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cstantoさん のコメント

またまた「よしりんに聞いてみよう」からの感想です。12月8日の放送から。
日銀はすでに十分な金融緩和を行っている。これ以上日銀に出来る事はない。この発言に強い違和感を覚えます。
日銀はインフレターゲットと言う言葉こそ使いませんが、物価調整の水準として上昇率1%を目途(目処ではなく目途)としています。
自ら定めたインフレ目途1%すら達成出来ていないと言う事は、有能だがワザとやるべき事をやっていないか、それとも無能かのどちらかしかありません。
インフレとGDPの関係を説明します。GDPの成長率には二種類の表現があって、実質GDP成長率と名目GDP成長率と言います。
実質GDPは、実際にどれだけの物やサービスを生み出したかを表し、名目GDPは実質GDPに物価上昇率を加味します。
もし実質GDPが1%成長して物価上昇率が1%なら、名目GDP成長率は2%となります。
この、名目GDPと税収には高い相関性があって、これがマイナスだと税収はマイナスに、これがプラスだと税収はプラスに転じます。

ここで改めて中央銀行の果すべき役割について振り返ると、物価の安定化、銀行の管理監督、等が挙げられます。
物価の安定化とは、金融の緩和や引締めを行い急激な物価の変動を抑える事を意味します。
例えばインフレになれば金融を引締め物価の上昇を抑え、デフレになれば金融を緩和し物価の下落を抑える、こうした調整は基本的な業務だと言えるのです。
その上で日銀は自らの目途(目標って表現は使わないみたいですね)
として上昇率1%を定めているのですが、実際には実現出来ていないわけです。
この状況を日銀はこう表現します。デフレ下では金融緩和策は効果を持たない。民間の活力を引き出す為には、まず政府が積極的な財政政策や規制緩和を大胆に実行すべきだ。

日銀が定めたインフレ目途1%の未達は日銀の所為じゃない。政府が悪い。こう言っているのです。
本当に日銀の言っている事は正しいでしょうか?日銀の出来る事はやり尽くしたのでしょうか?

さて、それはそうとそもそも何故日銀はインフレ目途1%に定めたのでしょうか。安定化と言うなら0%でいいんじゃない?何故でしょう?
狭い幅ですがインフレ率プラス1%とマイナス1%、どっちが良いと思いますか?①+1%②-1%③どっちでも変わらない。

答え、マイナスだと失業者が増え、自殺者が増える、よって+1%が望ましい、です。
これは実は経営者の立場に立つとわかるのですが、凡ゆる物価が均等に1%下がるなら問題はないのですが、給与には下方硬直性が存在します。
物価下落率ほどに給与を下げる訳にはいかないのです。すると、デフレが進めば進むほど、相対的に人件費のコスト比率が上がってくるわけです。
耐えられなくなった企業は倒産するか、さもなくば人を減らすしかなくなります。デフレは労働者の間に大きな格差を作ってしまうのです。
インフレの場合、調整が容易となります。物価が上昇しても給与は据置きなら、相対的に人件費の比率は下がります。
人件費比率を下げる方法として、給与据置きでも実質的に下がって行くインフレ。給与が引き下げられない為に企業収益を圧迫し、仕方なく人員を整理する事で人件費を下げざるを得ないデフレ。
インフレ目途1%にはちゃんとした意味があり、日銀は自らの定めた目途を全く達成していないのです。

>インフレに出来るのか?金融緩和をしても企業は投資しないぞ。銀行は国債買うしかないじゃないか?金融緩和はもう十分にやってる。これ以上何をすればいいのだ?

