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第16号 2012.12.4発行




「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・
小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、
AKB48ブームから現代社会を掘り下げる(本当は新参ヲタの応援記!?)
「今週のAKB48」、よしりんの愛用品を紹介していく「今週の一品」、
漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと
紹介する「よしりん漫画宝庫」、『おぼっちゃまくん』があなたの
人生相談に真剣回答!「おぼっちゃまくん人生相談~言われたとおりに
生きるぶぁい~」、読者との「Q&Aコーナー」、秘書によるよしりん
観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。
(毎週火曜日発行)




【今週のお知らせ】
※すっかり「保守バブル」「愛国心バブル」となった近年。今週の
 「ゴー宣」では、今回の衆議院総選挙の各党の公約を比べながら、
 何が真の保守かを見極める!
※増田有華、佐藤夏希、矢神久美、城恵理子…メンバーの脱退・卒業が
 相次ぐAKB48グループ。「今週のAKB48」はアイドルの「卒業」、
 そして少女たちの「実存」に焦点を当てる! 
※新連載スタート!読者プレゼン採用企画、第1弾!
 「よしりん企画、その風景」よしりん企画の知られざる仕事場風景を、
 1枚の写真と共に紹介するコーナーです♪今回は、あの大ベストセラー
 『戦争論』の表紙を飾った一品をご紹介!


【今週の目次】

1. ゴーマニズム宣言・第19回
  「真の保守はパトリオティズム(愛郷心)が基本である」
2. 今週の一品・15品目
  「AKB48オフィシャルカレンダーBOX 2013 iDOLL」
3. 今週のAKB48・第17回「脱退・卒業、少女たちの実存とは何か?」
4. 新連載!よしりん企画、その風景・第1回「『戦争論』のよしりん像」
5. おぼっちゃまくん人生相談~言われたとおりに生きるぶぁい~
  第71悶~第75悶
6. よしりん漫画宝庫・第16回「『角栄生きる』②男、涙の玄界灘!」
7. Q&Aコーナー
8. 今週のよしりん・第16回「些細な間違いと、根本的な間違い」
9. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
10. 読者から寄せられた感想・ご要望など
11. 編集後記





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第19回「真の保守はパトリオティズム
    (愛郷心)が基本である」


 近年はすっかり保守バブル、愛国心のバブルである。
 自民党総裁・安倍晋三は、「憲法を改正し、自衛隊を国防軍にする!」
と豪語している。
 この意見にはわしは賛成だが、憲法改正の場合はよほど「日本の自主独立」
を煎じ詰めて原理にしておかないと、単なる「国民主権」「日米同盟」
のための改正になってしまう恐れがある。
 その原理こそが、「TPP」「原発」に対する考え方の中に現れると、
わしは思っている。

 しかし一昔前なら、安倍晋三や石原慎太郎のようなことを言ったら、
サヨクマスコミの総攻撃をくらって選挙戦に大ダメージになるから、
何が何でもあいまいにぼかした言い方をしたものだ。
 それが今ではわざわざ選挙前に、しかも極端に勇ましく言った方が有利
とでもいうような状況なのだから、世の中変われば変わるものである。

 テレビでは相変わらず「戦争はイヤです」なんて紋切り型の「街の声」を
流すし、社民党や共産党は「憲法9条堅持」を唱えるが、自民党に対する
有効な批判とは全然なりえていない。

 だが、本当に自民党は「保守」であり「愛国」の党なのだろうか?

 今回の選挙で大方の予想通りに自民党が勝利を収めたら、保守思想と
愛国心をもった政権ができるのだろうか?

 わしには全くそうは思えないのである。


 ほとんど誰も予想していなかった年内総選挙が決まって以来、とにかく
目まぐるしく情勢が動き、もう現在政党がいくつあるのかもよくわからない。
どうせこの後も離合集散が続くのだろうから、わざわざ全政党を覚えよう
とも思えないのだが、ただ、その党がパトリ(郷土)に基づく保守思想を
持っているかどうかを簡単に見分ける方法がある。

 「原発」「TPP」

 この二つの課題に対して、どういう態度を取っているかを見ればいいのだ。
 組み合わせはこの4パターンとなる。

① 脱原発、反TPP(未来の党、社民党、共産党など)
② 脱原発、TPP推進(みんなの党、民主党)
③ 原発維持、反TPP(自民党【の建て前は反TPPだが、本音はTPP推進】)
④ 原発維持、TPP推進(自民党、維新の会【の建て前は脱原発依存だが、
  本音は原発推進】)


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 原発とは、一度事故を起こしてしまったら、その周辺地域の住民は
故郷を捨てなければならなくなってしまうものである。このことは、
今や否定のしようがない。
 ふるさとの野山で子供たちが伸び伸びと遊び回ることも、もうできない。
地域の歴史も文化も、そこで終わってしまうのだ。
 今現在、そういう境遇に追い込まれている人たちがいるというのに、
そのことに対して何の痛痒も感じず、原発再稼働を主張できるような者が、
保守であるはずがないのである。

 パトリオティズムなきナショナリズムは、保守ではない!
 これは原理として押さえておかねばならない。

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 そしてTPPとは、アメリカ主導で作られるグローバル・スタンダードを
一律に全参加国に適用しようというものである。それぞれの国に固有の
伝統・文化は、グローバル・スタンダードが優先されることによって
消滅してしまう。

 例えば日本における「稲作」は天皇の祭祀にも結びつく、日本人の
信仰・文化の中心である。
 しかし「グローバル・スタンダード」では稲作はあくまでも単なる農業の
一分野であり、コメは単なる一農作物でしかない。
 TPPによってコメの関税が撤廃され、安い外国米が大量に入って来るよう
になったら、日本らしい田園風景はたちまち姿を消してしまうだろう。
 それでも安いコメが食べられればいいじゃないかと思うような者が、
保守であるわけがないのである。

 農作物はTPPの象徴的な危機として語るが、もちろんTPP参加で出現する
危機は、他に国民皆保険制度の解体や、公共事業の外国企業への解放、
雇用の流動化、食の安全基準の崩壊など、様々な分野に亘る。

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