの出ではなく、博士号すら取っていない。「独学で医学を学んだ」と言われるほどの苦学の末、私立済生学舎を経て東京帝国大学医学部選科に進んだ。  そして光田は、ここで他の医学生が触ろうとしなかったハンセン病患者の遺体をただひとりで解剖。この「美談」の解剖で切り出したリンパ節の染色実験から初の論文を書き(先週、初の論文は養育院時代と書いたのは誤り)、それ以降東大でハンセン病研究に没頭した。  そして、 そんな光田に東大医学部長が目をつけ、ハンセン病の入所者が数多くいた救護施設の東京養育院で勤務するよう命じたのである。  ではなぜ、光田はハンセン病研究に没頭したのか?  その動機は何だったのか?  ここからは推測になるが、東大医学部選科にいた他の医学生は、ほとんどが帝大医学部を経たエリートぞろいだったはずで、私立済生学舎の出で、学士ですらない光田は相当に異色の存在だったはずだ。  そしてそんな状況では、世の中の脚光を浴びるようなメジャーな研究テーマは全て他の医学生に持っていかれてしまい、 光田が手掛けることができたのは、誰も手を付けないようなニッチな領域しかなかったであろう。そして、ハンセン病研究こそ、まさにそれに打ってつけのテーマだったのではないだろうか。  東大を出て、養育院勤務の医官となった光田は、日本初のハンセン病専門医となった。当時の日本には、他にハンセン病の専門医は一人もいない。 光田はたちまち日本における「第一人者」となり「権威」となったのだ。  それからの光田は、苦学生時代の怨念からか、それとももともとの性格からか、「ハンセン病研究の第一人者」としての自らの権威を高めることにのみ没頭していったように思える。  そしてそうするためには、ハンセン病自体に対する世間の関心が大いに高まらなければならない。だから光田は、わざとハンセン病はペストと同然の恐怖の伝染病だと大宣伝したのではないか。   光田は、患者の体からまき散らされた病菌が日本全土を病の国とするかのような誇張までしていたが、それが完全にウソだということは、実際にハンセン病患者を扱ってきた光田自身が一番よく分かっていたはずだ。  そして、この恐怖の宣伝によって日本中が震えれば震えるほど、そんな恐怖の病と闘う医師として、光田のステイタスは上がることになったわけである。  光田はさらに財界・政界に人脈を広げ、国策に強力な影響力を発揮し、持論であったハンセン病患者の 「絶対隔離」 を実現する。  そして、日本癩学会の中心を全て自分の弟子で固め、押しも押されもせぬ権威に成り上がった。   動機がハンセン病患者のためではなく、自分の権威を高めるためであれば、当然のごとく自分の学説を否定するような意見は徹底して排除するだろう。  ハンセン病の感染力が非常に弱く、治療薬が開発されて完治する病気になっても、徹底隔離方針を変更することなどできなかっただろう。そんなことをしたら、それまで自分がやってきたことが否定され、権威が失墜してしまうから。   気前がよく、患者のためにも惜しみなく自腹を切ったというような「美談」も、あくまでも自分が患者を完全支配しているという、絶対的上下関係が存在しているところでのみ行われていたことだったのではないか?  患者の名前を全て記憶していたというのも、単に記憶力がよかったというだけのことじゃなかったのだろうか?  全て推測だが、そう外れてはいないと思う。   なお、光田に反対する学説を発表して学会で潰された医師・ 小笠原登 は京都帝大卒のエリートだった。  エリートが冷淡で、たたき上げが人情深いというステレオタイプがどこでも通用するとは限らないものだ。   さて、それでは岡田晴恵や玉川徹の「動機」はどうだろうか?  
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!