これも日銀のレトリックです。不況の原因を全て日銀の所為にするべきではありませんが、やはり日銀の責任は大きいと思います。

金融緩和って本当に十分に行われているんですねぇ。何年か前にノンバンク・サラ金規制が強化されましたよねぇ。
年収の3分の1までしか借りられない様に規制して多重債務者を保護しようとしたあれです。
あれで多重債務者は助かっているのでしょうか?多くは個人事業主ですよ。あの規制強化は日銀とは関係ありませんが、取り敢えず話を前に進めると、あの規制強化の所為でつなぎ融資を受けられずに資金ショートして破綻する個人事業主が続出。
サラ金は次々破綻し銀行の傘下に収まり、逆に闇金融が横行する様になりました。
個人の無担保借金って利率高いですよね。貸し倒れリスクでしょうが、15%はありますね。
中小零細企業は資金繰りに困って銀行からお金を借りたいのですが利率が折合わず融資実行が滞りますね。本当に緩和されてるのでしょうか?金融は。
中小零細企業にまで経済の血と言える融資資金を届ける事が出来ないのでしょうか?
民間は借りたがらないのではありません。銀行があまりにも些細なリスクさえ負おうとせず、借りたい企業を足蹴にしながら国債を買っている事が問題ではないでしょうか?
日銀は強力なメッセージを発信する立場にあります。力強いデフレ脱却宣言を発し、目標達成までは制限なき金融緩和を実行し続けると表明する。そして、リスクを取る金融機関をサポートする。
そうする事で初めて中小零細企業向け或いは個人向け金利が下がり、リスクのある融資も再び流れ始める、そう思います。
世界は日銀の不十分な姿勢を散々見てきており、本当に強いメッセージを出さないと金融緩和を信用しません。国内外から信用される金融緩和の実行、これが日銀に求められているのですが、こんな事を語る私は民間企業の一介のサラリーマンです。
毎日ミクロの戦場で戦って、夜はマクロ経済の勉強。でも経済って深くて面白いんです。書籍も沢山出てるしネットでも論戦は山の様に繰り広げられています。
日々知見を深めている最中ですが、中間的な“今”の見解はざっとこんなもんですね。
No.79
145ヶ月前
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第16号 2012.12.4発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・ 小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、 AKB48ブームから現代社会を掘り下げる(本当は新参ヲタの応援記!?) 「今週のAKB48」、よしりんの愛用品を紹介していく「今週の一品」、 漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと 紹介する「よしりん漫画宝庫」、『おぼっちゃまくん』があなたの 人生相談に真剣回答!「おぼっちゃまくん人生相談~言われたとおりに 生きるぶぁい~」、読者との「Q&Aコーナー」、秘書によるよしりん 観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。 (毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※すっかり「保守バブル」「愛国心バブル」となった近年。今週の  「ゴー宣」では、今回の衆議院総選挙の各党の公約を比べながら、  何が真の保守かを見極める! ※増田有華、佐藤夏希、矢神久美、城恵理子…メンバーの脱退・卒業が  相次ぐAKB48グループ。「今週のAKB48」はアイドルの「卒業」、  そして少女たちの「実存」に焦点を当てる!  ※新連載スタート!読者プレゼン採用企画、第1弾!  「よしりん企画、その風景」よしりん企画の知られざる仕事場風景を、  1枚の写真と共に紹介するコーナーです♪今回は、あの大ベストセラー  『戦争論』の表紙を飾った一品をご紹介! 【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第19回   「真の保守はパトリオティズム(愛郷心)が基本である」 2. 今週の一品・15品目   「AKB48オフィシャルカレンダーBOX 2013 iDOLL」 3. 今週のAKB48・第17回「脱退・卒業、少女たちの実存とは何か?」 4.  新連載! よしりん企画、その風景・第1回「『戦争論』のよしりん像」 5. おぼっちゃまくん人生相談~言われたとおりに生きるぶぁい~   第71悶~第75悶 6. よしりん漫画宝庫・第16回「『角栄生きる』②男、涙の玄界灘!」 7. Q&Aコーナー 8. 今週のよしりん・第16回「些細な間違いと、根本的な間違い」 9. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 10. 読者から寄せられた感想・ご要望など 11. 編集後記 第19回 「真の保守はパトリオティズム     (愛郷心)が基本である」  近年はすっかり保守バブル、愛国心のバブルである。  自民党総裁・安倍晋三は、「憲法を改正し、自衛隊を国防軍にする!」 と豪語している。  この意見にはわしは賛成だが、憲法改正の場合はよほど 「日本の自主独立」 を煎じ詰めて原理にしておかないと、単なる 「国民主権」 と 「日米同盟」 のための改正になってしまう恐れがある。   その原理こそが、 「TPP」 や 「原発」 に対する考え方の中に現れると、 わしは思っている。  しかし一昔前なら、安倍晋三や石原慎太郎のようなことを言ったら、 サヨクマスコミの総攻撃をくらって選挙戦に大ダメージになるから、 何が何でもあいまいにぼかした言い方をしたものだ。  それが今ではわざわざ選挙前に、しかも極端に勇ましく言った方が有利 とでもいうような状況なのだから、世の中変われば変わるものである。  テレビでは相変わらず「戦争はイヤです」なんて紋切り型の「街の声」を 流すし、社民党や共産党は「憲法9条堅持」を唱えるが、自民党に対する 有効な批判とは全然なりえていない。   だが、本当に自民党は「保守」であり「愛国」の党なのだろうか?   今回の選挙で大方の予想通りに自民党が勝利を収めたら、保守思想と 愛国心をもった政権ができるのだろうか?  わしには全くそうは思えないのである。  ほとんど誰も予想していなかった年内総選挙が決まって以来、とにかく 目まぐるしく情勢が動き、もう現在政党がいくつあるのかもよくわからない。 どうせこの後も離合集散が続くのだろうから、わざわざ全政党を覚えよう とも思えないのだが、ただ、その党がパトリ(郷土)に基づく保守思想を 持っているかどうかを簡単に見分ける方法がある。   「原発」 と 「TPP」  この二つの課題に対して、どういう態度を取っているかを見ればいいのだ。  組み合わせはこの4パターンとなる。 ① 脱原発、反TPP(未来の党、社民党、共産党など) ② 脱原発、TPP推進(みんなの党、民主党) ③ 原発維持、反TPP(自民党【の建て前は反TPPだが、本音はTPP推進】) ④ 原発維持、TPP推進(自民党、維新の会【の建て前は脱原発依存だが、   本音は原発推進】)        原発とは、一度事故を起こしてしまったら、その周辺地域の住民は 故郷を捨てなければならなくなってしまうものである。このことは、 今や否定のしようがない。  ふるさとの野山で子供たちが伸び伸びと遊び回ることも、もうできない。 地域の歴史も文化も、そこで終わってしまうのだ。  今現在、そういう境遇に追い込まれている人たちがいるというのに、 そのことに対して何の痛痒も感じず、原発再稼働を主張できるような者が、 保守であるはずがないのである。   パトリオティズムなきナショナリズムは、保守ではない!  これは原理として押さえておかねばならない。           そしてTPPとは、アメリカ主導で作られるグローバル・スタンダードを 一律に全参加国に適用しようというものである。それぞれの国に固有の 伝統・文化は、グローバル・スタンダードが優先されることによって 消滅してしまう。  例えば日本における 「稲作」 は天皇の祭祀にも結びつく、日本人の 信仰・文化の中心である。  しかし「グローバル・スタンダード」では稲作はあくまでも単なる農業の 一分野であり、コメは単なる一農作物でしかない。  TPPによってコメの関税が撤廃され、安い外国米が大量に入って来るよう になったら、日本らしい田園風景はたちまち姿を消してしまうだろう。  それでも安いコメが食べられればいいじゃないかと思うような者が、 保守であるわけがないのである。  農作物はTPPの象徴的な危機として語るが、もちろんTPP参加で出現する 危機は、他に国民皆保険制度の解体や、公共事業の外国企業への解放、 雇用の流動化、食の安全基準の崩壊など、様々な分野に亘る。          
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!